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こすもす日和

こすもすだより

2019年4月26日

ういろうについて

みなさんは「ういろう」と聞いて何を思い浮かべますか?京都ではお菓子(米粉を原料にして砂糖で味付けした蒸し菓子)が一般的かもしれませんね。
これからお話するのは薬のういろうについてです。歌舞伎好きの方や発声練習をされる方ならご存知の方も多いかと思いますが、『外郎売(ういろううり)』という演目にでてくる江戸時代から実在するもので、現在は現地小田原のういろう社でしか手に入らないそうです。
どんなお薬なのかというと、歌舞伎の口上での売り文句を要訳すると、『一粒舌の上にのせておなかの中にいれると、胃、心、肺、肝が健やかになって、のどより爽やかな香りがきて、口の中がすーっとするよう。魚鳥、茸、麺類の食べ合わせ、そのほか万病速効あること神の如し』とこんな感じで紹介されます。このあと口上は、この薬により舌も回るようになると述べ、早口言葉の披露へと続きます。
さて、薬剤師として実際にどんな薬なのかと気になったため、調べてみました。

仁丹のような銀色の丸薬で、生薬の麝香(じゃこう)、桂皮(けいひ)、丁香(ちょうこう)、甘草(かんぞう)、人参(にんじん)、薄荷(はっか)、阿仙(あせん)、縮砂(しゅくしゃ)などが含まれているようです。明示されていませんが、その他にも十何種の生薬を調合して作られているようで、600年以上製法変わらず作り続けられているようです。効能は万能薬のようにずらっと書かれていますが、口内清涼や整胃効果があるのは成分効果から見ても間違いないようです。ちなみに早口になるとは書かれていませんでした。


外郎売は、症状を聞きながら各症状に合うように薬の飲み方を説明するとのことで、昔から一人一人の症状にあった薬の販売を心がけている姿勢を見習い、コスモス薬局でも一人一人と向き合える薬剤師でありたいです。

I.M.
(この記事は2018年7月1日発行「こすもすだより」第58号として掲載されたものです)