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学術研修

2022年5月17日

薬剤師国家試験の予想問題(CYP関連問題)

本部のTです。
今回は108回薬剤師国家試験に向けて、予想問題を2問作成してみました。
CYPの相互作用についての問題であり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬であるパキロビッドパック®(ニルマトレルビル/リトナビル)にも関連する内容です。

 

国試予想問題

問1
リトナビルと併用禁忌ではないものはどれか。1つ選べ。

1 キニジン
2 ピルシカイニド
3 トリアゾラム
4 ミダゾラム
5 リバーロキサバン

問2
前問においてリトナビルと併用禁忌である薬について、その相互作用の主なメカニズムはどれか。1つ選べ。

1 有機アニオントランスポーターを介した肝取り込みの阻害
2 P-糖タンパク質の誘導による腎排泄の促進
3 CYP1A2の阻害による代謝の阻害
4 CYP3A4の阻害による代謝の阻害
5 CYP2C9の阻害による代謝の阻害

 

解説

リトナビルは、プロテアーゼ阻害作用を持つ抗ウイルス薬で、HIVやHCVの治療に用いられます。また、肝CYP3Aの強い阻害作用があり、これにより他の抗ウイルス薬の代謝を阻害し、その血中濃度を高めることができます。そのため、リトナビル自体の効果よりも他の抗ウイルス薬の代謝を阻害することを期待して併用されることが多いです。
2022年2月に販売されたパキロビッドパックは、新型コロナウイルス感染症に効果のあるニルマトレルビルと、その代謝を遅らせるリトナビルがセットになった薬です。

リトナビルはそのCYP3Aの強い阻害作用のために、多数の薬との相互作用があります。また、P-糖タンパク質の阻害、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19の誘導作用もあり、それらによる相互作用も報告されています。

 

問1

選択肢1 キニジン

抗不整脈薬で、主にCYP3A4により代謝されます。リトナビルのCYP3A4阻害作用により、キニジンの血中濃度が上昇し、心血管系の重篤な副作用を起こす可能性があり、併用禁忌です。

選択肢2 ピルシカイニド

ピルシカイニドは、腎排泄型の抗不整脈薬であり、肝代謝はほとんど受けません。また、併用禁忌はなく、リトナビルとの相互作用も報告されていません。
本問とは直接は関係ありませんが、ピルシカイニドは腎機能低下により大幅に半減期が延長するため、腎機能が低下している患者では、投与量を減量するか、投与間隔をあけて使用しなければならない薬です。腎機能障害患者が他の抗不整脈からピルシカイニドに変更する際、誤って通常の用法用量で処方される医療事故は過去に複数回起こっており、2021年にも致死性の不整脈を発症して死亡に至る事例があり、注意が必要です。

選択肢3 トリアゾラム

ベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤で、主にCYP3A4により代謝されます。CYP3A4阻害作用により、過度の鎮静や呼吸抑制を起こす可能性があり、併用禁忌です。
トリアゾラムやミダゾラムなどの多くのベンゾジアゼピン系薬はCYP3A4により代謝されるため、リトナビルと併用禁忌となっています。
なお、ベンゾジアゼピン系薬の中でも、ロルメタゼパムはCYPで代謝されないため、CYP阻害薬との相互作用はありません。

選択肢4 ミダゾラム

トリアゾラムと同様にベンゾジアゼピン系の薬剤ですが、こちらはてんかん重積発作等に使われます。併用禁忌です。

選択肢5 リバーロキサバン

抗凝固薬で、主にCYP3A4(およびCYP2J2)により代謝されます。CYP3A4阻害作用により、抗凝固作用が増強されることにより、出血の危険性が増大します。

よって、答えは2です。

 

問2

前述の通り、リトナビルにはCYP3AおよびP-糖タンパク質の阻害作用、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19の誘導作用がありますが、問1のキニジン、トリアゾラム、ジアゼパム、リバーロキサバンはいずれもリトナビルによる「CYP3A4の阻害による代謝の阻害」により、相互作用を起こします。

よって、答えは4です。

なお、選択肢1の「有機アニオントランスポーターを介した肝取り込み」を阻害する医薬品として、シクロスポリンがあります。それにより、ピタバスタチン、ロスバスタチン、ペマフィブラート等と併用禁忌になっています。

以下にCYP・P-糖タンパク質を阻害する医薬品およびそれに影響を受ける医薬品をまとめましたので、参考にして下さい。

太字の部分をしっかり覚えれば、CYPとP-糖タンパク質に関連する相互作用についての問題には対応できると思います。

 

CYPを阻害する主な医薬品と影響を受ける医薬品

 

*1 イミプラミンはCYP2D6によって代謝されると不活性化しますが、CYP1A2によって代謝されると、より活性の強いデシプラミンとなります。そのため、CYP2D6が阻害されると作用が増強する一方、CYP1A2が阻害されるとデシプラミンの血中濃度が低下するため、作用が減弱します。クロピドグレルCYP2C19により活性代謝物となるため、CYP2C19が阻害されると、作用が減弱します。またコデインは、CYP2D6によりモルヒネとなって効果を発揮するため、CYP2D6が阻害されると作用が減弱します

*2 マクロライド系抗菌薬はCYP3A4によって代謝されるとともに、CYP3A4のヘム鉄に共有結合し、不可逆的にCYP3A4を阻害します。一方、アゾール系抗真菌薬とシメチジンはCYPのヘム鉄に配位結合することにより、可逆的にCYPを阻害します。その他のCYP阻害の多くは競合阻害によるものです。

 

P-糖タンパク質を阻害する医薬品と影響を受ける医薬品

阻害する主な医薬品

影響を受ける主な医薬品
(P-糖タンパク質を基質とする医薬品)

作用・副作用の増減
HIVプロテアーゼ阻害薬

マクロライド系抗菌薬

アゾール系抗真菌薬

ベラパミル

キニジン

ジゴキシン

ダビガトラン

増強

 

CYPおよびP-糖タンパク質を誘導する医薬品

リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタールや健康食品のセントジョーンズワートは、ほぼすべての種類のCYP(CYP2D6を除く)およびP-糖タンパク質を誘導し、ベンゾジアゼピン系薬剤などの医薬品の代謝・排泄を促進します。

また喫煙は、CYP1A2を誘導するため、テオフィリンなどの代謝を促進します。

 

関連する国試問題として、105回問272-273、103回169-194、106回228-229がありますので、ぜひ解いてみて下さい。

 

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