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学術研修

2022年12月2日

薬剤師国家試験の予想問題(新薬)

本部のTです。

国試の新薬に関する予想問題を3つ作成してみましたので、今回はその解説です。

ただし、新薬に関する問題は例年1,2問しか出ないので、過去問に出ている薬をまず勉強し、余裕があれば、新薬に関する勉強をするぐらいで良いと思われます。この予想問題も余裕があれば解いてみてください。

新薬は承認されてから1年~3年程度で出題されることが多いので、2020年~2022年にかけて承認された薬を取り上げました。

また、今回は取り上げませんでしたが、ベルイシグアトも国試で出される可能性のある新薬なので、こちらの記事(クリックで記事に移動)で勉強しておきましょう。

 

問1 サクビトリル・バルサルタンの作用機序はどれか。2つ選べ。

  1. ネプリライシンを阻害することで、内因性ナトリウム利尿ペプチドの分解を抑制し、血管拡張・利尿作用を示す。
  2. アンギオテンシンⅡ受容体を阻害し、副腎皮質からのアルドステロン分泌を抑制することで血管拡張作用を示す。
  3. 血管および腎臓における ANP 受容体に作用して、グアニル酸シクラーゼを活性化させ、血管拡張・利尿作用を示す。
  4. 集合管のアルドステロン受容体を遮断することで利尿作用を示す。
  5. アンギオテンシン変換酵素を阻害することで、アンギオテンシンⅡの生成を阻害し、血管拡張作用を示す。

 


解説

2020年8月に販売されたサクビトリル・バルサルタンは、ARNI(アンジオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬)と呼ばれる新しいタイプの心不全治療薬です。また高血圧にも適応があります。

サクビトリル・バルサルタンは体内でサクビトリルとバルサルタンに分離します。サクビトリルの活性代謝物はネプリライシンを阻害します。
ネプリライシンは、内因性ナトリウム利尿ペプチド(ANP、BNP、CNP)を分解してしまいます。ANP、BNP、CNPは血管拡張や利尿作用を有するホルモンなので、この分解を防ぐことで、血管拡張、利尿作用を示します

一方、バルサルタンはARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)であり、アンギオテンシンⅡ受容体を阻害することで、副腎皮質からのアルドステロン分泌を抑制することで血管拡張、体液貯留抑制を示します

よって正解は1と2です。

選択肢3は、ANP製剤のカルペリチドの作用機序です。

選択肢4は、スピロノラクトンなどのカリウム保持性利尿薬の作用機序です。

選択肢5は、エナラプリルなどのACE阻害薬の作用機序です。

 

 

問2 オレキシン受容体を阻害する不眠症治療薬はどれか。1つ選べ。

1. ブロチゾラム
2. フルニトラゼパム
3. エスゾピクロン
4. ラメルテオン
5. レンボレキサント

 


解説

神経ペプチドであるオレキシンは、オレキシン受容体を介して覚醒の安定化及び睡眠の抑制を行っています。

2020年7月に販売されたレンボレキサントは、オレキシン受容体を阻害することで、脳を覚醒状態から睡眠へと移行させる不眠症治療薬です。同じ作用機序を持つ薬としてスボレキサントがあります。

よって、正解は5です。

選択肢1,2のブロチゾラム、フルニトラゼパムはどちらもベンゾジアゼピン系の睡眠薬で、ベンゾジアゼピン受容体に作用することで、GABAA受容体が活性化され、鎮静・睡眠作用を示します。

選択肢3のエスゾピクロンは非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。非ベンゾジアゼピン系は構造がベンゾジアゼピン系薬と異なりますが、基本的な機序はベンゾジアゼピン系薬と一緒です。ベンゾジアゼピン受容体にはω1とω2などの種類があり、ω1は睡眠、ω2は抗不安作用や筋弛緩作用に関わっています。非ベンゾジアゼピン系はω1に対する選択性が高く、筋弛緩作用による副作用が起こりにくいとされています。

選択肢4のラメルテオンは、メラトニン受容体(MT1受容体、MT2受容体)に作用することで睡眠を促します。

 

 

問3 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を阻害する片頭痛予防薬はどれか。1つ選べ。

1. バシリキシマブ
2. トラスツズマブ
3. ベンラリズマブ
4. ガルカネズマブ
5. トシリズマブ

 


解説

CGRP (カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は、片頭痛発作時の血管拡張や炎症反応の直接の原因とされています。

2021年4月に販売されたガルカネズマブは、抗CGRPモノクローナル抗体です。CGRPと結合することで、その働きを抑え、片頭痛を予防します。

よって、正解は4です。

選択肢1のバシリキシマブは抗CD25モノクローナル抗体で、腎移植後の急性拒絶反応の抑制に用いられます。

選択肢2のトラスツズマブは抗HER2モノクローナル抗体で、HER2過剰発現が確認された乳癌や胃癌などに用いられます。

選択肢3のベンラリズマブは抗IL-5受容体αモノクローナル抗体で、難治性の気管支喘息に用いられます。

選択肢5のトシリズマブは抗IL-6レセプターモノクローナル抗体で、関節リウマチなどの膠原病に用いられます。またトシリズマブは、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)による肺炎(酸素投与を要する患者)に対する適応が追加されました。
関節リウマチなどの膠原病は免疫系に異常が起こり、免疫が自分自身の正常な細胞や組織を攻撃することにより起こります。IL-6はサイトカインの一種で、免疫応答や炎症反応の調節に関わっていますが、トシリズマブはこれを阻害することで過剰な炎症反応を抑えます。
また、新型コロナウイルスによる肺炎では、肺で過剰な免疫反応が起こることで、肺炎が起こると考えられており、トシリズマブはこれを抑制する効果が期待されています。

 

他にも新型コロナウイルス感染症治療薬のパキロビットパックに少し関連する国試予想問題を2022年5月の記事で解説していますので、参考にしてください。

 

↓他の国試関連の記事も、よければ参考にしてください。

 

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