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こすもす日和

こすもすだより

2019年4月26日

粧う(よそおう)

私は化粧品が好きだ。
何が楽しいのかと思われるかもしれないが、自分だけでなく、人が化粧されるところを見るのも好きなのである。
生前、祖母がデイサービスを利用している時に、メイクアップ教室があったらしい。記念に撮った写真を見せてもらうと、祖母を含め、利用者のみなさんとても表情がいい。家でもしてみたら?とすすめると、古い化粧品しか持ってないからと言うので、手持ちのベージュ系の口紅を塗ってあげた。すると、どうもしっくりこない。地味な色が、老いを強調してしまうのである。そこで、鮮やかなピンクの口紅をつけてみると、驚くほど華やかになった。それは、雑誌の懸賞か何かで当たったものの、派手すぎて使うことなく眠っていた代物だった。20代には浮いてしまう色でも、80代には似合うのである。その年齢になってはじめて似合うようになる色もあるのかと思うと、楽しくなった。祖母も、気分が上がったのか、タンスの中から古いアクセサリーや服など取り出してきて、明日のデイにつけていこうかな?どれがいいと思う?と、即席ファッションショーが始まった。祖母との思い出の一つである。
化粧は、外見を変化させるものであるが、人の内面にも影響するものだと思う。幅一ミリのアイラインや、微妙な色味や陰影が、気分まで変えてしまうのである。
私自身は、あまり化粧品を買う機会は少ないので、いざ何かを購入する時は、ネットや雑誌で口コミをみるなど、事前調査に力が入ってしまう。最近、チークを新しくした。ここ一年ほどは、ドラッグストアでも買える安価な練り状チークを、シリコンパフでつけるのが気に入りだったが、久しぶりにパウダーチークにした。少し奮発して、誰もが知っているであろう、あの海外ブランドのものだ。使ってみると、粉の質や発色が噂どおりの良品である(付属のブラシはいまいちだが)。ただ、香水が漂う店頭ではわからなかったが、私の苦手なローズの香りがついている事に、帰ってから気づいた。しかし、ちょっと失敗はあったものの、黒光りする新しいケースは、毎朝の気分を上げるには十分なものなのである。

(M.N.)

(この記事は2018年1月4日発行「こすもすだより」第56号として掲載されたものです)