片頭痛の病態
本部のTです。
今回は片頭痛の病態についてまとめました。
1.片頭痛の特徴
- 典型的な片頭痛は、以下のような症状を特徴とします。
- 片側性(頭の左右どちらかが痛い)
- 拍動性(心臓の拍動とともに「ズキンズキン」と痛い)
- 中等度~重度の痛み
- 日常的な動作(歩行や階段昇降など)により頭痛が悪化する。
- ただし、これらの典型的な症状が全て当てはまらない場合もあり、国際頭痛分類ではa~dの2つ以上が当てはまることを片頭痛の診断基準の一つとしています。「片頭痛」という名称ですが、実際には両側性(頭の両側が痛む)の片頭痛も少なくありません。
- 一度頭痛が始まると、4~72時間持続し、吐き気や光過敏・音過敏なども伴うことが多く、日常生活に支障をきたす厄介な頭痛です。この光過敏・音過敏のために、暗く静かなところで休みたくなり、しばらく眠ると頭痛が楽になっていることもよくあります。
- 日本人の約8%が片頭痛を患っており、20歳代から40歳代の女性の有病率が特に高いです。50~60歳代で徐々に寛解する場合が多く、60歳以上では、片頭痛の割合は約2%と少なくなります。
2.片頭痛の前兆
- 片頭痛には、前兆のあるものと前兆のないものの2種類があり、片頭痛患者さんの約3割が前兆のある片頭痛を患っているとされています。
- 最もよくある前兆は「閃輝暗点(せんきあんてん)」と言われるもので、視野の一部が欠けて、きらきらした光・点・線が見えます。(余談ですが、画家として有名なヴィンセント・ヴァン・ゴッホは、片頭痛を患っており、「星月夜」等の作品には閃輝暗点が描かれているという説もあります。)
- 前兆が起こると1時間以内に片頭痛が始まります。頭痛の始まる前か、頭痛が始まるとともに前兆は治まります。
閃輝暗点のイメージ図
- その他にも、「閃輝暗点」と比べると少ないですが、一時的な運動麻痺(脱力)、言語障害、めまい、耳鳴り、感覚症状(感覚が鈍くなったり、鋭くなったりする症状)が起きる場合もあります。
3.片頭痛の治療
- 片頭痛の治療薬は、予防薬と急性期(頭痛発作時)の治療薬に大別できます。
- 予防薬:ロメリジン、プロプラノロール、バルプロ酸、アミトリプチリン等
- 急性期:アセトアミノフェン、NSAIDs、エルゴタミン、トリプタン製剤等
- いずれも用法用量に注意が必要な薬ですので、必ず医師の指示を守って服用下さい。治療薬の詳細については「片頭痛の治療薬」という記事でまとめています。
- 暗く静かなところで休む、痛む箇所を冷やすなどそれぞれの患者さんにあった対処法も重要です。
4.片頭痛の誘発因子
- 片頭痛が起こる機序はまだはっきりしていませんが、様々な誘発因子があることがわかっています。
- 精神的因子:ストレス、緊張、疲れ、睡眠(過不足)
- 内因性因子:月経周期
- 環境因子:天候の変化、温度差、頻回の旅行、臭い
- 食事性因子:空腹、アルコール
- ストレスは頻度の高い誘発因子ですが、患者さんによって、ストレスがあるときに頭痛が起こる場合と、ストレスから開放されたときに頭痛が起こる場合があります。
- また、食事性の誘発因子として、アルコールの他に、チーズ、チョコレート、柑橘類、ナッツ類がよく挙げられますが、患者さんによって誘発因子は異なり、これらの食事を摂っても、片頭痛が誘発されない患者さんもいます。
- 片頭痛をお持ちの方は、自分の誘発因子を把握し、それをなるべく避けることで片頭痛の発作をある程度減らすことが可能です。
5.自分の頭痛を記録しよう
- 自分がどのようなときに頭痛が起こりやすいのか記録しておくと、自分の頭痛のタイプや誘発因子について把握しやすく、診断の手助けとなります。「日本頭痛学会」のホームページ(https://www.jhsnet.net/dr_medical_diary.html)に頭痛ダイアリーの見本が載っていますので、参考にしてください。
参考文献