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学術研修

2023年1月27日

国試解説(107回問163等)と2型糖尿病治療薬まとめ

本部のTです。
今回は糖尿病治療薬に関する薬剤師国家試験問題である103回問153、107回問163、106回問166-167の解説をしてみました。また最後には2型糖尿病治療薬のまとめも載せていますので、ご覧ください。
(2023/11/7 SGLT-2阻害薬、インクレチン関連薬の薬品名の覚え方(ゴロ)を追記しました。)

目次
  103回問153
  107回問163
  106回問166-167
  2型糖尿病治療薬の種類
  2型糖尿病治療薬の作用機序
  SGLT-2阻害薬、インクレチン関連薬の覚え方

 

103回問 153

糖尿病治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. ダパグリフロジンは、尿細管の Na+/グルコース共輸送体2(SGLT2)を阻害することで尿中へのグルコースの排泄を促進する。
  2. ブホルミンは、AMP 依存性キナーゼ(AMPK)を抑制することで肝臓における糖新生を抑制する。
  3. ミグリトールは、小腸粘膜に存在するα-グルコシダーゼを阻害することで糖の消化と吸収を遅延させ、食後高血糖を抑制する。
  4. ナテグリニドは、アルドース還元酵素を阻害することで細胞内ソルビトールの蓄積を抑制し、末梢神経障害を改善する。
  5. リナグリプチンは、膵β細胞上のグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体を直接刺激することでインスリン分泌を促進する。

 

解答

選択肢1 ○
ダパグリフロジンは、SGLT2阻害薬ですので、正しい記述です。

選択肢2 ×
ブホルミンはビグアナイド系薬であり、AMPKを活性化することにより、肝臓での糖新生を抑制します。また骨格筋や脂肪細胞において、AMPKを活性化することでGLUT4の細胞膜への移行を促進し、糖の取り込みを促進します。

選択肢3 ○
ミグリトールはα-グルコシダーゼ阻害薬ですので、正しい記述です。

選択肢4 ×
ナテグリニドは速攻型インスリン分泌促進薬であり、スルホニル尿素受容体に結合して ATP 感受性 K+ チャネルを遮断することで、膵β細胞の細胞膜を脱分極させ、インスリンの分泌を促進します。アルドース還元酵素を阻害するのは、エパルレスタットです。

選択肢5 ×
リナグリプチンはDPP-4阻害薬であり、インクレチン(GIP、GLP-1)を分解するDPP-4を阻害することで、インスリンの分泌を促進します。GLP-1受容体を直接刺激する薬は、リラグルチドなどのGLP-1受容体作動薬です。

よって正解は1,3です。

 

107回問 163

2型糖尿病の治療に使用される薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。 2つ選べ。

  1. ミチグリニドは、スルホニル尿素受容体に結合して ATP 感受性 K+ チャネルを遮断することで、膵β細胞の細胞膜を脱分極させる。
  2. ピオグリタゾンは、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)を活性化することで、脂肪細胞の分化を促進する。
  3. イプラグリフロジンは、ナトリウム-グルコース共輸送体 2(SGLT2)を阻害することで、小腸でのグルコースの吸収を選択的に抑制する。
  4. リナグリプチンは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体を活性化することで、グルコース濃度依存的にインスリン分泌を促進する。
  5. メトホルミンは、AMP 活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を阻害することで、骨格筋でのグルコーストランスポーター4(GLUT4)の細胞膜への移行を促進する。

 

解説

選択肢1 ○
ミチグリニドは、速攻型インスリン分泌促進薬ですので、正しい記述です。

選択肢2 ○
正しい記述です。

選択肢3 ×
イプラグリフロジンなどのSGLT2阻害薬は、腎臓の近位尿細管にあるSGLT2を阻害することで、尿細管でのグルコースの再吸収を抑制します。小腸でのグルコースの吸収を抑制するわけではありません。

選択肢4 ×
リナグリプチンはDPP-4阻害薬です。前問の解説の選択肢5を参照。
なお、文中の「グルコース濃度依存的にインスリン分泌を促進」というのは、血糖値の上昇に伴ってインスリン分泌が増加するという意味で、DPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬、イメグリミンの特徴です。

選択肢5 ×
AMPKを阻害ではなく、活性化です。前問の解説の選択肢2を参照。

よって正解は1,2です。

 

