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学術研修

2022年4月8日

ウイルス性肝炎のまとめと国試解説(104回問234-235 問158)

本部のTです。

今回も薬学生の皆さんに向けて、薬剤師国家試験の問題を取り上げて、解説してみました。

C型肝炎ウイルス(HCV)についての問題ですが、問題に入る前に、ウイルス性肝炎とC型肝炎の治療薬についてまとめています。

 

1. ウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎はA型~E型が存在し、各型の肝炎ウイルスに感染することによって引き起こされます。B型、C型肝炎が慢性化すると、肝硬変、肝がんへと進行する場合があります。

以下に各型の肝炎の特徴をまとめました。

表1 A型~E型肝炎ウイルスの特徴

A型肝炎
ウイルス
(HAV)
B型肝炎
ウイルス(HBV)
C型肝炎
ウイルス(HCV)
D型肝炎
ウイルス
(HDV)
E型肝炎
ウイルス(HEV)
ウイルス核酸 RNA DNA RNA RNA RNA
感染経路 経口感染

(生の魚介類や汚染された食物・水など)

血液感染 (性感染、母子感染、注射器具の使い回し、不衛生な医療器具の使用など)

HDVはHBV感染者のみが感染する。
(同時感染、重複感染)

経口感染

(生肉や汚染された食物・水など)

持続感染 なし あり(慢性化) なし

 

2. C型肝炎ウイルス(HCV)の治療薬

HCVには10種類以上のジェノタイプ(遺伝子型)が存在し、それぞれ治療方法が異なります。
日本では1型・2型がほとんどであり、1b型が最も多いです。

また、DAA(直接作用型抗ウイルス薬)がHCVの第一選択薬ですが、単剤では効果が十分ではなく、併用で用いられます。

  • 1型のHCVの第一選択は「グラゾプレビル+エルバスビル」、「レジパスビル+ソホスブビル」、「グレカプレビル+ピブレンタスビル」のいずれかになります。
  • 2型のHCVの第一選択は「ソホスブビル+リバビリン」、「グレカプレビル+ピブレンタスビル」のいずれかになります。

 

表2 HCVの第一選択薬(2022年3月現在)

  • 語尾と作用機序をつなげて覚えると、覚えやすいです。
  • 「-レビル(-previr)」→NS3/4Aロテアーゼ阻害薬
  • 「-aスビル(-asvir)」→NS5A阻害薬
  • 「-buビル (-buvir)」はNS5Bポリメラーゼ阻害薬

 

では、問題にチャレンジしてみましょう。

 

第104回薬剤師国家試験 問234〜235 実践問題

60歳男性。ジェノタイプ2型のC型慢性肝炎と診断され、初回治療としてDAAs(Direct acting antivirals)が投与されることになった。なお、この患者の腎機能は正常である。

問234
この患者から聴取した生活習慣や過去の経験のうち、C型慢性肝炎に罹患した原因として可能性が低いのはどれか。2つ選べ。

1 鹿肉の生食
2 入れ墨や不衛生なピアスの穴あけ処置
3 20歳代での手術時の輸血
4 海外旅行中の生水の摂取

 

問235
この患者に投与する抗ウイルス薬として適切なのはどれか。2つ選べ。

1 ラミブジン
2 ソホスブビル
3 エンテカビル水和物
4 ペラミビル水和物
5 リバビリン

 

解説

・問234

C型肝炎ウイルス(HCV)の感染経路は血液感染です。選択肢の中で、血液感染を引き起こす可能性のあるものは「2 入れ墨や不衛生なピアスの穴あけ処置」および 「3 20歳代での手術時の輸血」です。

原因として可能性の低いものを選ぶ問題なので、答えは1,4になります。

なお、「1 鹿肉の生食」が原因となりやすい肝炎はE型肝炎であり、「4 海外旅行中の生水の摂取」が原因となりやすい肝炎はA型もしくはE型肝炎です。(上記表1参照)

 

・問235

問題の選択肢の中で、HCVに使われる抗ウイルス薬は2のソホスブビルと5のリバビリンです。よって答えは2,5です。(上記表2参照)

選択肢1 ラミブジン

B型肝炎およびHIVに使用される逆転写酵素阻害薬です。

ちょっと無理やりですが、私は学生時代、

 「ラ」の次は「リ」
 「B」の次は「C」

という覚え方で、ラミブジンはB型肝炎治療薬、リバビリンはC型肝炎治療薬であることを覚えていました。

 

選択肢3 エンテカビル

B型肝炎に使用される逆転写酵素阻害薬です。

 

選択肢4 ペラミビル

インフルエンザに使用されるノイラミニダーゼ阻害薬です。

 

第104回薬剤師国家試験 問158 一部改変

(改変部:2022年3月現在販売されていない医薬品が選択肢にあるため、その選択肢については販売中の医薬品に変更し、原文の医薬品は括弧内に記載している)

抗C型肝炎ウイルス薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 エルバスビル(原文:オムビタスビル)は、非構造タンパク質(NS)5Aを阻害する。
2 グラゾプレビル(原文:パリタプレビル)は、NS3/4Aプロテアーゼを阻害する。
3 グレカプレビル(原文:アスナプレビル)は、NS5Bポリメラーゼを阻害する。
4 グレカプレビル(原文:テラプレビル)は、逆転写酵素を阻害する。
5 レジパスビルは、キャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害する。

 

解説

前述の表2を参照してください。

選択肢1 エルバスビル(原文:オムビタスビル)
そのとおりの記述です。

選択肢2 グラゾプレビル(原文:パリタプレビル)
そのとおりの記述です。

選択肢3, 4 グレカプレビル(原文:アスナプレビル、テラプレビル)
NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤です。

選択肢5 レジパスビル
NS5A阻害剤です。
ちなみに、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤として、インフルエンザ治療薬であるバロキサビル マルボキシルがあります。

よって答えは1,2です。

 

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