いのちと健康を守る「架け橋」に いのちと健康を守る「架け橋」に

学術研修

2022年7月8日

国試解説(107回228-229等)とワクチンの種類

本部のTです。
今回はインフルエンザおよびワクチンに関する問題として、薬剤師国家試験第107回問228-229と第101回問 221を取り上げて解説してみました。また、最後にはワクチンの種類のまとめを書いていますので、参考にしてください。

 

107回 問 228−229

70歳男性。自宅にて、39 ℃の発熱及び全身倦怠感を認め、同日中に呼吸困難となったため、家族が救急搬送を依頼した。救急病院に到着後、インフルエンザウイルスの迅速抗原検出キットにて検査したところ、B 型陽性であり、インフルエンザウイルス感染症と診断された。なお、インフルエンザワクチンは未接種だった。また、本人からは高熱による頭痛の訴えがあった。救命救急センター担当医師と薬剤師は、治療方針について、カンファレンスを実施した。

問 228(実務)
この患者への対応について、薬剤師が提案する内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 レボフロキサシン水和物錠の投与
2 インフルエンザワクチンの接種
3 アセトアミノフェン静注液の投与
4 ペラミビル水和物注射液の投与
5 アマンタジン塩酸塩錠の投与

問 229(衛生)
この患者の家族から、今後のインフルエンザワクチン接種について薬剤師に質問があった。次の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. この患者が予防接種を受ける場合、インフルエンザは予防接種法におけるA類疾病に分類される。
  2. この患者に対するインフルエンザワクチンの接種にかかる費用は、公的補助の対象とはならない。
  3. インフルエンザワクチンの接種においては、鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対してアレルギーがある場合には注意が必要である。
  4. インフルエンザワクチンの接種後、この患者に健康被害が生じた場合は、予防接種法に基づいた予防接種健康被害救済制度により救済措置を受けることができる。
  5. インフルエンザワクチンは弱毒化ワクチンなので、ワクチン接種によりインフルエンザを発症することがある。

 


解説

問228
選択肢1
レボフロキサシンは抗菌薬なので、ウイルスであるインフルエンザウイルスには無効です。

選択肢2
インフルエンザワクチンは感染を予防するためのものなので、治療に用いることはできません。

選択肢3
高熱による頭痛の訴えがあるため、それに対して、解熱鎮痛剤であるアセトアミノフェン静注液の投与は適切です。ちなみに、インフルエンザ患者にジクロフェナクなどのNSAIDsを投与すると、インフルエンザ脳症を発症するおそれがあるため、インフルエンザ患者への解熱鎮痛剤はアセトアミノフェンが推奨されます。

選択肢4
A型およびB型インフルエンザの治療薬であるペラミビルの投与は適切です。

選択肢5
アマンタジンはA型以外のインフルエンザには効果がないため、B型陽性であるこの患者の場合、不適切です。

よって正解は3,4です。

 

問229
選択肢1
正しくはB類疾病です。
65歳以上、もしくは60~64歳で一定程度の障害がある人への予防接種に関して、インフルエンザおよび肺炎球菌感染症は、定期接種のB類疾病になります。なお、60歳未満のインフルエンザワクチンの接種は、定期接種ではなく任意接種です。

選択肢2
定期接種は、A類、B類ともに公的補助の対象となりますので、高齢者のインフルエンザワクチンの摂取は公的補助の対象となります。

選択肢3
インフルエンザワクチンはその培養過程において、鶏卵を使用しており、ワクチンに極微量の鶏卵タンパクが残存している場合があるため、鶏卵や鶏由来のものに対してアレルギーがある場合には注意が必要です。

選択肢4
正しい記述です。

選択肢5
インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、ワクチン接種でインフルエンザを発症することはありません。

よって正解は3,4です。

 

101回問 221(物理・化学・生物)

予防接種に用いる抗原(ワクチン)に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. ウイルスに対する生ワクチンは、接種後の免疫応答能を高めるため、天然に存在するウイルスの毒性をより高めたものである。
  2. 我が国におけるインフルエンザワクチンの主成分は、ウイルスから分離・精製したノイラミニダーゼを不活化したものである。
  3. ワクチンの中には、病原体構成成分の組換え体タンパク質を主成分とするものがある。
  4. トキソイドは、病原体が産生する毒素を、免疫原性を残したまま無毒化したものである。

 


解説

問228
選択肢1
生ワクチンは病原体の毒性を弱めたものです。

選択肢2
インフルエンザワクチンの主成分は、ウイルスから分離したヘマグルニチン(HA)を不活性化したものです。

選択肢3
その通りの記述です。不活化ワクチンの一種です。

選択肢4
その通りの記述です。

よって正解は3,4です。

 

以下にワクチンの種類についてまとめました。

 

◎生ワクチン

病原体の毒性を弱めて病原性をワクチン化したもの。
注射剤の生ワクチンを接種した後、別の種類の注射剤の生ワクチンを接種する場合は、27日以上間隔を空けなければならない。

主な生ワクチン
黄熱、結核(BCG)、流行性耳下腺炎(ムンプス)、天然痘、水痘、風疹、麻疹、はしか、ロタウイルスなど

◎不活化ワクチン
病原体の毒性(感染性・病原性)を失わせたものをワクチン化したもの。
病原体の遺伝子をもとに作られた組換えタンパク質を有効成分とするワクチンも不活化ワクチンの一種である。
得られる免疫力が弱いため、複数回の摂取が必要となる。
 
主な不活化ワクチン
日本脳炎、ポリオ、狂犬病、インフルエンザウイルス、インフルエンザ菌b型(Hib)、百日咳、A型・B型肝炎など
 
◎トキソイド
不活化ワクチンの1種。病原体の毒素だけを取り出し、毒性をなくしたものをワクチン化したもの。
 
主なトキソイド
破傷風とジフテリアなど。
 
なお、3種混合ワクチン(DPT)は、百日咳(不活化ワクチン)、破傷風、ジフテリアの3つを合わせたワクチンです。

 

 

 以前は上記の3種類のみでしたが、新型コロナウイルスのワクチンとして以下のワクチンが2021年に登場しました。

◎メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン
新型コロナウイルスのスパイクタンパク質のもととなるmRNAを脂質の膜に包んだワクチンです。

◎ウイルスベクターワクチン
無害化された遺伝子組み換えウイルス(ベクター)に、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質のもととなる遺伝情報を組み込んだワクチンです。

 

 私は以下の2つのゴロを覚えて、生ワクチンはそれ以外と覚えましたが、インターネットで検索すると、他にもゴロや覚え方が出てきますので、皆さんの覚えやすい覚え方で覚えてください。(漢字2文字の感染症はすべて生ワクチンなど)

不活化ワクチンのゴロ

 

トキソイドワクチンのゴロ

 

↓他の国試関連の記事も、よければ参考にしてください。

 

ホームページについてのアンケート