いのちと健康を守る「架け橋」に いのちと健康を守る「架け橋」に

事務局日誌

2024年9月2日

映画『僕の家族と祖国の戦争』と『関心領域』を観ました

僕の家族と祖国の戦争

 本部のSです。映画『僕の家族と祖国の戦争』を観ました。
 その前に小山哲・藤原辰史 著『中学生から知りたいウクライナのこと』(ミシマ社、2022年)という本を読んで、単純に「ナチス・ドイツは悪者」「ソ連は途中から悪者」「ナチス・ドイツ以外のヨーロッパ諸国は被害者で正義の味方」という世界や歴史をドラマの水戸黄門のように善悪・正邪に二分して応援してしまう考えはあまりに粗雑だと思い知らされました。
 戦争を理解し、非戦を語るには、いろんな話を聞き・歴史を知っておくことが大事なのだろうと思って、映画館に行きました。もちろん、何も知らなくても、人道の見地から戦争そのものに反対することは誰にでもその資格があると思います。

 

 

 さて映画ですが、舞台はナチスドイツ支配下のデンマーク。

  
   1945年4月、デンマークの市民大学。学長ヤコブが、現地のドイツ軍司令官から思いがけない命令を下される。ドイツから押し寄せてくる大勢の難民を学校に受け入れろというのだ。想定をはるかに超えた500人以上の難民を体育館に収容したヤコブは、すぐさま重大な問題に直面する。それは多くの子供を含む難民が飢えに苦しみ、感染症の蔓延によって次々と命を落としていくという、あまりにも残酷な現実。難民の苦境を見かねたヤコブと妻のリスは救いの手を差しのべるが、それは同胞たちから裏切り者の烙印を押されかねない振る舞いだった。そして12歳の息子もドイツ難民の女の子と交流を持ちつつあったが彼女は感染症にかかってしまう。友達を救うべきか、祖国に従うべきか、家族は決断を迫られる。  
  

公式ホームページより)
 


 私は映画の最後は(安心してください)比較的スッキリした気分ではありましたが、観る人によるかもしれません。
 ところで、「僕の家族と祖国の戦争」は英語では「Before it ends」(終わる前に)ですが、原語では「Når befrielsen kommer」(自由になる時・解放がやってくるとき)だそうです。
 ドイツに支配されていた国の人々がなべて正義の味方と称賛されるような状況でもない、何が正しいか、どんな振る舞いが非難されるのか。
 

 あまりまとまったことが書けませんが、上映が終わってしまう前に、観る価値はあると思います。お急ぎください。
 

 

関心領域

 蛇足かもですが、『関心領域』を少し前に観ました。自分に教養がないせいか、面白くなかったです。つまらない印象しかありませんでした。

  
  空は青く、誰もが笑顔で、子どもたちの楽しげな声が聞こえてくる。そして、窓から見える壁の向こうでは大きな建物から煙があがっている。時は1945年、アウシュビッツ収容所の隣で幸せに暮らす家族がいた。  
  

 

 アウシュビッツの収容所からの阿鼻叫喚の声を聞きながら、楽しく暮らすヘス(アウシュビッツ収容所の所長)というナチの幹部の家族のもようを映した映画です。全く残酷な・悲惨なシーンはなく、ただただヘス一家が恵まれた生活をしているというのがメインの映画です。ただし、アウシュビッツのことを良く知っていれば「どういう神経やねん」といぶかることはできると思います。
 今、スマホやパソコンの薄い画面のすぐ向こうで、ウクライナやパレスチナで(ほかにもたくさんあるのでしょう)、大変な殺戮・人道危機が何カ月も何カ月も続いているのに、そして自分たちの税金がそれに加担しているかもしれないのに、みんなはヘスの家族のように安心な場所で知らないふりをしていないでしょうか? と、『中学生から知りたいパレスチナのこと』(ミシマ社、2024年)で岡真理さん(京大名誉教授)が問うておられました。それを読んで、映画を反芻しているところです。
 

 

追記:読んでいる途中ですが、アウシュビッツ理事会は、イスラエルによるガザ地区攻撃を一方的に擁護する声明を出し、今日ドイツではパレスチナを少しでも擁護するような言論は「反ユダヤ主義」として厳しく取り締まられているようです。警察による逮捕、学校や大学からの排除も行われているらしいです。『中学生から知りたいパレスチナのこと』にはそのへんの事情も人文学の立場から触れられています。