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学術研修

2024年2月2日

抗凝固薬を簡単にまとめました(覚え方も)

本部のTです。
今回は薬学生向けに抗凝固薬について簡単にまとめました。
国試で特に問われやすい部分以外は省略しているので、薬の詳細については参考書や他のサイトもご覧になってください。
 

 目次

 

フィブリン血栓と抗凝固薬

通常、止血の過程では、まず血小板が血栓を形成し(一次止血)、次にフィブリンが血小板の塊を安定化させフィブリン血栓を形成します(二次止血)。しかし、何らかの原因で血栓が血管内に不適切に形成されると、血流が妨げられ、塞栓症などを引き起こす場合があります。
この塞栓症を防ぐため、フィブリンの形成を阻害するのが抗凝固薬です。
特に静脈のような血流の遅い部位や心房細動による血液の滞留では、フィブリン血栓が原因となって塞栓症が起こりやすいため、それらの塞栓症の治療および予防に抗凝固薬が使われます。

 

抗凝固薬の作用機序の簡略図

 

アンチトロンビン依存性の抗凝固薬

・ヘパリン:妊婦に使用可。解毒薬はプロタミン。
・ダルテパリ
・ダナパロイド
・パルナパリ
・フォンダパリヌクス

  • アンチトロンビンと複合体を形成し、アンチトロンビンの作用を増強させます。アンチトロンビンは、トロンビン、第Ⅶ、Ⅸ、Xa因子などの凝固因子の活性を抑制するタンパク質です。
  • 播種性血管内血液凝固症候群(DIC)の治療にも用いられます (ヘパリン、ダルテパリン、ダナパロイド)。
     

覚え方:
薬品名に「パリ」、「パロ」が入っていれば、アンチトロンビン依存性、それ以外はアンチトロンビン非依存性と覚えましょう。

 

クマリン系薬

・ワルファリン

  • 肝臓でビタミンKと拮抗し、プロトロンビン(第Ⅱ因子)をはじめとするビタミンK依存性凝固因子(第Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子)の生成を阻害します。
  • 経口投与。
  • 納豆、クロレラ、青汁などビタミンKの高含有食品で作用が減弱するため、それらの食品は摂取しない。
  • 解毒薬はビタミンK
  • ワルファリンの効果を確認するため、ワルファリン服用中はPT-INR(プロトロンビン時間)を定期的にチェックします。治療域はPT-INR:2.0~3.0
    ワルファリンからDOACに変更する際は、出血のリスクを避けるため、ワルファリンを減量し、PT-INRが2.0以下になっていることを確認してから、DOACに変更します。
     

覚え方:
ビタミンK依存性凝固因子は、Ⅱ(に)、Ⅸ(く)、Ⅶ(な)、Ⅹ(とう)の「にくなっとう」のゴロ合わせが有名です。納豆を摂取してはいけないということも併せてこのゴロで覚えておきましょう。また、PT-INRの基準が2.0であることも「に」と掛けて覚えておきましょう。

 

直接Xa阻害薬

・エドキサバン
・リバーロキサバン
・アピキサバン

  • 競合的に第Xa因子を直接阻害します。
  • いずれも経口投与です。
     

覚え方:
薬品名に「キサ(Xa)」が入っていると覚えましょう。

 

直接トロンビン阻害薬

・ダビガトラ(経口)
・アルガトロバン(静注)

  • 直接トロンビンに結合することで、トロンビンの作用を阻害します
  • ダビガトランの解毒薬はイダルシズマブです。国試ではダミーの選択肢としてしか出されたことはありませんが、余裕があれば覚えておきましょう。
     

覚え方:
薬品名に、”トロンビン阻害”を意味する「ガトラ」「ガトロ」が入っています。

※直接Xa阻害医薬とダビガトランを合わせてDOAC(直接経口抗凝固薬)と呼びます。
DOACは腎排泄型のため、腎機能に注意が必要です。特にダビガトランは過去にブルーレターが出ており、Ccr30以下で禁忌となっています。他のDOACも適応により高度腎障害で禁忌となったり、腎機能に応じて減量しないといけない場合があったりします。

 

その他の抗トロンビン薬

・トロンボモジュリンアルファ

  • トロンビンと結合することで、活性化プロテインCの産生を促進し、フィブリンの生成を抑制します。
  • 適応はDICのみです。
     

・ガベキサート
・ナファモスタット

  • アンチトロンビン非依存的にXa因子やトロンビンを阻害します。
  • また、トリプシンなどのタンパク分解酵素を阻害する作用も持ちます。
  • DICや膵炎の治療に用いられます。
     

↓ガベキサート、ナファモスタットについては以下のサイトにゴロ合わせがありましたので、参考にしてください。↓

薬学部はゴロでイチコロ:抗トロンビン薬のゴロ
薬学部はゴロでイチコロ:タンパク分解酵素阻害薬のゴロ

 

↓他の国試関連の記事も、よければ参考にしてください。

 

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