国試問題 利尿薬関連
本部のTです。
前回、利尿薬についてのまとめを書きましたので、今回は実際に利尿薬に関連する国家試験問題を解いていきましょう。オリジナル問題も載せていますので、参考にしてください。
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第107回問35
利尿薬の作用機序でないのはどれか。1つ選べ。
- パソプレシンV2受容体遮断
- 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)受容体刺激
- アルドステロン受容体刺激
- 炭酸脱水酵素阻害
- Na+-K+-2Cl-共輸送系阻害
解説
- トルバプタンの機序です。
- カルペリチドの機序です。
- アルドステロンの受容体を刺激してしまうと、Na+の再吸収が進み、尿量が減少します。よって利尿薬の作用機序として不適切です。
なお、アルドステロン受容体を刺激する利尿薬として、カリウム保持性利尿薬のスピロノラクトン、エプレレノン、カンレノ酸、エサキセレノンなどがあります。
- アセタゾラミドの機序です。
- ループ利尿薬の機序です。
よって、答えは3です。
第108回問161
利尿薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- トリアムテレンは、遠位尿細管と集合管のNa+チャネルを遮断してNa+の再吸収を抑制することで、管腔へのK+の排出を増加させる。
- トルバプタンは、集合管のバソプレシンV2受容体を遮断することで、水の排泄を増加させる。
- インダパミドは、ヘンレ係蹄上行脚のNa+-K+-2Cl-共輸送体を阻害することで、Na+の再吸収を抑制する。
- エプレレノンは、遠位尿細管と集合管のミネラルコルチコイド受容体(アルドステロン受容体)を遮断することで、Na+の再吸収とK+の排泄を抑制する。
- アゾセミドは、遠位尿細管のNa+-CI-共輸送体を阻害することで、水の再吸収を抑制する。
解説
- 文章の前半は合っていますが、後半は「管腔へのK+の排出を低下させる」が正しいです。
- 正しい記述です。
- インダパミドはサイアザイド類似利尿薬で、遠位尿細管のNa+-CI-共輸送体を阻害することで、Na+の再吸収を抑制します。
ヘンレ係蹄上行脚のNa+-K+-2Cl-共輸送体を阻害するのはループ利尿薬です。
- 正しい記述です。
- アゾセミドはループ利尿薬であり、ヘンレ係蹄上行脚のNa+-K+-2Cl-共輸送体を阻害します。
よって正解は2,4です。
第109回問33
メフルシドの利尿作用の機序はどれか。1つ選べ。
- 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)受容体刺激
- バソプレシン V2 受容体遮断
- 上皮性 Na+ チャネル遮断
- Na+‐Cl– 共輸送体阻害
- Na+‐K+‐2Cl– 共輸送体阻害炭酸脱水酵素阻害
解説
メフルシドはサイアザイド類似利尿薬であり、遠位尿細管のNa+-CI-共輸送体を阻害することで、水の再吸収を抑制します。
よって正解は4です。
第109回問59
高ナトリウム血症の患者に禁忌である薬物はどれか。1 つ選べ。
- トルバプタン
- エプレレノン
- エナラプリルマレイン酸塩
- カルベジロール
- フロセミド
解説
正解は1です。
トルバプタンは電解質の排泄を伴わない利尿を起こすため、血中の電解質濃度が高まり、高Na血症を引き起こす場合があります。そのため、高Na血症の患者に禁忌です。
第109回問 165 一部改変
スピロノラクトンに関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 上皮性 Na+ チャネルの発現を増加させる。
- アルドステロン誘導タンパク質の生合成を抑制する。
- 腎尿細管における Na+, K+ATPase の発現を増加させる。
- 腎尿細管における K+ 分泌を促進する。
- 抗アンドロゲン作用を示す。
解説
- 「上皮性 Na+ チャネルの発現を低下させる」であれば正しいです。
- 正しい記述です。
- 「Na+, K+ATPase の発現を低下させる。」であれば正しいです。
- 「腎尿細管における K+ 分泌を抑制する。」が正しいです。
- 正しい記述です。
よって正解は2,5です。
やや難しい問題ですが、スピロノラクトンは、ミネラルコルチコイド受容体遮断薬(カリウム保持性利尿薬)であり、ミネラルコルチコイド受容体遮断薬は心不全の薬として近年重視されているので、細かい点も覚えておいては損はありません。
第109回問 292-293
65歳男性。高血圧症と高尿酸血症の治療中で、以下の処方薬を服用している。
(処方) シルニジピン錠 20 mg 1 回 1 錠(1 日 1 錠)
