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ご利用のみなさまへ

2019年3月16日

8万円あったなら…(お薬代のはなし)

皆さんは「8万円」で何を思い浮かべますか?

8万円を一度に支払う買い物をしたことがありますか?

 

・家賃一ヶ月分?

・洗濯機など白モノ家電を買いに行く

・ちょっと良い自転車をアルバイトでためた小遣いで買う

 

薬局で一度に8万円支払わないと、命にかかわるとしたらどうでしょうか?

 

今日、薬物治療が進化して、かつては入院して治療していた抗がん剤の使用などが外来でも可能になりました。

一方、サラリーマンの保険の窓口負担は1割から3割に、高齢者の窓口負担も無料から1~3割にと大幅に患者負担が増えました。

健康保険の仕組みによって、月ごと・医療機関ごとに負担金には上限がありますが、それでもある程度の収入があると、高齢者でも相当な金額になります。

 

70歳以上の外来療養にかかる1ヶ月の高額療養費一覧(2019年2月現在)

 

高齢者の窓口負担の歴史

 

 

いざというときのために貯めておいた大切なオカネ、保険に入っていなければ、とても払えない治療費ですが、保険に入っていてもなかなか払えない負担金ですね。だけど命には代えられない。だけどなかなか払えない…。

 

★患者さんの声

  • 「先生から高いと聞いていたけど、こんなに高いのか…5万円もあればいけると思っていた…」その方は足りないとおっしゃり、銀行でおろしてくると言われ、再来局して頂けました。
  • 「高いけど、飲まないとね…本当に高いね」と言われました。最初は10万円以上のお支払いに…。高齢者のお二人暮らしで「高額療養費制度」もご存知ありませんでした。後日限度額認定証を取得されましたが、8万円の支払いになりました。

 

医療機関によっては、患者さんの収入が極端に少ない場合、治療を受けてもらうために負担金を一部、もしくは全額「減免」する制度があります。

無料低額診療事業(略称「無低診」)といいます。

(リンク:京都市内の無料低額診療事業実施医療機関 2017年6月現在)

(リンク:京都市を除く京都府下の無料低額診療事業実施医療機関 PDFファイル)

しかし、保険薬局にはそういう制度は適用されないのです。病院・診療所では無料・低額で診てもらえるけれど、薬局での薬代の高さに愕然としてしまう、間引いて薬を服用する、毎月のところを2カ月に一回にする、受診をあきらめる、など無差別平等の医療が損なわれている現実があります。

 

抗がん剤、糖尿病の薬、腎臓の薬など、症状・合併症の深刻化と比例して負担金も高くなります。薬代が高ければ高いほど、治療に重要です。薬物治療を断念すると深刻な事態になりかねません。

しかし生きるのにどれだけ必要で重要な薬でも、負担が大きければ薬局に処方箋を出せないことがあるのです。

貧困に立ち向かい、無差別平等の医療を実現するためにも、薬局での患者さんの実態を知っていただきたいと思います。

 

(2月28日に京都テルサで開催された「京都民医連学術運動交流集会」、コスモス薬局の発表「薬局で打ち砕かれる無差別平等の医療」より)