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2019年8月13日

薬害根絶デー…主な薬害について

薬害根絶デー

1999年8月24日、厚生労働省の前庭に、「薬害根絶 誓いの碑」が建立され、サリドマイド・スモン・薬害エイズなどの悲惨な薬害を引き起こした反省と謝罪がなされました。しかし、今なお新たな薬害が生み出され、適切な救済がなされぬまま、被害と闘う毎日が続いています。私達は、薬害の根絶と被害者救済を願い、毎年この日に「碑の前の誓い」を中心に厚生労働省交渉・文部科学省交渉・リレートークなど、一連の薬害根絶行動を行っています。(全国薬害被害者団体連絡協議会

民医連サイト記事(外部サイトへのリンク)



コムファ内の記事も御覧ください。(こちら

ご注意:
以下の記事は、片平冽彦氏「「薬害の歴史」からみた薬害防止策の基本とその具体策」(東洋大学 社会医学研究 2009年)を参考に、主な薬害事案についてまとめたものです。
薬害に関する見解は引用先・もしくはこの記事担当者のもので、(社)京都コムファのものではありません。関連する団体やリンク先は網羅的なものではありません。




サリドマイド薬害事件

1. 概要
1959年頃。
妊娠初期にサリドマイド剤を服用したため世界的に四肢に奇形のある子が生まれた。世界の被害者推計5850人、日本での認定は309人。


2. 販売・使用など
睡眠・鎮静薬として西ドイツで発売され、1957年以降世界中で、日本では1958年「クセにならない安全なイソミン錠」などのうたい文句で販売した。


3. 危険の指摘と対応
1961年オーストラリアの医師が奇形児の出産に立ち会い、サリドマイドの原因疑いを製薬会社に報告。
1961年西ドイツの医師が学会報告し、西ドイツでは販売中止と回収。
日本では西ドイツの出来事を「科学的ではない」、ただの「新聞さわぎ」などとし、その後約10ヶ月販売を続けた。


4. 販売中止など
1962年8月日本の医師が学会で報告。マスコミに取り上げられ、9月に回収に着手。


被害者団体など
公益財団法人 いしずえ サリドマイド福祉センター


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スモン(キノホルム薬害)事件

1. 概要
1960年代、日本。
胃腸薬として販売されたキノホルムによって思い神経障害を受けたスモン患者が多発。厚生省研究調査班の調査で、「疑い」も含め約1万1127人。


2. 販売・使用など
はじめは「創傷防腐剤」として1900年にスイスのバーゼル社(→チバ→チバガイギー→ノバルティス・ファーマ)から販売された。戦後の日本では田辺製薬、チバ・武田薬品から1956年~1966年の間に製造・輸入・販売された。
知覚・歩行・視覚障害等の症状を呈した。


3. 危険の指摘と対応
販売停止の35年前の1935年、アルゼンチンの医師がキノホルムによるスモン様神経症状の害作用をチバ社に報告していたが、同社は無視して「副作用の少ない薬」として販売した。


4. 販売中止など
スモンが特定の地域に多発したことから、ウイルス感染説が出されたが、1970年キノホルム中毒説が出され、同年9月に販売停止。


被害者団体など
社会福祉法人 全国スモンの会


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薬害エイズ事件

1. 概要
米国からの輸入非加熱血液製剤により、日本の血友病患者等がHIVに感染させられた事件。


2. 販売・使用など
輸入非加熱血液製剤は1972年から1985年にかけて販売された。これらの製剤によるHIV感染の危険性については、関係製薬企業・厚生省・一部医師らは早くから情報を得ていたのに、早期に使用中止するなどの対策を取らなかった。


3. 危険の指摘と対応
米国ではエイズ罹患の危険性は1982年7月以降注意や警告が出されていた。日本のミドリ十字では血漿部長がエイズ感染経路の一つに血液製剤が関連する可能性を1983年6月には指摘していた。しかし日本では製薬会社は危険性ではなく安全性を強調した発言や広報を行ってきた。
厚生省は1983年6月にエイズに関する研究班を設置した…