フェブキソスタット錠 40 mg 1 回 1 錠(1 日 1 錠) 1 日 1 回 朝食後
最近血圧が高い日が続き、かかりつけ医より患者情報の共有とともに降圧薬の追加について薬剤師に相談があった。医師から得た検査値と患者情報は以下のとおり。
(検査値) 血圧 170/100 mmHg、心拍 70 拍/分、空腹時血糖 110 mg/dL、 HbA1c 6.2%、総コレステロール 190 mg/dL、 TG(トリグリセリド)100 mg/dL、HDL-C 60 mg/dL、LDL-C 110 mg/dL、 eGFR 82 mL/min/1.73 m²、K 3.3 mEq/L、尿酸値 5.8 mg/dL
(患者情報)
- 最近よく足がつるので、ドラッグストアで芍薬甘草湯を購入し毎日服用している。
- 芍薬甘草湯を服用するようになってから四肢の痛み、だるさを自覚している。
- 気管支ぜん息の既往歴あり。現在は服薬なし。
- 飲酒:ビール 1,000 mL/日 喫煙:20 本/日
問292(病態・薬物治療)
この患者の病態と治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 偽アルドステロン症が生じている可能性がある。
- 高尿酸血症は、腎機能低下による可能性が高い。
- 降圧目標は、診察室血圧で140/90mmHg未満である。
- 尿酸値は、治療目標値に達している。
- 脂質異常症が認められるので、その治療も行う必要がある。
問293(実務)
この患者に追加する降圧薬のうち、適しているのはどれか。2つ選べ。
- アムロジピン
- アジルサルタン
- トリクロルメチアジド
- エサキセレノン
- カルベジロール
解説
まずこの患者の状態について整理します。
◎高血圧症状の持続
血圧 170/100 mmHg → 降圧目標未達成(この患者は75歳未満であるため、診察室血圧での降圧目標は130/80 mmHg未満)。
◎高尿酸血症は目標値を達成
高尿酸血症の治療目標値は、6.0 mg/dL未満です。患者の尿酸値は5.8 mg/dLで、目標値を達成しています。
◎その他の検査値
- 血清カリウム値(K)低下: 3.3 mEq/L(低カリウム血症)。
- 腎機能はeGFR 82 mL/min/1.73m²で正常範囲。
- 総コレステロール 190 mg/dL、LDL-C 110 mg/dL、HDL-C 60 mg/dL、TG 100 mg/dLは基準値内
◎服用中の芍薬甘草湯による副作用
芍薬甘草湯を服用するようになってから四肢の痛み、だるさを自覚していることからグリチルリチン酸による偽アルドステロン症である可能性が高いです。
◎気管支喘息の既往歴
β遮断薬の使用には注意が必要です。
問292
上記より、正解は1,4です。
問293
選択肢1 アムロジピン ×
すでに同じCa拮抗薬であるシルニジピンを使用中であり、異なる機序の降圧薬を組み合わせるほうが有効であるため、追加する薬剤として不適切です。
選択肢2 アジルサルタン ◯
ACE阻害薬はアルドステロンの働きを抑制する作用があり、血清カリウム値を上げる作用もあるため、この患者に適しています。
選択肢3 トリクロルメチアジド ×
サイアザイド系利尿薬であり、副作用として高尿酸血症、低カリウム血症があるため不適切です。
選択肢4 エサキセレノン ◯
カリウム保持性利尿薬であるため、低カリウム血症のこの患者に適切です。
選択肢5 カルベジロール ×
αβ遮断薬であり、β遮断作用により喘息を悪化させる危険性があるため、喘息既往歴の患者には禁忌です。
正解は2,4です。
ついでに利尿薬に関するオリジナル問題も作ってみましたので、その解説もします。
オリジナル問題
利尿薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- フロセミドは、ヘンレ係蹄上行脚のNa⁺-K⁺-2Cl⁻共輸送体を阻害することで、Na⁺の再吸収を抑制し、水の排泄を増加させる。
- エサキセレノンは、ステロイド骨格を有さず、選択的にミネラルコルチコイド受容体を遮断する。
- トリアムテレンは、遠位尿細管においてNa⁺-Cl⁻共輸送体を阻害することで利尿作用を発揮する。
- トルバプタンは、バソプレシンV1受容体を遮断することで、水の排泄を増加させる。
解説
選択肢1 ◯
正しい記述です。
選択肢2 ◯
正しい記述です。前述のように、ミネラルコルチコイド受容体遮断薬は近年重視されている薬なので、細かい点も覚えておいては損はありません。
選択肢3 ×
トリアムテレンのは遠位尿細管と集合管のNa+チャネルを遮断してNa+の再吸収を抑制します。
選択肢4 ×
トルバプタンはバソプレシンV2受容体を遮断します。
正解は1,2です。
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