薬剤師国家試験の予想問題(CYP関連問題)
本部のTです。
今回は薬剤師国家試験に向けて、予想問題を2問作成してみました。
CYPの相互作用についての問題であり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬であるパキロビッドパック®(ニルマトレルビル/リトナビル)にも関連する内容です。
国試予想問題
問1
リトナビルと併用禁忌ではないものはどれか。1つ選べ。
1 キニジン
2 ピルシカイニド
3 トリアゾラム
4 ミダゾラム
5 リバーロキサバン
問2
前問においてリトナビルと併用禁忌である薬について、その相互作用の主なメカニズムはどれか。1つ選べ。
1 有機アニオントランスポーターを介した肝取り込みの阻害
2 P-糖タンパク質の誘導による腎排泄の促進
3 CYP1A2の阻害による代謝の阻害
4 CYP3A4の阻害による代謝の阻害
5 CYP2C9の阻害による代謝の阻害
解説
リトナビルは、プロテアーゼ阻害作用を持つ抗ウイルス薬で、HIVやHCVの治療に用いられます。また、肝CYP3Aの強い阻害作用があり、これにより他の抗ウイルス薬の代謝を阻害し、その血中濃度を高めることができます。そのため、リトナビル自体の効果よりも他の抗ウイルス薬の代謝を阻害することを期待して併用されることが多いです。
2022年2月に販売された新型コロナウイルス治療薬のパキロビッドパックは、新型コロナウイルス感染症に効果のあるニルマトレルビルと、その代謝を遅らせるリトナビルがセットになった薬です。
リトナビルはそのCYP3Aの強い阻害作用のために、多数の薬との相互作用があります。また、P-糖タンパク質の阻害、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19の誘導作用もあり、それらによる相互作用も報告されています。(ただし、国試対策としては、CYP3A4阻害だけを覚えておけばよいでしょう。余裕があれば、P-糖タンパク質の阻害も覚え、それ以外は誘導作用がいくつかあった程度の覚え方で良いと思います。)
問1
ピルシカイニドが腎排泄型で、肝代謝はほとんど受けないことを知っていれば解ける問題ですが、他の選択肢もCYP3A4により代謝される代表的な薬として覚えておきましょう。
選択肢1 キニジン
抗不整脈薬で、主にCYP3A4により代謝されます。リトナビルのCYP3A4阻害作用により、キニジンの血中濃度が上昇し、心血管系の重篤な副作用を起こす可能性があり、併用禁忌です。
選択肢2 ピルシカイニド
ピルシカイニドは、腎排泄型の抗不整脈薬であり、肝代謝はほとんど受けません。また、併用禁忌はなく、リトナビルとの相互作用も報告されていません。
※本問とは直接は関係ありませんが、ピルシカイニドは腎機能低下により大幅に半減期が延長するため、腎機能が低下している患者では、投与量を減量するか、投与間隔をあけて使用しなければならない薬であることは知っておきましょう。腎機能障害患者が他の抗不整脈からピルシカイニドに変更する際、誤って通常の用法用量で処方される医療事故は過去に複数回起こっており、2021年にも致死性の不整脈を発症して死亡に至る事例があり、注意が必要です。
選択肢3 トリアゾラム
ベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤で、主にCYP3A4により代謝されます。CYP3A4阻害作用により、過度の鎮静や呼吸抑制を起こす可能性があり、併用禁忌です。
トリアゾラムやミダゾラムなどの多くのベンゾジアゼピン系薬はCYP3A4により代謝されるため、リトナビルと併用禁忌となっています。
なお、ベンゾジアゼピン系薬の中でも、ロルメタゼパムはCYPで代謝されないため、CYP阻害薬との相互作用はありません。
選択肢4 ミダゾラム
トリアゾラムと同様にベンゾジアゼピン系の薬剤ですが、こちらはてんかん重積発作等に使われます。CYP3A4により代謝されるため併用禁忌です。
選択肢5 リバーロキサバン
抗凝固薬で、主にCYP3A4(およびCYP2J2)により代謝されます。CYP3A4阻害作用により、抗凝固作用が増強されることにより、出血の危険性が増大します。
よって、答えは2です。
問2
前述の通り、リトナビルにはCYP3AおよびP-糖タンパク質の阻害作用、いくつかのCYPの誘導作用がありますが、問1のキニジン、トリアゾラム、ジアゼパム、リバーロキサバンはいずれもリトナビルによる「CYP3A4の阻害による代謝の阻害」により、相互作用を起こします。
よって、答えは4です。
なお、選択肢1の「有機アニオントランスポーターを介した肝取り込み」を阻害する医薬品として、シクロスポリンがあります。それにより、ピタバスタチン、ロスバスタチン、ペマフィブラート等と併用禁忌になっています。
関連する国試問題として、105回問272-273、103回169-194、106回228-229がありますので、ぜひ解いてみて下さい。
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