4. 販売中止など
HIV感染のおそれのない加熱製剤の製造承認は1985年になってからだったが、その後も非加熱製剤回収されないで、使用された例もあった。


被害者団体など
社会福祉法人 はばたき福祉事業団(←東京HIV訴訟原告団)
ネットワーク医療と人権(←大阪HIV訴訟原告団)


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ソリブジン薬害事件

1. 概要
1993年。帯状疱疹の抗ウイルス薬ソリブジンとフルオロウラシル系抗がん剤の相互作用で2ヶ月の間に15人が死亡した。


2. 販売・使用など
ソリブジンは1993年9月に販売開始、10月末までに15人が死亡。その後1994年1月までに1人が死亡。臨床試験でも複数の死者がいたことが判明。


3. 危険の指摘と対応
開発者日本商事では、ソリブジンと当該抗がん剤との相互作用で毒性を上昇させるという1986年の報告を1988年11月までには読み、1989年の実験でも確認していた。しかし、添付文書には「併用投与を避けること」という控えめな記載をして国に認可された。


4. 販売中止など
1993年に出荷停止・回収を発表。


被害者団体など

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薬害ヤコブ病事件

1. 概要
能の手術などに用いられたヒト乾燥硬膜が異常プリオンに汚染されていたため、移植を受けた患者が難病のクロイツフェルト・ヤコブ病に感染し、その多くが死亡した。被害者数は135人(2009年)


2. 販売・使用など
日本では1973年に使用が承認され年間2万例以上使用。安全な方法で滅菌されていると歌っていたが、1990年以降感染症例が報告されていた。


3. 危険の指摘と対応
1978年には、それまでの滅菌方法(ガンマ線)が異常プリオンに有効でないことは報告されていたが、安全確保対策はとられなかった。1987年に米国での輸入は中止されたが、日本ではこの情報が入ったにもかかわらず使用が継続された。


4. 販売中止など
1996年の製造中止・1997年のWHO勧告の後にようやく日本での使用が中止された。


被害者団体など
薬害ヤコブ病全国連


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薬害C型肝炎

1. 概要
1964年以降に出産時等の止血のために使用された血液製剤であるフィブリノゲン製剤、第Ⅸ因子製剤がC型肝炎ウイルスに汚染されていたために生じた薬害事件。感染者は1万人(製薬会社の2002年の報告)から28万人(2008年薬害肝炎全国原告・弁護団)にのぼるとも言われている。第Ⅸ因子製剤による感染は1271人と推計(2002年厚生労働省)。


2. 販売・使用など
1964年から1987年に製造・輸入された。販売は日本製薬、日本ブラッドバンク、ミドリ十字。


3. 危険の指摘と対応
ミドリ十字の専務はこれら血液製剤による肝炎感染の危険性を発売前から知っていたが、1964年から1987年まで製剤に対する無効な紫外線照射を「肝炎対策」として継続した。


4. 販売中止など
フィブリノゲン製剤は1998年に適応が限定され、第Ⅸ因子製剤は1985年に加熱製剤が承認されたが、非加熱製剤は回収されずにその後も使用が継続された例があった。


被害者団体など
薬害肝炎全国原告団


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イレッサ薬害事件

1. 概要
肺がんの「夢の新薬」として2002年に世界に先駆けて発売されたイレッサが発売後2012年3月までに「間質性肺炎」等の肺障害による847人の死亡者を出した(2012年まで)事件。


2. 販売・使用など
イレッサは健康細胞は壊さないまったく新しいタイプで、副作用も殆ど無く手軽に自宅でも職場でも服用出来て延命の効果は大きいと紹介された。2002年1年に輸入承認申請が出され、8月にはに販売が承認された(異例のスピード承認と報道された)。販売開始から僅か1年間で294人が亡くなり、訴訟が提起された2004年末までの2年5ヵ月間で577人の死亡が報告された。


