いのちと健康を守る「架け橋」に いのちと健康を守る「架け橋」に

学術研修

2021年10月1日

麻薬の届出まとめと国試解説(104回問88/101回問75)

 本部のTです。
 今回も薬学生の皆さんに向けて、薬剤師国家試験の問題を2つほど取り上げて、解説してみました。麻薬の取扱いに関連する問題です。
麻薬の届出に関するまとめの表も載せていますので、参考にしてください。
 

 目次

 

104回 問 88 (必須問題)

 廃棄時に麻薬取締員又は保健所職員の立会いが必要なのはどれか。1つ選べ。

  1. 有効期限切れとなった在庫麻薬
  2. 調剤済みで返却された麻薬
  3. 手術室で施用後に残った麻薬
  4. 患者が床に落下させた麻薬
  5. 入院時に持参して不用になった麻薬

 

解説

 麻薬の廃棄方法は、調剤済みか否かで異なります。また、回収不可能となった麻薬は、未調剤/調剤済を問わずに麻薬事故届を提出することになります。以下に廃棄/事故の届出について表にまとめました。

 ※なお、患者が自己管理する麻薬を不注意で紛失等した場合は、麻薬事故届を提出する必要はないとされています。(ただし、原因や今後の自己管理の可否についての確認が必要)


 表を見ればわかるとおり、麻薬取締員又は保健所職員の立会いが必要なのは、未調剤の麻薬を廃棄する場合です。問題の選択肢の中で、未調剤の麻薬廃棄は選択肢1だけなので、正解は 1 です。他の選択肢は全て調剤済なので、管理薬剤師が他の職員(薬局の職員などその医療機関の職員)の立ち会いの下に廃棄し、廃棄後30日以内に届出を行います。

 

101回 問 75 (必須問題)

 麻薬小売業者の免許を受けている薬局における麻薬(ジアセチルモルヒネを除く)の取扱いのうち、事前に許可を受ける必要があるのはどれか。 1つ選べ。

  1. 家庭麻薬の廃棄
  2. 同一都道府県内の麻薬卸売業者からの購入
  3. 麻薬処方箋に基づく調剤
  4. 同一都道府県内の薬局間での譲渡・譲受
  5. 調剤済麻薬の廃棄

 

解説

選択肢1:

 1%以下のコデイン、ジヒドロコデインは、麻薬とは別の「家庭麻薬」という分類になり、麻薬として扱う必要はありません。廃棄にも許可は不要です。(ちなみに、家庭麻薬は市販の風邪薬等にもよく含まれています。)

 ただし、1%を超えるコデイン、ジヒドロコデインは、麻薬になります。

  • コデインリン酸塩散1%→家庭麻薬
    (廃棄届は不要)
  • コデインリン酸塩錠20mg→麻薬
    (廃棄届が必要)

 

選択肢2:

 麻薬小売業者の免許を受けている薬局が麻薬を購入する際には許可は不要です。なお、麻薬を購入できる相手先は、同一都道府県内の麻薬卸売業者のみです。県外の麻薬卸売業者からは購入することができません。
 

選択肢3:

 調剤に関しても事前の許可は不要です。
 

選択肢4:

 「麻薬小売業者間譲渡許可」を受けることによって、許可を受けた麻薬小売業者間(薬局)で麻薬の譲渡・譲受をすることできます。ただし、「いずれの麻薬小売業者も、当該免許に係る麻薬業務所の所在地が同一の都道府県の区域内にあること」が条件です。
 また、譲渡・譲受は以下の①及び②のいずれかの場合に限定されています。②については、2021年7月の麻薬及び向精神薬取締法施行規則の改正に伴って追加されました。

 ① 在庫量の不足のため麻薬処方せんにより調剤することができない場合

 ② 90日以上の譲渡・譲受がない麻薬について譲渡を行う場合

 この「麻薬小売業者間譲渡許可」事前に受けなければ、薬局間での譲渡・譲受はできません。

 

選択肢5:

 調剤済みの麻薬の廃棄については、前述の通り、「廃棄後30日以内の届出」となっており、事前の許可は不要です。

よって、正解は 4 です。

 

 ↓その他の国試解説や国試関連記事はこちら