C型肝炎と国試解説(104回問158 問234-235)
本部のTです。
薬学生の皆さんに向けて、C型肝炎(HCV)についてまとめるとともに、関連する問題を取り上げました。
C型肝炎以外のウイルス性肝炎についてはこちらにまとめました→ウイルス性肝炎のまとめ
(2023/12/21更新)
目次
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C型肝炎の特徴
血液を介してC型肝炎ウイルスに感染することが原因です。
A型、B型よりも無症状の感染(不顕性感染)が多いです。
劇症肝炎になることは非常にまれですが、約80%程度と高い確率で慢性化します。そのため肝硬変へ進展しやすく、肝硬変はC型肝炎を原因としたものが最も多いです。
感染経路
少量の血液により感染しますが、垂直感染や性行為による感染は基本的にはなく、注射器具の使い回しや過去の輸血(薬害肝炎)による感染が多いです。またピアスや入れ墨など非医療機関での出血を伴う施術による感染が問題となっています。
予防
ワクチンは現時点ではなく、家族内に感染者がいる場合は、定期的に血液検査を受け、感染の有無をチェックします。
治療薬
HCVには10種類以上のジェノタイプ(遺伝子型)が存在します。日本では1型・2型がほとんどであり、1b型が最も多いです。
以前はインターフェロン製剤がHCV治療の中心でしたが、1b型には治療効果が低いこととうつ症状、間質性肺炎などの副作用のリスクがあるため、現在はDAA(直接作用型抗ウイルス薬)がHCVの第一選択薬です。単剤では効果が十分ではなく、併用で用いられます。
- 2023年12月現在のHCV治療の第一選択は「レジパスビル+ソホスブビル」、「ベルパタスビル+ソホスブビル」、「グレカプレビル+ピブレンタスビル」の組み合わせのいずれかになります。
※ただし国試対策としては組み合わせまでは覚えなくて良いでしょう。
- RNAポリメラーゼ阻害薬であるリバビリンが併用で用いられることもあります。
表1 HCVの第一選択薬(2023年12月現在)
- 語尾と作用機序をつなげて覚えると、覚えやすいです。
またこの3つの語尾で終わる薬はすべてHCV治療薬です。
- 「-プレビル(-previr)」→NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬
- 「-aスビル(-asvir)」→NS5A阻害薬
- 「-buビル (-buvir)」→NS5Bポリメラーゼ阻害薬
他にも、肝細胞保護作用を期待して、グリチルリチン酸製剤、ウルソデオキシコール酸が用いられることがあります。また感冒様症状に対しては小柴胡湯が用いられることがありますが、インターフェロン製剤との併用は禁忌です。
では、問題にチャレンジしてみましょう。
第104回薬剤師国家試験 問158 一部改変
(改変部:2023年12月現在販売されていない医薬品が選択肢にあるため、その選択肢については販売中の医薬品に変更し、原文の医薬品は括弧内に記載している)
抗C型肝炎ウイルス薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 ピブレンタスビル(原文:オムビタスビル)は、非構造タンパク質(NS)5Aを阻害する。
2 グレカプレビル(原文:パリタプレビル)は、NS3/4Aプロテアーゼを阻害する。
3 グレカプレビル(原文:アスナプレビル)は、NS5Bポリメラーゼを阻害する。
4 グレカプレビル(原文:テラプレビル)は、逆転写酵素を阻害する。
5 レジパスビルは、キャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害する。
解説
前述の表1を参照してください。
選択肢1 ◯
そのとおりの記述です。
選択肢2 ◯
そのとおりの記述です。
選択肢3, 4 ×
「~プレビル」はNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤です。
選択肢5 ×
「~aスビル」はNS5A阻害剤です。
ちなみに、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤として、インフルエンザ治療薬であるバロキサビル マルボキシルがあります。
よって答えは1,2です。
第104回薬剤師国家試験 問234〜235 実践問題
60歳男性。ジェノタイプ2型のC型慢性肝炎と診断され、初回治療としてDAAs(Direct acting antivirals)が投与されることになった。なお、この患者の腎機能は正常である。
問234
この患者から聴取した生活習慣や過去の経験のうち、C型慢性肝炎に罹患した原因として可能性が低いのはどれか。2つ選べ。
1 鹿肉の生食
2 入れ墨や不衛生なピアスの穴あけ処置
3 20歳代での手術時の輸血
4 海外旅行中の生水の摂取
問235
この患者に投与する抗ウイルス薬として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 ラミブジン
2 ソホスブビル
3 エンテカビル水和物
4 ペラミビル水和物
5 リバビリン
解説
問234
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染経路は血液感染です。選択肢の中で、血液感染を引き起こす可能性のあるものは「2 入れ墨や不衛生なピアスの穴あけ処置」および 「3 20歳代での手術時の輸血」です。
原因として可能性の低いものを選ぶ問題なので、答えは1,4になります。
なお、「1 鹿肉の生食」が原因となりやすい肝炎はE型肝炎であり、「4 海外旅行中の生水の摂取」が原因となりやすい肝炎はA型もしくはE型肝炎です。→ウイルス性肝炎のまとめを参照
問235
問題の選択肢の中で、HCVに使われる抗ウイルス薬は2のソホスブビルと5のリバビリンです。よって答えは2,5です。(上記表1参照)
選択肢1 ×
ラミブジンはB型肝炎およびHIVに使用される逆転写酵素阻害薬です。作用機序はDNAポリメラーゼの阻害です。
ちょっと無理やりですが、私は学生時代、
「ラ」の次は「リ」
「B」の次は「C」
という覚え方で、ラミブジンはB型肝炎治療薬、リバビリンはC型肝炎治療薬であることを覚えていました。
選択肢3 ×
エンテカビルはB型肝炎に使用される逆転写酵素阻害薬です。
選択肢4 ×
ペラミビルはインフルエンザ感染症に使用されるノイラミニダーゼ阻害薬です。
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