3. 危険の指摘と対応
2000年から2001年に行われた国内外の臨床試験、治験段階の動物実験で重篤な副作用が判明していたのに、この事実を隠して承認申請をした。また添付文書に、治験の段階でも判明していた重篤な副作用(間質性肺炎)の記載をしなかった。さらにアメリカではFDAが,効果がないとして新規の患者への投与禁止。欧米では延命の効果がないとして承認申請の取り下げまで行われたのに、東洋人には効果があるらしいとの理由で、検証もしないままに使用が継続された(イレッサ薬害被害者の会HPより)。


4. 販売中止など
2002年12月にイレッサ使用を専門医に限定し、緊急時に対応できる病院等に限定。投与を受ける患者は入院を原則とする、等の緊急対策を決めた。


被害者団体など
イレッサ薬害被害者の会


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HPVワクチン薬害

1. 概要
「子宮頸がん予防ワクチン」とのふれこみで接種されたHPVワクチン(サーバリックス・ガーダシル)によって、全身の疼痛、知覚障害、運動障害、記憶障害等の深刻な副作用被害が発生し、全国の多くの被害者が今なお苦しんでいる。


2. 販売・使用など
2009(平成21)年10月、HPVワクチン(サーバリックス)が厚生労働省により承認され、日本国内での販売が開始。
2010(平成22)年11月、ワクチン接種に関し公費助成が決定され、
2013(平成25)年4月には予防接種法が改正され、定期接種化が実施された。
2013(平成25)年6月厚生労働省は予防接種法に基づく地方自治体の長等による定期接種の積極的勧奨を一時中止する措置を執ったものの、定期接種化そのものの中止には至っていない。


3. 危険の指摘と対応
日本で接種による副反応疑いの報告頻度は100万接種あたりサーバリックス、ガーダシルとも100人を超え、他のワクチンでも報告の多い麻疹の同50人を上回る。
けいれん、意識障害めまい、内分泌異常、疲労、麻痺、筋力低下、などなど多彩な症状が複合的に長期にわたる症状が見られ、国外の報告と共通している。日本では、1年以上歩行困難となった事例、また日本の別の少女らでは、身体の痛み、脱力感、寝たきりになる例、一時的な記憶障害を繰り返すようになったといった報道がされた。
現在地域ごとに複数の裁判が提起されている。


4. 販売中止など
定期接種の積極的勧奨を一時中止する措置が継続中。定期接種は可能。


被害者団体など
HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団


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薬害はなぜ起こる

薬害が起こる原因は複合的で、医療従事者の認識不足も一因となりえます。


以下は、製薬会社・販売会社、行政、大学・学術機関などの態度や行動が原因である場合です。
1)危険情報の軽視
開発の時点で気づいていた重大な副作用を、注意して使えば大丈夫として、医療現場に伝えない。
2)適応の拡大、拡販
臨床試験で有用性が認められた範囲を超えて拡販する。
3)発売中止・回収の遅れ
問題とわかった後も、売り続ける。間違いを認めない。
4)情報の捏造や隠蔽
有害事象を否定したり、薬剤の有効性を過渡に評価するような研究発表を行って、当該薬剤の使用を合理化・正当化する。


こうした患者の安全よりも薬剤の使用を優先させる原因は何でしょうか。人の健康や命よりも経済的な利害を優先させる行動、それを支える組織、行政と製薬会社・販売会社との癒着が過去には指摘されています。
副作用や副反応はどんな薬にもありえますが、命に関わる重大問題です。開発・認可・使用にわたるすべてのプロセスでそれぞれの関係者が記録をし、資料をきっちり残し、人を苦しみから救うはずの薬剤が、どこで「間違い」が発生したのか、事実歪を歪曲・隠蔽せず、すべて公開して誰もが検証できるような仕組みを保持しなければなりません。関係資料を勝手な判断で廃棄したりすることは絶対に許されないことです。