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学術研修

2022年9月1日

薬剤師国家試験解説(パーキンソン病治療薬 107回問286-287等)

本部のTです。
今回はパーキンソン病治療薬についての問題、107回問286-287、104回問250-251を取り上げました。

 

問題に入る前に、パーキンソン病の前提知識として以下の事を知っておきましょう。

◎パーキンソン病とは……
パーキンソン病は、中脳の黒質の神経細胞内にレビー小体が蓄積することで、神経細胞が減少し、黒質で作られるドパミンが減少することによって起こるとされています(下に簡略図を載せています)。それにより線条体のドパミンが欠乏し、振戦、無動、筋強剛、姿勢保持障害などの運動障害(錐体外路症状)を示すようになる疾患です。またドパミンが減少することによりアセチルコリンおよびアデノシンが相対的に優位になり、神経伝達にアンバランスが生じることも運動障害に関わっているとされています。

 

第107回 問 286−287

68 歳女性。54 歳の頃、精神科でうつ病と診断され 2 年間ほどセルトラリン塩酸塩錠を服用し、回復した。10 年前(58 歳時)に内科でパーキンソン病と診断され、レボドパ 250 mg・カルビドパ配合錠( 1 日 5 錠、朝 2 錠、昼 1 錠、夕 2錠)で治療を開始した。 3 年前(65 歳時)から薬の作用時間が短縮し、服用後時間が経つと安静時振戦や運動緩慢など症状の悪化が見られた。舌突出・異常運動、じっとしていられないなどの症状は出現していなかった。服用回数を 5 回に分割したところ症状は落ち着いた。

問 286(病態・薬物治療)
服用回数を分割する前に、患者に出現していた症状はどれか。1つ選べ。
1 アカシジア
2 急性ジストニア
3 遅発性ジスキネジア
4 on-off 現象
5 wearing-off 現象

 

解説:

選択肢1 アカシジア

アカシジアは座ったままでじっとしていられず、そわそわと動き回るという症状を特徴とします。
問題文中にそのような症状は出現していなかったと記載されているので、この選択肢は間違いです。
なお、アカシジアは、錐体外路障害の一種で、ドパミン受容体遮断作用を持つ抗精神病薬や抗うつ薬などによって、ドパミン受容体が過度に抑制されることによって起こります(パーキンソン病でも稀に発現します)。

選択肢2 急性ジストニア

ジストニアは身体の筋肉が異常に緊張した結果、筋収縮、強直を起こす症状です。例えば体全体、四肢、首のねじれなどが起こります。そのような記載は問題文中にないので、この選択肢は間違いです。

選択肢3 遅発性ジスキネジア

ジスキネジアは自分の意志とは無関係に、体の一部が勝手に不規則で異様な動きをする錐体外路障害の一種です。典型的な症状として、「繰り返し唇をすぼめる」「舌を左右に動かす」「口をもぐもぐさせる」「口を突き出す」などがあります。
問題文中にそのような症状は出現していなかったと記載されているので、この選択肢は間違いです。
なおジスキネジアは、抗パーキンソン病薬の副作用や抗精神病薬の長期使用により、ドパミン神経細胞が減少することで起こります。特に抗精神病薬の長期使用によって起こるものを遅発性ジスキネジアといいます。

選択肢4 on-off現象

on-off現象は服薬時間に関係なく急激な症状の軽快と憎悪が繰り返される現象を言います。
「服用後時間が経つと…症状の悪化が見られた」と問題文中に記載されていることから、この選択肢は間違いです。

選択肢5 wearing-off現象

wearing-off現象はレボドパの薬効時間が短縮し、次の服用前に症状が強くなる現象を言います。
問題文中の「薬の作用時間が短縮」や「服用回数を 5 回に分割したところ症状は落ち着いた」等の記載からこれが正しい選択肢です。

よって、正解は5です。

 

問 287(実務)
この患者は、その後、薬を頻回に内服することを考えると気分がすぐれなくなり、うつ病が再発したため、 2 年前(66 歳時)から精神科でセルトラリン塩酸塩錠の服用を再開した。 2 ヶ月ほど前から、 3 年前(65 歳時)のような症状が起こるようになったと、内科の主治医に相談があった。主治医は、新しく薬物を追加することを検討している。現在の処方は以下のとおりである。

