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学術研修

2023年9月22日

第108回薬剤師国家試験 理論問題-薬理 問157-158

本部のTです。
前回の108回薬剤師国家試験 理論問題-薬理の解説の続きです。今回は問157-158の解説をします。
前回の問154~問156はこちら。次回の問159-160はこちら

 

問 157−158 

50歳男性。身長170 cm、体重 81 kg(BMI 28)。特に自覚症状は無く服薬歴もなかったが、健康診断で血圧が高いことを指摘された。家庭での血圧自己測定においても、連日140/90 mmHg 台と高く推移していたため受診した。診察室での血圧は146/92 mmHg、心拍68拍/分(整)で、その他特記すべき異常所見は認められなかった。その後の複数回の受診時の血圧も同様に高く、Ⅰ度高血圧と診断された。飲酒は毎日缶ビール(350 mL) 1本程度で、喫煙歴はない。しばらく生活習慣の改善を試みたが、診察室・家庭血圧ともに降圧はほとんど認められなかったため、薬物療法を開始することになった。

問 157(病態・薬物治療)
この患者の病態と治療に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 頻脈が認められる。
  2. 肥満は認められない。
  3. 白衣高血圧と仮面高血圧の可能性は、いずれも否定できる。
  4. 食塩摂取量は9g/日未満が理想である。
  5. 降圧薬の投与にあたっては、単剤を低用量から開始する。

 

問 158(薬理)
高血圧症治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. アリスキレンは、レニンを阻害することで、アンジオテンシンⅠの産生を抑制する。
  2. アテノロールは、アドレナリンβ1受容体遮断により心拍出量を減少させるとともに、アドレナリンα1受容体遮断により血管収縮を抑制する。
  3. シルニジピンは、電位依存性 N 型 Ca2+ チャネルを遮断することで、交感神経終末からのノルアドレナリン放出を抑制する。
  4. リシノプリルは、キニナーゼⅡを阻害することで、ブラジキニンの生成を抑制する。
  5. クロニジンは、延髄の血管運動中枢のアドレナリンα2 受容体を遮断することで、交感神経活動を抑制する。

 

解説

問 157(病態・薬物治療)
選択肢1 ×
心拍数は68拍/分であり、頻脈(通常は心拍数100拍/分以上)は認められません。

選択肢2 ×
BMIが28であり、肥満と考えられます(BMI≥25を肥満と判定)。

選択肢3 ○
診察室でも家庭でも高血圧が確認されているため、白衣高血圧(診察室でしか高血圧が確認できない)や仮面高血圧(診察室では正常だが家庭で高血圧)の可能性は否定できます。

選択肢4 ×
高血圧患者における1日の食塩摂取量は、6g未満が推奨されています。

選択肢5 ○
この患者には生活習慣改善が効果を示していないため、薬物療法が選択されます。通常、降圧薬は単剤の低用量から開始されるので、正しい記述です。

よって、正解は3, 5です。

 

問 158(薬理)
選択肢1 ○
アリスキレンはレニンを直接阻害することでアンギオテンシンⅠの産生を抑制します。

選択肢2 ×
アテノロールはβ1受容体遮断薬であり、心拍出量を減少させます。しかし、アドレナリンα1受容体遮断による血管収縮抑制は行いません。
α1受容体とβ受容体の両方を遮断するα1β遮断薬として、ラベタロール、アモスラロール、アロチノロール、カルベジロールがあります。

選択肢3 ○
シルニジピンはL型Ca2+チャネルとN型Ca2+チャネルを遮断し、血管平滑筋の収縮を抑制します。

選択肢4 ×
リシノプリルはACE阻害薬であり、アンギオテンシン変換酵素(ACE)=キニナーゼⅡを阻害します。キニナーゼⅡが阻害されると、ブラジキニンの分解が抑制されるため、「ブラジキニンの生成を抑制」という記述は間違いです。

選択肢5 ×
クロニジンはα2受容体を刺激して、延髄の血管運動中枢に作用して交感神経活動を抑制します。

よって、正解は1, 3です。

 

・問題に対する個人的な感想:
問157は簡単ですね。問158も、選択肢3は難しいですが、それ以外は確実に解きたい問題です。

 

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