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学術研修

2022年3月1日

薬剤師国家試験(胃酸分泌抑制薬 106回問35 104回問308等)

本部のTです。

今回も薬学生の皆さんに向けて、薬剤師国家試験の問題を取り上げて、解説してみました。

 

106回薬剤師国家試験 問35 必須問題

ラフチジンの胃酸分泌抑制作用に関わる機序はどれか。1つ選べ。

  1. H+, K+-ATPase 阻害
  2. ヒスタミン H2 受容体遮断
  3. アセチルコリン M1 受容体遮断
  4. プロスタノイド EP 受容体遮断
  5. ガストリン遊離抑制

 

解説

ラフチジンは、いわゆるH2ブロッカーです。胃の壁細胞のH2受容体にヒスタミンが作用すると、壁細胞のプロトンポンプが働き、胃酸が分泌されるため、H2受容体を遮断することで、胃酸の分泌を抑制する薬がH2ブロッカーです。よって、答えは2です。

以下にH2ブロッカーやその他の胃酸分泌抑制薬の作用機序について図示しました。

 

 

選択肢1

ランソプラゾールなどのプロトンポンプ阻害薬の作用機序です。プロトンポンプ(H+, K+-ATPase)が阻害されると、胃酸の分泌が抑制されます。
 

選択肢3

ピレンゼピンなどの選択的ムスカリン受容体拮抗薬の作用機序です。胃粘膜にはECL細胞(消化管クロム親和性細胞)という内分泌細胞が存在し、そのM1受容体へアセチルコリンが作用すると、ECL細胞からヒスタミンが分泌され、胃壁細胞のH2受容体に作用します。選択的ムスカリン受容体拮抗薬は、M1受容体を遮断することで、胃酸の分泌を抑制します。(前述の図を参照)
 

選択肢4

胃の壁細胞のプロスタノイドEP受容体にプロスタグランジンが作用すると、プロトンポンプからの胃酸の分泌を抑制します。そのため、この選択肢のようにプロスタノイドEP受容体を遮断してしまうと、胃酸の分泌が促進されてしまうことになります。

プロスタノイドEP受容体を刺激する薬剤としては、プロスタグランジン製剤であるミソプロストールがあり、胃粘膜の防御因子増強作用と胃酸分泌抑制作用を持ちます。
 

選択肢5

ガストリン遊離抑制作用はプログルミドの作用機序ですが、プログルミドは、他の胃酸分泌抑制薬に比べると作用が弱いため、現在では使用されていません。

以下に主な胃酸分泌抑制薬についてまとめました。消化性潰瘍、逆流性食道炎にはプロトンポンプ阻害薬が第一選択薬になります。
 

1.主な胃酸分泌抑制薬

分類 作用機序、備考
 プロトンポンプ
 阻害薬 (PPI)
 ランソプラゾール

 オメプラゾール

 ラベプラゾール

 エソメプラゾール

  • H+, K+-ATPase(プロトンポンプ)を
    不可逆的に阻害。酸による活性化が必要。
  • リルピビリン、アタザナビルとは併用禁忌(胃内のpHが上昇することにより、吸収が低下する)。
  • オメプラゾールはCYP2C19を阻害するため、CYP2C19で代謝される薬との相互作用に注意。
 ボノプラザン
  • プロトンポンプを可逆的に阻害。
  • 酸による活性化が不要なため、効果の出現が速く、持続時間が長い。
 H2受容体拮抗薬  ファモチジン
 ラニチジン
 シメチジン
 ロキサチジン
 ニザチジン
 ラフチジン
  • ヒスタミンH2受容体を遮断することで、胃酸の分泌を抑制。
  • いずれも腎排泄型の薬剤であるため、腎機能に応じた用量調節が必要。
  • また、シメチジンは、CYP2D6、CYP3A4を強力に阻害するため、相互作用に注意が必要。
 選択的ムスカリン
 受容体拮抗薬
 チキジウム
  • アセチルコリンM1受容体を遮断することで、ECL細胞からのヒスタミン遊離を抑制し、胃酸の分泌を抑制。
  • 抗コリン作用があるため、緑内障、前立製肥大、重篤な心疾患等には禁忌。
 ピレンゼピン
  • M1受容体への選択性が高いため、抗コリン作用は比較的弱く、緑内障等に対する禁忌はない。
 プロスタグランジン

