ウイルス性肝炎のまとめと国試解説(104回問234-235 問158)
本部のTです。
今回も薬学生の皆さんに向けて、薬剤師国家試験の問題を取り上げて、解説してみました。
C型肝炎ウイルス(HCV)についての問題ですが、問題に入る前に、ウイルス性肝炎とC型肝炎の治療薬についてまとめています。
1. ウイルス性肝炎
ウイルス性肝炎はA型~E型が存在し、各型の肝炎ウイルスに感染することによって引き起こされます。B型、C型肝炎が慢性化すると、肝硬変、肝がんへと進行する場合があります。
以下に各型の肝炎の特徴をまとめました。
表1 A型~E型肝炎ウイルスの特徴
A型肝炎 ウイルス (HAV) |
B型肝炎 ウイルス(HBV) |
C型肝炎 ウイルス(HCV) |
D型肝炎 ウイルス (HDV) |
E型肝炎 ウイルス(HEV) |
|
ウイルス核酸 | RNA | DNA | RNA | RNA | RNA |
感染経路 | 経口感染
(生の魚介類や汚染された食物・水など) |
血液感染 (性感染、母子感染、注射器具の使い回し、不衛生な医療器具の使用など)
HDVはHBV感染者のみが感染する。 |
経口感染
(生肉や汚染された食物・水など) |
||
持続感染 | なし | あり(慢性化) | なし |
2. C型肝炎ウイルス(HCV)の治療薬
HCVには10種類以上のジェノタイプ(遺伝子型)が存在し、それぞれ治療方法が異なります。
日本では1型・2型がほとんどであり、1b型が最も多いです。
また、DAA(直接作用型抗ウイルス薬)がHCVの第一選択薬ですが、単剤では効果が十分ではなく、併用で用いられます。
- 1型のHCVの第一選択は「グラゾプレビル+エルバスビル」、「レジパスビル+ソホスブビル」、「グレカプレビル+ピブレンタスビル」のいずれかになります。
- 2型のHCVの第一選択は「ソホスブビル+リバビリン」、「グレカプレビル+ピブレンタスビル」のいずれかになります。
表2 HCVの第一選択薬(2022年3月現在)
- 語尾と作用機序をつなげて覚えると、覚えやすいです。
- 「-プレビル(-previr)」→NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬
- 「-aスビル(-asvir)」→NS5A阻害薬
- 「-buビル (-buvir)」はNS5Bポリメラーゼ阻害薬
では、問題にチャレンジしてみましょう。
第104回薬剤師国家試験 問234〜235 実践問題
60歳男性。ジェノタイプ2型のC型慢性肝炎と診断され、初回治療としてDAAs(Direct acting antivirals)が投与されることになった。なお、この患者の腎機能は正常である。
問234
この患者から聴取した生活習慣や過去の経験のうち、C型慢性肝炎に罹患した原因として可能性が低いのはどれか。2つ選べ。
1 鹿肉の生食
2 入れ墨や不衛生なピアスの穴あけ処置
3 20歳代での手術時の輸血
4 海外旅行中の生水の摂取
問235
この患者に投与する抗ウイルス薬として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 ラミブジン
2 ソホスブビル
3 エンテカビル水和物
4 ペラミビル水和物
5 リバビリン
解説
・問234
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染経路は血液感染です。選択肢の中で、血液感染を引き起こす可能性のあるものは「2 入れ墨や不衛生なピアスの穴あけ処置」および 「3 20歳代での手術時の輸血」です。
原因として可能性の低いものを選ぶ問題なので、答えは1,4になります。
なお、「1 鹿肉の生食」が原因となりやすい肝炎はE型肝炎であり、「4 海外旅行中の生水の摂取」が原因となりやすい肝炎はA型もしくはE型肝炎です。(上記表1参照)
・問235
問題の選択肢の中で、HCVに使われる抗ウイルス薬は2のソホスブビルと5のリバビリンです。よって答えは2,5です。(上記表2参照)
選択肢1 ラミブジン
B型肝炎およびHIVに使用される逆転写酵素阻害薬です。
ちょっと無理やりですが、私は学生時代、
「ラ」の次は「リ」
「B」の次は「C」
という覚え方で、ラミブジンはB型肝炎治療薬、リバビリンはC型肝炎治療薬であることを覚えていました。
選択肢3 エンテカビル
B型肝炎に使用される逆転写酵素阻害薬です。
選択肢4 ペラミビル
インフルエンザに使用されるノイラミニダーゼ阻害薬です。
第104回薬剤師国家試験 問158 一部改変
(改変部:2022年3月現在販売されていない医薬品が選択肢にあるため、その選択肢については販売中の医薬品に変更し、原文の医薬品は括弧内に記載している)
抗C型肝炎ウイルス薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 エルバスビル(原文:オムビタスビル)は、非構造タンパク質(NS)5Aを阻害する。
2 グラゾプレビル(原文:パリタプレビル)は、NS3/4Aプロテアーゼを阻害する。
3 グレカプレビル(原文:アスナプレビル)は、NS5Bポリメラーゼを阻害する。
4 グレカプレビル(原文:テラプレビル)は、逆転写酵素を阻害する。
5 レジパスビルは、キャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害する。
解説
前述の表2を参照してください。
選択肢1 エルバスビル(原文:オムビタスビル)
そのとおりの記述です。
選択肢2 グラゾプレビル(原文:パリタプレビル)
そのとおりの記述です。
選択肢3, 4 グレカプレビル(原文:アスナプレビル、テラプレビル)
NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤です。
選択肢5 レジパスビル
NS5A阻害剤です。
ちなみに、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤として、インフルエンザ治療薬であるバロキサビル マルボキシルがあります。
よって答えは1,2です。
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