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学術研修

2023年8月8日

第108回薬剤師国家試験 理論問題-薬理 問154~問156

本部のTです。
前回の108回薬剤師国家試験 理論問題-薬理の解説の続きです。今回は問154~問156の解説をします。
前回の問151~問153はこちら。次回の問157-158はこちら
 

 目次

 

108回問 154

抗てんかん薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. ガバペンチンは、γアミノ酪酸 GABAA受容体に結合して、GABA 作動性神経伝達を増強する。
  2. ラモトリギンは、K+チャネルを遮断することで、神経細胞膜を脱分極させて、グルタミン酸などの興奮性神経伝達物質の遊離を抑制する。
  3. ペランパネルは、シナプス後膜に存在するグルタミン酸 AMPA 受容体を遮断して、グルタミン酸による神経細胞の過剰興奮を抑制する。
  4. カルバマセピンは、電位依存性T型 Ca2+チャネルを遮断して、神経細胞における活動電位の発生を抑制する。
  5. レベチラセタムは、シナプス小胞タンパク質2A(SV2A)に結合して、神経伝達物質の遊離を抑制する。

 

解説

選択肢1 ×
ガバペンチンは、膜電位依存性Ca2+チャネルのα2δサブユニットに結合し、Ca2+電流を抑制して、興奮性神経伝達物質(グルタミン酸)の遊離を抑制します。
よってこの選択肢は誤りです。
GABAA受容体に結合する抗てんかん薬としてバルビツール酸系薬剤、ベンゾジアゼピン系薬剤があります。

選択肢2 ×
ラモトリギンは、Na+チャネルを抑制して神経膜を安定させ、グルタミン酸などの興奮性神経伝達物質の遊離を抑制します。
よってこの選択肢は誤りです。
抗てんかん薬で、K+チャネルを遮断するものはありません。

選択肢3 ○
その通りの記述です。

選択肢4 ×
カルバマゼピンは、Na+チャネルを抑制し、Na+の細胞内流入を阻止することで、神経膜の脱分極を抑制して、抗てんかん作用を示します。フェニトインも同様。
よってこの選択肢は誤りです。
T型Ca2+チャネルを遮断する薬として、エトスクシミド、トリメタジオンがあります。

選択肢5 ○
その通りの記述です。

よって正解は3,5です。

・問題に対する個人的な感想:
抗てんかん薬は作用機序が難しいものが多く、更に今回はペランパネルという過去に出題のなかった薬が登場しており、やや難しい問題です。しかし、ガバペンチン、ラモトリギン、カルバマゼピンは頻出の薬ですので、選択肢1,2,4が誤りであることは最低限理解できるようにしておきましょう。

 

108回問 155

 中枢神経系に作用する薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. メチルフェニデートは、ノルアドレナリンやドパミンの再取り込みを阻害することで、覚醒作用を示す。
  2. カフェインは、キサンチンオキシダーゼを阻害することで、中枢興奮作用を示す。
  3. フルマゼニルは、γアミノ酪酸 GABAA受容体の GABA 結合部位を遮断することで、呼吸を促進する。
  4. グアンファシンは、アドレナリンα2 受容体を遮断することで、攻撃性を抑制する。
  5. アトモキセチンは、ノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで、注意欠如を改善する。

 

解説

選択肢1 ○
その通りの記述です。なお、メチルフェニデートはナルコレプシーやADHDに使われる第1種向精神薬です。

選択肢2 ×
カフェインには、非選択的ホスホジエステラーゼ阻害作用があり、cAMP及びcGMPの分解を抑制することで、中枢神経の興奮作用を示します。
よってこの選択肢は誤りです。
テオフィリンと相互作用があることからも推測可能です。
キサンチンオキシダーゼを阻害する薬としては、アロプリノールやフェブキソスタットなどの尿酸生合成阻害薬があります。

選択肢3 ×
フルマゼニルは、GABAA受容体の ベンゾジアゼピン結合部位を遮断することで、呼吸を促進します。
よってこの選択肢は誤りです。
フルマゼニルは、ベンゾジアゼピン系薬剤による鎮静、呼吸抑制の改善に用いられる薬なので、その点からもベンゾジアゼピン系薬剤と同じ部位に働くことは推測できます。

選択肢4 ×
グアンファシンの詳細な作用機序は不明ですが、α2アドレナリン受容体を刺激し、ノルアドレナリンのシナプス伝達調整によりADHDの諸症状を改善するとされています。
よってこの選択肢は誤りです。
グアンファシンを知らなくても、クロニジンのようにα2を刺激して交感神経を抑制するくすりがあることを考えれば、遮断が間違いと気づけます。
(ちなみに、グアンファシンはもともとは高血圧の薬として開発され、ADHDの薬として転用されたという経緯があります。)

選択肢5 ○
その通りの記述です。なお、アトモキセチンもADHDの諸症状改善に使用されます。

 よって正解は1,5です。

 

・問題に対する個人的な感想:
特に選択肢4,5は過去にあまり問われなかった機序についての問題で、難しいと思います。しかし、近年ADHDに関する問題も増えつつあるので、この機会に覚えましょう。

 

108回問 156

抗リウマチ薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. インフリキシマブは、抗ヒトTNF-α受容体モノクローナル抗体で、TNF-αの作用を抑制する。
  2. アバタセプトは、抗原提示細胞表面のCD80/CD86に結合して、CD28を介し共刺激シグナルを抑制する。
  3. トファシチニブは、ヤヌスキナーゼ(JAK)を阻害して、IL-2受容体の活性化を介した作用を抑制する。
  4. トシリズマブは、抗ヒトIL-1βモノクローナル抗体で、IL-1βの作用を抑制する。
  5. エタネルセプトは、IL-6受容体の細胞外ドメインとヒトIgGのFc鎖との融合タンパク質で、IL-6の作用を抑制する。

 

解説

選択肢1 ×
インフリキシマブはTNF-α受容体ではなく、TNF-α自体と結合し、TNF-αの作用を抑制します。そのため、TNF-α受容体モノクローナル抗体という記述は間違いです。

選択肢2 ○
その通りの記述です。

選択肢3 ○
その通りの記述です。

選択肢4 ×
トシリズマブは、抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体で、IL-6の活性の発現を抑制します。よってこの選択肢は間違いです。

選択肢5 ×
エタネルセプトは、可溶性TNF受容体とFc鎖の融合タンパク質で、TNF-αとLT-αを補足し、受容体との結合を阻害します。よってこの選択肢は誤りです。

よって正解は2,3です。

・問題に対する個人的な感想:
やや難しい問題です。この手の生物学的問題は覚えるしかないですね。

 

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