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学術研修

2022年6月28日

薬剤師国家試験(99回問236-237)

本部のTです。
今回は薬剤師国家試験の第99回問236-237を取り上げて解説してみました。
ちょっと引っ掛けのある面白い問題です。

 

99回 問236-237

10月のある夕方、薬局を男性が訪れた。その日、友人から初物のカキ(牡蠣)をもらったため、昼に友人や家族と自宅の居間で、生ガキと、炭火で焼きながら焼ガキを食したとのこと。全員が頭痛、嘔吐及びめまいを起こしたが、別室に移って休んだところ、少し落ち着いたとのことであった。

問 236(衛生)
これらの症状を引き起こした原因として最も可能性が高いのはどれか。 1つ選べ。
1  腸炎ビブリオ  2  ノロウイルス  3  腸管出血性大腸菌
4  二酸化窒素  5  一酸化炭素

問 237(実務)
この男性に対する薬剤師の対応として適切なのはどれか。2つ選べ。
1  次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒液で調理器具を消毒することを勧めた。
2  消毒用エタノールで調理器具を消毒することを勧めた。
3  調理中は部屋の換気を十分に行うことを勧めた。
4  一般用医薬品の胃腸薬を勧めた。
5  医療機関への受診を勧めた。

 

解説

問236

何度も牡蠣というワードが登場しているため、ついノロウイルスを連想してしまいがちですが、「炭火で焼きながら」という記述があるため、一酸化炭素中毒だった可能性も考えられます。

また、ノロウイルスの潜伏期間が24~48時間程度であるにも関わらず、「その日」に症状が出ていること、ノロウイルスの症状である下痢がないこと、「別室に移って休んだところ、少し落ち着いた」という記述を考え合わせると、一酸化炭素中毒の可能性が最も可能性が高いと考えられます。一酸化炭素中毒は、炭素の不完全燃焼により発生し、主な症状として頭痛、嘔吐及びめまいがあります。

選択肢1の腸炎ビブリオもカキが原因で感染することがありますが、やはり下痢がないことと別室に移って落ち着いたことから可能性は低いと考えられます。

よって答えは5です。

なお、選択肢3の腸管出血性大腸菌は、牛肉とその加工品、汚染されたサラダなどを原因とすることが多いです。選択肢4については、工場の煙突や自動車の排気管などから排出された一酸化窒素が酸素と反応して二酸化窒素となり、大気汚染の原因となりえます。しかし、家庭で急激な二酸化窒素中毒が起こることはまずありません。

 

問237

選択肢1
ノロウイルスに対する対処法です。

選択肢2
腸炎ビブリオや腸管出血性大腸菌に対する対策です。

選択肢3
一酸化炭素中毒の対策として、部屋の換気を十分行わなければなりません。
この選択肢は正しいです。

選択肢4
中毒に対して一般用医薬品の胃腸薬は推奨されません。

選択肢5
遅延性神経障害が現れる可能性があるため、医療機関を受診する必要があります。
この選択肢は正しいです。

よって答えは3,5です。

 

 

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