106回問 166−167

35歳男性。身長 173 cm、体重 85kg。父親が糖尿病。既往歴なし。喫煙歴なし。機会飲酒。会社事務職で日頃より運動不足であり、毎日 1 L 以上の甘い清涼飲料水を飲用していた。この 1 年間で体重が 3 kg 増加したが、ここ数ヶ月は体重の減少を自覚している。 7 日前より全身倦怠感、口渇及び多尿を認めたため外来受診した。受診時の意識は清明であり、血糖値 480 mg/dL、HbA1c 11.0%(NGSP値)、尿糖(4+)、尿蛋白(-)、尿中ケトン体(3+)であった。

問 166
血糖降下作用を有する薬物の作用機序に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. メトホルミンは、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)を阻害することで、血中インクレチン濃度を上昇させる。
  2. カナグリフロジンは、ナトリウム-グルコース共輸送体 2 (SGLT2)を阻害することで、腎尿細管におけるグルコースの再吸収を抑制する。
  3. アログリプチンは、AMP 活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化することで、肝臓での糖新生を抑制する。
  4. インスリン・デグルデクは、骨格筋や脂肪組織におけるグルコースの細胞内取り込みを促進する。
  5. リキシセナチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体を刺激することで、インスリン及びグルカゴン分泌を促進する。

 

問 167
この患者で、血中濃度が顕著に上昇していると考えられるのはどれか。2つ選べ。

  1. 3-ヒドロキシ酪酸
  2. アセト酢酸
  3. γ-アミノ酪酸
  4. 水酸化物イオン
  5. ナトリウムイオン

 

解説

問166
選択肢1 ×
メトホルミンは、AMPKを活性化することにより、肝臓での糖新生を抑制し、骨格筋や脂肪細胞での糖の取り込みを促進します。

選択肢2 ○
その通りの記述です。

選択肢3 ×
アログリプチンはDPP-4阻害薬です。

選択肢4 ○
インスリン・デグルデクは持効型インスリンです。インスリンは、骨格筋や脂肪組織における、GLUT4の細胞膜への移行を促進することで糖の取り込みを促進するので、正しい記述です。

選択肢5 ×
リキシセナチドなどのGLP-1受容体作動薬は、GLP-1受容体を刺激することで、インスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制します。(グルカゴンの主な作用が、肝臓でのグリコーゲン分解と糖新生を促進による血糖値上昇である点からも間違いであることはわかります。)

問167
人間の体は、インスリンが欠乏すると、取り込めなくなったグルコースの代わりに、脂肪のβ酸化を行うことでエネルギーを産生しようとします。これにより、3-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトンといったケトン体生成が進行し、血中のケトン体が増加することで糖尿病ケトアシドーシスを誘発することがあります。本患者は尿中のケトン体が(3+)であることから、糖尿病ケトアシドーシスを誘発していると推測できます。よって、ケトン体である選択肢1,2が正解です。

 

以下に2型糖尿病治療薬とその作用機序について表と図でまとめました。

表1 2型糖尿病治療薬の種類

 

以下に、2型糖尿病治療薬の作用機序について図にまとめましたので、参考にしてください。(簡略化した図であるため、不正確な部分もありますが、国試対策として学ぶには問題ないレベルと思います。)

 

図1 糖尿病治療薬の作用機序1

図2 糖尿病治療薬の作用機序2
(イメグリミンの作用機序についてはまだ不明な部分も多い)

検索用:シタグリプチン ビルダグリプチン デュラグルチド セマグルチド グリメピリド レパグリニド アカルボース ボグリボース ダパグリフロジン トホグリフロジン カナグリフロジン

 

ごっちゃになりやすいSGLT-2阻害薬、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬の薬品名の覚え方を以下に書いておきます。参考にしてください。

  • 腎尿細管のSGLT-2を阻害→薬の名前に「フロジン」が付く。ゴロ(語呂)合わせで、フロジンの「ジン」は腎臓の「腎」とおぼえておきましょう。
  • DPP-4阻害薬→薬の名前に「プチン」が付く。DPP-4はジペプチジルペプチダーゼ-4の略。2回もプチが出てくるのと、「プチン」をかけあわせて、「プッチンプリン」というゴロ合わせで覚えておきましょう。
  • GLP-1受容体作動薬→薬の名前に「チド」が付く。GLP-1はグルカゴン様ペプチド-1の略。

国家試験では略称だけで出てくることはないので、この覚え方をしておけば間違えないかと思います。

(DPP-4阻害薬のゴロ合わせに関しては下記のサイトを参考にしました。
ゴロナビ https://uzuchannel.com/goro-navigation-pharmacy/2022/01/13/dpp-4-inhibitor/)

 

↓他の国試関連の記事も、よければ参考にしてください。

 

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