感動と絶望と
芸術の秋にちなんで、
きょうは、音楽の話題。
「弦楽四重奏」String Quartet(以下、SQ)と聞くと、皆さんはどんな印象を持っているだろうか?
このSQ、おそらくクラシック音楽の中でも特に「通好みの渋いジャンル」と云うのが通説だろう。
ただ、今回「エベーヌSQ」というフランス人の若者による四重奏は、従来の既成概念をまったく覆すものだった。
ニューヨーク・タイムズ紙に「ジャズバンドへ自在に変容することができるSQ」として称賛されたのは伊達ではなかった。
しかも、正統派としての実力のほどは、超難関のミュンヘン国際コンクール優勝の経歴が証明しているのである。
コンサートの前半は、古典派のハイドンと浪漫派のメンデルスゾーンでクラシック通をうならせ、後半のプログラムは当日発表というあたらしいスタイル。
実際に演奏されるまで何が始まるのか不明というミステリアスなステージなのだ。
添付の画像は、終演後にロビーに発表された後半のプログラムである。
演奏の合間に、口頭で曲目を紹介しながら、ジョークを交えて進行された。
作曲家の楽譜を音として再現する通常のクラシック音楽とは異次元のステージは、極めてクリエイティブで、楽譜に縛られない即興演奏の自由がハイレヴェルに表現されていた。
クラシックとジャズという二つの世界を自由に行き来して、おまけにボーカリストとしての実力まで見せつけた彼らには、称賛の拍手と満足感で会場が満たされたのだった。
「エベーヌSQ」
この名前は、覚えておいて損はありません。
チャンスがあれば、ぜひライヴで楽しんでみてください。
ただ、奏者としては絶望的な距離感を感じたのも事実。
聴衆としては、大満足。
奏者としては、絶望感。
ぺけ太郎 記