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学術研修

2017年12月13日

第15回近畿地協学術交流集会 発表

みつばち薬局上賀茂店 薬局長の前田です。

11月23日に神戸勤労会館で第15回近畿地協学術交流集会が行われ、演題発表をしてきました。今日は薬局の取り組みを紹介する意味も込めて、その抄録を載せようと思います。

 

近畿地協写真.JPG

 

 

演題名「民医連らしいかかりつけ薬局を考える~患者背景に目を向けた事例から~」

 

【はじめに】

2016年診療報酬改定で「かかりつけ薬局・薬剤師」がクローズアップされたが、かかりつけ薬局として信頼されるためには地域に根差した活動が不可欠である。今回は薬局の事例を紹介しつつ、かかりつけ薬局になるための方法を考察する。

【事例】

①    外来指導中に介護保険の申請をしていないことが判明した事例

対象はY.Tさん80才女性。高血圧の薬を飲まれており、服薬指導の最中に立ち上がりのことを尋ねた際に「最近足腰が悪くなってきて、ベッドが欲しいけど中古のものとか無いかしら」と発言あり。介護保険で借りられるのではないかと思い尋ねると、申請していないことが判明した。

その後本人の許可を得て、地域包括ケアセンターに連絡。支援員に家への訪問をしてもらい、介護保険の申請に繋がった。センターも今まで訪問を断られており、定期的な訪問の良いきっかけになったと感謝された。その後、顔を覚えてもらい血圧を医療機関ですら測りたがらないが、薬局で声掛けすると測ってくれるようになった。また副産物の成果として、この時に地域包括ケアセンターへ薬局から連絡したことにより、学区単位の地域包括ケア会議に呼ばれるようになった。

②    自費処方箋の患者に声かけしたところ、保険料の滞納が判明した事例

対象はW.Tさん68歳男性。2013年の開局当初より、門前の医療機関で自費の処方で時々シップだけもらわれていた。その後、血圧の薬も出るようになったが、不定期での受診だったので尋ねてみると「お金が苦しいので大事に飲んでいる」と発言あり。片足が義足の方であるが、年金は会社で働いていた時のお金だけ、障害者年金は重複してもらえないと言われた。保険料払うのに60万円支払いがいると言われて払えないのでやめたとの事。

詳しく話を聞くと、在職中は私学の職員としてお勤め。給料と障害者年金を受給されていた。退職時国保に移行する際に前年度までの収入が反映されるため国保料が高額であった(60万円/年)。そのため年金のみでは支払困難と思い、無保険になってしまっていた。ただ、年金は20万円/月あったため、生保や無低診の対象ではないと考えられた。41公費(京都市の老人医療助成)の説明は行ったが、難しいと考えられた。

しかし、このまま自費では今後年齢を重ねて体調不良になった時に、保険料滞納の支払いが困難になることが考えられるため役所に相談した方が良いとお伝えして経過をみることに。

半年後、国保を取得されたこと確認。本人が役所で確認した所、年収が低くなったため国保料の額が安くなったことが判明したため、支払うことにして保険証を発行してもらえたとのこと。

【考察】

どちらの事例にも共通して言えるのは「薬局が気になったことを一歩踏み込んで聞いたから」改善したと言える。患者さんに信頼してもらうためには、悩みを解消するなどの日々の積み重ねが必要だが、それは薬の領域に留まらない。生活面へも目を向けることも大事である。それが出来るのは民医連の薬局だからであり、特色の1つではないか。来年度の診療報酬改定に向けて、健康サポート薬局を取得する大きな流れはあるものの、薬局はもっと様々な「色」があって良いのではないか。地域包括ケアへの参画や患者背景に目を向けた取り組みもかかりつけ薬局につながる方法の1つであると考える。

 

ここまで読んでくれた方おられましたら、ありがとうございました。

薬剤師にはもちろん薬の専門性を問われる事になるかと思いますが、これからの薬局情勢にはプラスアルファが求められると考えています。患者さんの生活の質を向上させるには、こういった制度面を紹介することが必要なケースも出てくると思います。こういった生活面に目を向けた取り組みが出来るのも京都コムファの特徴の1つではないかと考えています。

 

今の薬局で働いて5年になりますが、患者さんの顔なじみの方も増えて相談されることが増え、充実した指導が出来ていると感じることが多くなってきました。かかりつけ薬局となっていくためには、やはりある程度の年数同じ所で働いた方が良いと実感しています。「地域で長く働きたい」と感じている学生さんがおられたら、是非見学に来てください。お待ちしています。

