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事務局日誌

2020年7月10日

コロナ禍でますますあらわで深刻になった貧困

本部のRです。
2005年にNHKで『フリーター漂流~モノ作りの現場で~』という番組があって、何万人もの低賃金のフリーターの若者が工場から工場へと企業の都合で「漂流」しているということが伝えられ、背筋が寒くなる思いをしました。
リーマンショックで2008年から2009年には「年越し派遣村」というのもありました。「職も住む場所も所持金も失った人たちだ。何日も食べずに、命の危機にある人もいた。着いた途端、倒れ込んでしまう人もいた」といいます。

ネットカフェにも寝泊まりできず

そして今年のコロナでは、「4月7日、東京都を含む7都府県に緊急事態宣言が発令され、東京都だけで4000人とされる多数の「ネットカフェ難民」が、寝泊まりの場を失った。東京都は支援団体の要請に応じ、ビジネスホテルを借り上げて提供したが、当初は500室分しかなかった」とのことです(ダイヤモンドオンライン2020.6.12)。NHKでも報道されましたね。
たくさんの人がネットカフェをねぐらに生活をしていたことにも驚きましたが、民医連の総会方針の学習ビデオでは、7年間も温泉センターで暮らしていた高齢者の話も出ていました。
しかし、コロナで居場所を失った人たちは、コロナ禍の被害者の一部で、多くの市民が職を失ったり、収入が激減したりして、その日の食事にも困る人がたくさん出てきています。10万円(特別定額給付金(新型コロナウイルス感染症緊急経済対策関連))は有難いですが、右から左に家賃支払いに消えてしまった人も少なくないのではないでしょうか。

 

各地で相談会—深刻な実態

これに対して民医連や各地の社会保障推進協議会(社保協)、各種団体は電話相談会を開催してきました。
『社会保障』誌2020年夏号に「群馬でのソーシャルワークとアウトリーチ」のタイトル記事で事例が紹介されています。

  • パチンコ部品の組み立て派遣社員、60歳代の男性。相談時の所持金は3461円、知的障害があり読み書きもできなく、両親もすでにない。母親が存命中に生活保護を申請に行ったが取り合ってもらえなかった。今回無事生活保護を受給することができ、本人はこれまでのことを思い出して涙していた。
  • コロナのあおりで2月には解雇され、所持金3361円の男性。訪問時には歩けなくなって意識障害もあった。市内には民医連の病院も無料定額診療の医療機関もなく、お金のないこの男性を受け入れてくれる医療機関がなかった。市のケースワーカーに訪問してもらい、自宅で生活保護申請、そのまま救急車で病院に搬送となった。市職員は「国は何もかもが遅い。だから弱いものから倒れていくんだ」と唇を噛んでいた。
  • 収入減少で子どもに仕送りができなくなったシングルマザー、「娘が退学を考えている。助けてください」
  • 「大学に通う息子がアルバイト収入が減って家賃を滞納している」

本当に困ってしまいます。本当に困っているときこそ、国や社会が手を差し伸べてほしいものです。

社会なんて存在しない—社会に頼るな—新自由主義の考え方は今

貧困や失業は自己責任と運命だから、仕方がない、受け入れるべき。そういう考え方があります。福祉や社会保障は人を甘やかすから良くない。税金や保険料を払っている人だけが福利を享受すべき。21世紀でのこういう考え方の背景にあるのは「新自由主義」という考え方。世界中で広まっています。
「社会なんてない(there is no such thing as society)、あるのは個々の男たちと女たち、家族である」と言ったのはイギリスのサッチャー首相だそうです。その同じ保守党の今のイギリスの首相、ジョンソン氏は「サッチャー哲学の継承者」と言われてきましたが、コロナに感染して入院。幸い退院して言いました。「コロナウイルスは『社会というものがまさに存在する』ことを証明した」、「われわれの国民保健サービスを守れ」と。これには世界中が驚いた、と報道されました。

 

今、何にオカネを使うのか

そして、今日のニュースは

米、F35ステルス戦闘機105機の日本売却承認 関連装備含め約230億ドル
米国務省は9日、日本に最新鋭ステルス戦闘機F35を計105機売却することを承認したと発表した。関連装備を含めた費用は約230億ドル(約2兆4600億円)。日本政府は18年12月の閣議で、中期防衛力整備計画(中期防)に沿い、旧型のF15戦闘機を置き換えるために、F35を105機追加調達し、計147機体制にする方針を了解していた。
(毎日新聞 他)

日本が導入を予定しているF35戦闘機42機は民主党政権下で決定したが、安倍政権が2018年、トランプ政権の要求に応じ、F35戦闘機105機の追加購入を決定。今回の報道はこの追加分のことのようですね。
防衛費のすべてを敵視したり不適当とは言いませんけど、キャンセルして、その資金(一括で払うのではないでしょうが)を、コロナ対策や雇用・貧困対策に回してほしいと思うのは筆者だけではないと思います。
(産経新聞によれば関連設備なしでの単独では難しいですが、F35戦闘機は「敵基地」攻撃もできるのだそうです。外国にある「敵基地」とみなした地域や施設を攻撃することが「防衛」と言えるのか、憲法上も問題ではないでしょうか)

追記:以下のような報道もあります(2019年1月)。

防衛装備庁の年次報告書によれば、前中期防までに導入を決めたF35A42機の維持費は1兆2877億円(運用期間30年)。1機あたりで約307億円になる計算。

1機1年10億円以上の維持費がかかるものを147機。(うち105機を)2.46兆円で買う。はじめは1機116億円と言われていたが、上の計算では234億円、関連機器を含めると236億円という報道もあります。