国試対策 利尿薬の簡単なまとめ(覚え方も)
本部のTです。国試も近づいてきたので、ほぼ毎年出題されている利尿薬について簡単にまとめました。
太字の部分は必須の知識なので、必ず覚えてください。
(2025/1/4 副作用やドーピングについて等を追記しました。1/8利尿薬の作用機序の図・説明および心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の記述を追加しました。)
目次 | ||
まず、ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬、カリウム保持性利尿薬は、「Na⁺の再吸収を抑制→尿細管内のNa⁺濃度上昇→尿の浸透圧上昇→水の再吸収抑制→尿量増加」というメカニズムで利尿作用を発揮します。
そのため、いずれも共通の副作用として低Na血症があります。
その前提を理解したうえで、以下で細かい作用機序について見ていきましょう。
1 ループ利尿薬
フロセミド、アゾセミド、トラセミドなど
- 作用機序、特徴
ヘンレループのNa/K/2Cl共輸送体を阻害して、Na+、K+、Cl+の再吸収を抑制→Na+、K+、Cl+および水の排泄促進
作用発現が早く、効果が強力
- 副作用
低カリウム血症、低ナトリウム血症、低カルシウム血症、高尿酸血症、高血糖症、強心配糖体の作用増強など
(低カリウム血症は利尿薬の中でも特に起きやすく注意が必要。低ナトリウム血症は比較的起こりにくい)
※覚え方:「~セミド」はループ利尿薬!
2 サイアザイド系利尿薬、サイアザイド類似(非チアジド系)利尿薬
サイアザイド系:ヒドロクロロチアジド、トリクロルメチアジドなど
サイアザイド類似:メフルシド、インダパミド
- 作用機序
遠位尿細管のNa/Cl共輸送体を阻害し、Na+とCl–の再吸収を抑制する。→Na+、Cl–および水の排泄促進
- 副作用
低カリウム血症、低ナトリウム血症、高尿酸血症、高血糖症、強心配糖体の作用増強など
※覚え方:「~チアジド(thiazide)」はサイアザイド(thiazide)系利尿薬!
※覚え方:サイアザイド類似利尿薬は「古めのパンダはサイ」のゴロで覚えましょう。
(ふるめ:メフルシド、パンダ:インダパミド、サイ:サイアザイド類似)
3 カリウム保持性利尿薬
3-1.スピロノラクトン、エプレレノン、カンレノ酸、エサキセレノンなど
(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬とも呼ばれる)
- 作用機序、特徴
アルドステロン受容体(ミネラルコルチコイド受容体)を阻害し、アルドステロン誘導タンパク質の生合成を抑制することで、腎尿細管におけるNa+,K+-ATPaseの機能を低下、上皮型Na+チャネルの発現を抑制し、Na+再吸収抑制作用、K+排泄抑制作用を示す。→Na+および水の排泄促進
- 副作用
高カリウム血症、低ナトリウム血症、(女性化乳房)など
エサキセレノンはステロイド骨格を持たないため、性ホルモン関連の副作用が起こりにくいとされている。逆にスピロノラクトンは抗アンドロゲン様を持つため、女性化乳房等に注意が必要。
3-2.トリアムテレン
- 作用機序
集合管及び遠位尿細管のNa+チャネル(上皮型Na+チャネル)を遮断し、二次的にNa+/K+ATPaseを抑制することでNa+再吸収抑制作用、K+排泄抑制作用を示す。→Na+および水の排泄促進
- 副作用
高カリウム血症、低ナトリウム血症など
※覚え方:「トン、レノ、レン」が名前にある利尿薬はカリウム保持性利尿薬
※覚え方2:トリアムテレンは作用機序が他のカリウム保持性利尿薬と違うので、「とりあうな」のゴロで覚えましょう。
(とりあ:トリアムテレン、な:Na+チャネル遮断)
4 バソプレシン拮抗薬
トルバプタン
- 作用機序
バソプレシンV2受容体を阻害して、水の再吸収を抑制する。
- 副作用
高ナトリウム血症、高カリウム血症(電解質の排泄を伴わない利尿により血中の電解質濃度が高まるため) など
※覚え方:バプなので、バソプレシン拮抗薬
5 浸透圧性利尿薬
D-マンニトール
高張液であり、浸透圧を上昇させて、水の再吸収を抑制する。脳浮腫を改善する目的として用いられる。
- 副作用
脱水 など
6 炭酸脱水素酵素阻害薬
アセタゾラミド
- 作用機序
近位尿細管の炭酸脱水素酵素を阻害し、Na+-H+交換系を抑制し、Na+と水の再吸収を抑制する。
- 副作用
低カリウム血症、代謝性アシドーシス
7 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)
カルペリチド
- 作用機序
血管平滑筋のANP受容体を刺激し、膜結合型グアニル酸シクラーゼ活性化によりcGMP生成促進することで、血管拡張、利尿作用を発現する。
- 副作用
血圧低下
※覚え方(ゴロ):「軽くペリーの安否確認」のゴロで覚えましょう。(軽くペリー→カルペリチド、安否→ANP、確→血管拡張、認→利尿作用)
◎利尿薬は、ドーピングに関する禁止薬物として指定されています。
利尿薬自体には直接的なドーピング作用はないものの、体重減少や他の禁止薬物の排泄を促進し、ドーピング検査を回避しやすくするため、ドーピング禁止薬物に指定されています。
ドーピングの問題は近年、出題が多くなっているため、今後利尿薬についても問う問題が出る可能性がありので、覚えておきましょう。
利尿薬の電解質・代謝系への影響まとめ
K | Na | 糖・脂質 | 尿酸 | |
ループ | ⇓ | ↓ | ⇑ | ⇑ |
サイアザイド系 | ⇓ | ⇓ | ⇑ | ⇑ |
K保持性 | ⇑ | ⇓ | – | – |
トルバプタン | ↑ | ⇑ | – | – |
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