パーキンソン病治療薬まとめと国試解説(106回216-217等)
本部のTです。
今回はパーキンソン病治療薬に関する国試問題である106回問216-217、100回問250-251の解説をしてみました。また最後にパーキンソン病治療薬の作用機序とまとめを書いています。
9/1の記事でも、パーキンソン病についての問題を解説しているので、そちらも参考にしてください。
第106回問 216−217
75 歳男性。3年前にパーキンソン病と診断され、レボドパ100mg・カルビドパ配合錠 1日3錠、トリヘキシフェニジル塩酸塩錠 2mg 1日3 錠で薬物治療を継続していた。 3ヶ月前にレボドパ 100mg・カルビドパ配合錠が 1日5錠に増量になり(処方1)、さらに、今回から処方3が追加になった。処方2は、用法・用量の変更はなく継続中である。
(処方 1 )
レボドパ 100 mg・カルビドパ配合錠 1 回 1 錠( 1 日 5 錠)
1 日 5 回 7 時、10 時、13 時、16 時、20 時 14 日分
(処方 2 )
トリヘキシフェニジル塩酸塩錠 2 mg 1 回 1 錠( 1 日 3 錠)
1 日 3 回 朝昼夕食後 14 日分
(処方 3 )
プラミペキソール塩酸塩水和物徐放錠 0.375 mg 1 回 1 錠( 1 日 1 錠)
1 日 1 回 朝食後 14 日分
問 216(実務)
患者の家族が薬局に処方箋を持参した。薬剤師が家族に行う説明として適切なのはどれか。2つ選べ。
- 処方 1 は胃腸障害を起こしやすいので、牛乳と一緒に服用しても構いません。
- 体の一部が自然に動いてしまう不随意運動を抑えるため、処方 3 が追加になりました。
- 処方 3 の影響で、暴食を繰り返すような行動が現れることがあるので、そのような症状が現れた場合は主治医に連絡してください。
- 処方 3 により眠気が現れることがあるので、自動車等の運転は避けるようにしてください。
- パーキンソン病の症状が改善されたら、直ちに処方 3 の薬剤の服用を中止してください。
問 217(物理・化学・生物)
この患者に起きていると考えられる生体内変化はどれか。2つ選べ。
- 黒質から線条体に至るドパミン作動性神経の変性が進行した。
- 線条体におけるコリン作動性神経からのアセチルコリン放出が減少した。
- 線条体で放出されたドパミンの分解が低下した。
- 線条体におけるコリン作動性神経のドパミンによる抑制が減弱した。
- 末梢血液中のドパ脱炭酸酵素活性が低下した。
解説
問216
選択肢1 ×
レボドパはアミノ酸なので、牛乳など高タンパク食品と一緒に服用すると、吸収が競合して、吸収率が低下してしまいます。
選択肢2 ×
不随意運動(ジスキネジア)が起こった場合、レボドパを減量し、不足分をドパミンアゴニスト(プラミペキソールなど)で補充するという対応がありますが、問題文ではレボドパを減量していないため、処方3は不随意運動を抑えるためではなく、パーキンソン病自体に対して処方されていると考えられます。
選択肢3 ○
ドパミンアゴニストやレボドパでは、病的賭博、病的性欲亢進、暴食等の衝動制御障害が報告されています。
選択肢4 ○
ドパミンアゴニストやレボドパでは、突発性睡眠が起こる場合があるため、自動車等の運転は避けなければなりません。
選択肢5 ×
服用の中止は原則として医師の指示に基づかなければなりません。またドパミンアゴニストを急に中止すると、悪性症候群や離脱症状が起こる可能性があるため、中止が必要な場合は漸減しなければなりません。
よって答えは3, 4です。
問217
この患者の場合、処方3が追加されていることから、パーキンソン病の病状が進行していると考えられます。
パーキンソン病では、黒質から線条体に至るドパミン作動性神経の変性により、線条体におけるドパミンが減少します。また、ドパミンが減少すると、コリン作動神経が活性化し、アセチルコリン放出が増加します。
よって、答えは1, 4です。
選択肢5については、末梢血液中のドパ脱炭酸酵素活性が低下していれば、むしろ脳内に移行するL-ドパが増加し、症状が改善するはずなので、誤りです。
(後述のパーキンソン病治療薬の作用機序も参考に御覧ください)
第100回問 250-251
66歳男性。パーキンソン病と診断され、以下の薬剤で治療してきたが、最近、薬の効果持続時間が短縮してきた。
(処方)
レボドパ 100mg・カルビドパ配合錠 1回1錠(1日3錠)