 製剤

 ミソプロストール
  • 胃粘膜の防御因子増強作用と、プロスタノイドEP受容体への刺激による、胃酸分泌抑制作用を併せ持つ。
  • 子宮平滑筋に存在するEP受容体を刺激して、子宮収縮を引き起こすため、妊婦への投与は禁忌。

 

第105回薬剤師国家試験 問35 必須問題

Kと競合してH,K–ATPaseを可逆的に阻害し、胃酸分泌を抑制するのはどれか。1つ選べ。

  1. エソメプラゾール
  2. ラフチジン
  3. ピレンゼピン
  4. ボノプラザン
  5. ポラプレジング

 

解説

H,K–ATPaseを可逆的に阻害するのは 4 ボノプラザン です。よって答えは4です。

選択肢1のエソメプラゾールもPPIですが、H,K–ATPaseを不可逆的に阻害するため、本問の答えとしては誤りです。

なお、この問題とは関係ありませんが、エソメプラゾールがオメプラゾールの光学異性体(S体)であることは知っておきましょう。(「エス」+「オメプラゾール」で「エソメプラゾール」です)。オメプラゾールは、主にCYP2C19で代謝されますが、CYP2C19には遺伝子多型が存在し、その代謝能力に個人差があります。エソメプラゾールは代謝におけるCYP2C19の寄与率が低く、代謝に個人差が少ない薬となっています。

選択肢5のポラプレジンクは、亜鉛を含む胃粘膜の防御因子増強薬です。

 

第104回薬剤師国家試験 問308 実践問題 (一部改変)

58歳男性。入院中にヘリコバクター・ピロリの一次除菌を行うことになった。現在処方されている薬剤があり、除菌時の治療薬の選択について医師から薬剤師に問合せがあった。処方は、以下の薬剤を考えているとのことであった。

 アモキシシリン水和物
 クラリスロマイシン
 「 薬物A 」

<現在の処方薬>
 クロピドグレル硫酸塩
 プラバスタチンナトリウム
 カルベジロール

現在の処方薬を考慮して、薬剤師が薬物Aとして推奨するのに適切なのはどれか。2つ選べ。

  1.  オメプラゾール
  2.  ファモチジン
  3.  ポラプレジンク
  4.  ラベプラゾールナトリウム
  5.  ランソプラゾール

 

解説

ピロリ菌の除菌の治療薬の組み合わせは以下のとおりです。
(用法用量について問う問題も101回の問202で出題されているので、用法用量もきちんと覚えましょう。)

ピロリ菌の一次除菌

「PPI + アモキシシリン250mg 3カプセル + クラリスロマイシン200mg 1錠または2錠」
の3剤を1日2回朝夕食後に7日間服用します。

一次除菌に失敗した場合の二次除菌

「PPI + アモキシシリン250mg 3カプセル + メトロニダゾール250mg 1錠」
の3剤を1日2回朝夕食後に7日間服用します。

PPIの1回量
  • ランソプラゾール30mg 1カプセル
  • オメプラゾール20mg 1錠
  • ラベプラゾール10mg 1錠
  • エソメプラゾール20mg 1カプセル
  • ボノプラザン20mg 1錠

 

この問題における薬物AにはPPIが入ります。

選択肢の中には、オメプラゾール、ラベプラゾール、ランソプラゾールの3つのPPIがありますが、この患者さんが服用しているクロピドグレルはオメプラゾールと併用注意のため、ラベプラゾールとランソプラゾールを選ぶのが正解です。よって答えは、4と5です。

クロピドグレルとオメプラゾールが併用注意なのは、オメプラゾールがCYP2C19阻害薬であり、クロピドグレルがCYP2C19によって代謝され、活性代謝物となる薬であるため、併用によってクロピドグレルの効果が減弱する可能性があるからです。

※他のPPIもCYP2C19で代謝されますが、他のPPIのCYP2C19の阻害作用はオメプラゾールに比べて低いとされ、クロピドグレルとの併用注意にはなっていません。

 

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