みつばち薬局上賀茂店 薬局長の前田です。

11月23日に神戸勤労会館で第15回近畿地協学術交流集会が行われ、演題発表をしてきました。今日は薬局の取り組みを紹介する意味も込めて、その抄録を載せようと思います。

 

近畿地協写真.JPG

 

 

演題名「民医連らしいかかりつけ薬局を考える~患者背景に目を向けた事例から~」

 

【はじめに】

2016年診療報酬改定で「かかりつけ薬局・薬剤師」がクローズアップされたが、かかりつけ薬局として信頼されるためには地域に根差した活動が不可欠である。今回は薬局の事例を紹介しつつ、かかりつけ薬局になるための方法を考察する。

【事例】

①    外来指導中に介護保険の申請をしていないことが判明した事例

対象はY.Tさん80才女性。高血圧の薬を飲まれており、服薬指導の最中に立ち上がりのことを尋ねた際に「最近足腰が悪くなってきて、ベッドが欲しいけど中古のものとか無いかしら」と発言あり。介護保険で借りられるのではないかと思い尋ねると、申請していないことが判明した。

その後本人の許可を得て、地域包括ケアセンターに連絡。支援員に家への訪問をしてもらい、介護保険の申請に繋がった。センターも今まで訪問を断られており、定期的な訪問の良いきっかけになったと感謝された。その後、顔を覚えてもらい血圧を医療機関ですら測りたがらないが、薬局で声掛けすると測ってくれるようになった。また副産物の成果として、この時に地域包括ケアセンターへ薬局から連絡したことにより、学区単位の地域包括ケア会議に呼ばれるようになった。

②    自費処方箋の患者に声かけしたところ、保険料の滞納が判明した事例

対象はW.Tさん68歳男性。2013年の開局当初より、門前の医療機関で自費の処方で時々シップだけもらわれていた。その後、血圧の薬も出るようになったが、不定期での受診だったので尋ねてみると「お金が苦しいので大事に飲んでいる」と発言あり。片足が義足の方であるが、年金は会社で働いていた時のお金だけ、障害者年金は重複してもらえないと言われた。保険料払うのに60万円支払いがいると言われて払えないのでやめたとの事。

詳しく話を聞くと、在職中は私学の職員としてお勤め。給料と障害者年金を受給されていた。退職時国保に移行する際に前年度までの収入が反映されるため国保料が高額であった(60万円/年)。そのため年金のみでは支払困難と思い、無保険になってしまっていた。ただ、年金は20万円/月あったため、生保や無低診の対象ではないと考えられた。41公費(京都市の老人医療助成)の説明は行ったが、難しいと考えられた。

しかし、このまま自費では今後年齢を重ねて体調不良になった時に、保険料滞納の支払いが困難になることが考えられるため役所に相談した方が良いとお伝えして経過をみることに。

半年後、国保を取得されたこと確認。本人が役所で確認した所、年収が低くなったため国保料の額が安くなったことが判明したため、支払うことにして保険証を発行してもらえたとのこと。

【考察】

どちらの事例にも共通して言えるのは「薬局が気になったことを一歩踏み込んで聞いたから」改善したと言える。患者さんに信頼してもらうためには、悩みを解消するなどの日々の積み重ねが必要だが、それは薬の領域に留まらない。生活面へも目を向けることも大事である。それが出来るのは民医連の薬局だからであり、特色の1つではないか。来年度の診療報酬改定に向けて、健康サポート薬局を取得する大きな流れはあるものの、薬局はもっと様々な「色」があって良いのではないか。地域包括ケアへの参画や患者背景に目を向けた取り組みもかかりつけ薬局につながる方法の1つであると考える。

 

ここまで読んでくれた方おられましたら、ありがとうございました。

薬剤師にはもちろん薬の専門性を問われる事になるかと思いますが、これからの薬局情勢にはプラスアルファが求められると考えています。患者さんの生活の質を向上させるには、こういった制度面を紹介することが必要なケースも出てくると思います。こういった生活面に目を向けた取り組みが出来るのも京都コムファの特徴の1つではないかと考えています。

 

今の薬局で働いて5年になりますが、患者さんの顔なじみの方も増えて相談されることが増え、充実した指導が出来ていると感じることが多くなってきました。かかりつけ薬局となっていくためには、やはりある程度の年数同じ所で働いた方が良いと実感しています。「地域で長く働きたい」と感じている学生さんがおられたら、是非見学に来てください。お待ちしています。