トリヘキシフェニジル塩酸塩錠 2mg 1回1錠(1日3錠)
1日3回 朝昼夕食後 30日分
問 250(実務)
この患者の薬物治療の対応策として、ふさわしくないのはどれか。 1つ選べ。
- レボドパ 100mg・カルビドパ配合錠を増量する。
- プラミペキソール塩酸塩水和物徐放錠を追加する。
- エンタカポン錠を追加する。
- セレギリン塩酸塩錠を追加する。
- チアプリド塩酸塩錠を追加する。
問 251(薬理)
処方薬および前問中の薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。 2つ選べ。
- カルビドパは、末梢性芳香族 L-アミノ酸デカルボキシラーゼ阻害薬で、レボドパが末梢でドパミンに変換されるのを抑制する。
- プラミペキソールは、ドパミン神経からのドパミン遊離を促進する。
- エンタカポンは、ドパミン D2受容体を刺激する。
- セレギリンは、モノアミン酸化酵素Bを阻害することによりドパミンの代謝を抑制する。
- チアプリドは、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼを阻害する。
解説
問250
薬の効果持続時間の短縮(wearing-off)が起こった場合は、レボドパの投与を1日4~5回投与に変更、増量またはドパミンアゴニストを追加、増量します。それでもwearing-offが起こる場合は、COMT阻害薬(エンタカポン、オピカポン)、MAO-B阻害薬(セレギリン、ラサギリン、サフィナミド)、イストラデフィリン、ゾニサミドなどを併用します。
選択肢1~4はいずれも上記の対応に当てはまるものなので、適切です。
選択肢5のチアプリドは、ドパミンD2受容体遮断作用を持ち、脳梗塞後の攻撃的行為やせん妄、ジスキネジアに適応があります。この患者にジスキネジアが起こっているという記述はないので、不適切です。
よって、正解は5です。
問251
後述のパーキンソン病治療薬まとめも参考にしてください。
選択肢1 ○
その通りの記述です。
選択肢2 ×
ドパミン遊離を促進するのはアマンタジンです。
選択肢3 ×
ドパミンD2受容体を刺激するのは、プラミペキソールなどのドパミンアゴニストです。
選択肢4 ○
その通りの記述です。(モノアミン酸化酵素B=MAO-B)
選択肢5 ×
カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)を阻害するのは、エンタカポンやオピカポンです。
よって答えは、1, 4です。
分類 | 薬剤名 | 作用機序・備考 |
レボドパ | レボドパ |
|
ドパ脱炭酸 酵素阻害薬 |
カルビドパ ベンセラジド |
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ドパミン アゴニスト |
麦角系 ブロモクリプチン カベルゴリン 等 非麦角系 ロピニロール プラミペキソール ロチゴチン アポモルヒネ 等 |
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COMT 阻害薬 |
エンタカポン オピカポン |
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抗コリン薬 | トリヘキシフェニジル ビペリデン マザチコール 等 |
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ドパミン 遊離促進薬 |
アマンタジン |
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MAO-B 阻害薬 |
セレギリン ラサギリン サフィナミド |
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A2A受容体 拮抗薬 |
イストラデフィリン |
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ノルアドレ ナリン前駆体 |
ドロキシドパ |
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レボドパ 賦活剤 |
ゾニサミド |
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