(処方 1 )
レボドパ 250 mg・カルビドパ配合錠 1 回 1 錠( 1 日 5 錠)
1 日 5 回 起床時、10 時、14 時、18 時、22 時 28 日分
(処方 2 )
セルトラリン塩酸塩錠 50 mg 1 回 1 錠( 1 日 1 錠)
1 日 1 回 朝食後 28 日分
この患者に追加する薬物として、適切でないのはどれか。1つ選べ。
1 セレギリン
2 ロピニロール
3 イストラデフィリン
4 エンタカポン
5 ゾニサミド

 

解説

wearing-off現象の対策として、レボドパを1日数回に分けて服薬する、もしくはドパミンアゴニスト(ロピニロールなど)、MAO-B阻害薬(セレギリン、ラサギリン)、COMT阻害薬(エンタカポン)、イストラデフェリン、ゾニサミドの追加などがあります。

問題の選択肢はいずれも、wearing-off改善に用いられる薬です。しかし、セレギリンは選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)と併用すると、脳内セロトニン濃度が高まり、セロトニン症候群を起こす可能性があるため、SSRIとは併用禁忌となっています。よって、SSRIであるセルトラリンを服用しているこの患者の場合、セレギリンは不適切です。
よって、正解は1です。

 

第104回問250〜251

75歳男性。 7年前にパーキンソン病と診断され、レボドパ・ベンセラジド塩酸塩配合錠の投与によって日常生活は問題のないレベルを維持してきた。胃がんの手術のため外科病棟に入院したところ、この配合錠を正しく服用しているにもかかわらず、症状の日内変動(wearing−off現象)が認められるようになった。

問250(実務)
外科の主治医から病棟担当薬剤師に、wearing−offの治療に関する相談があり、一剤追加することになった。提案すべき併用薬物として適切なのはどれか。2つ選べ。

1 トリヘキシフェニジル塩酸塩
2 イストラデフィリン
3 ドロキシドパ
4 ビペリデン塩酸塩
5 エンタカポン

解説

選択肢の中でwearing−offの治療に使用できるのは2 イストラデフィリンと5 エンタカポンです。(107回問287の解説を参照)。
よって、正解は2,5です。

問251(薬理)
前問で提案すべき併用薬物の作用機序として正しいのはどれか。2つ選べ。

  1.  線条体において、アデノシンA2A受容体を遮断する。
  2.  線条体において、ドパミンD2受容体を遮断する。
  3.  芳香族L−アミノ酸脱炭酸酵素によりノルアドレナリンに変換され、脳内のノルアドレナリンを補充する。
  4.  主に末梢において、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ(COMT)を阻害し、レボドパの代謝を抑制する。
  5.  線条体において、ムスカリン性アセチルコリン受容体を遮断する。

 

解説

選択肢1

イストラデフィリンの作用機序です。
大脳基底核の中にある神経細胞は、アデノシンA2A受容体によって興奮的に働き、ドパミンによって抑制的に働きます。前述のように、パーキンソン病では、脳内のドパミンが不足しているため、相対的にアデノシンが優位となっており、運動機能が低下しています。イストラデフィリンはアデノシンA2A受容体を遮断し、アデノシンの働きを抑えることで、神経伝達のバランスを正常化し、wearing-offを改善します。

選択肢2

ドパミンD2受容体を遮断する薬として、ドンペリドンなど消化管運動改善薬やハロペリドールなどの抗精神病薬があります。
また、ドパミンD2受容体を刺激する抗パーキンソン病薬としてロピニロール、プラミペキソール、ロチゴチン、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、カベルゴリン等のドパミンアゴニストがあります。

選択肢3

レボドパの作用機序です。

選択肢4

エンタカポンの作用機序です。
COMTはレボドパの代謝に関わる酵素ですが、抹消でのCOMTを阻害することで、レボドパの脳内移行量を増やします。それにより、wearing-offを改善します。

選択肢5

トリヘキシフェニジルやビペリデンの作用機序です。
前述の通り、パーキンソン病においては、脳内のドパミン量が不足しているため、アセチルコリンが相対的に優位になっています。トリヘキシフェニジルやビペリデンは、アセチルコリンの受容体を遮断することで、神経伝達のバランスを回復し、パーキンソン病の症状を改善します。

この問題は問250の正解であるイストラデフィリンとエンタカポンの作用機序を答える問題なので、正解は1,4です。

 

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