第108回薬剤師国家試験 理論問題-薬物治療 問183~184
本部のTです。
今回は108回薬剤師国家試験 理論問題-病態・薬物治療 問183~184の解説をします。
次回の問185-187はこちら。
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問 183
重篤な副作用と代表的な原因薬剤例を示した組合せとして、正しいのはどれか。2つ選べ。
重篤な副作用 | 代表的な原因薬剤例 | |
1 | 横紋筋融解症 | ウルソデオキシコール酸錠 |
2 | 劇症肝炎 | ファモチジン錠 |
3 | 心不全 | ドキソルビシン塩酸塩注 |
4 | 間質性肺炎 | メチルプレドニゾロン錠 |
5 | 糖尿病性ケトアシドーシス | オランザピン錠 |
解説
選択肢1 ×
横紋筋融解症は、スタチン系やフィブラート系薬などが代表的な原因薬剤です。
選択肢2 ×
劇症肝炎は、バルプロ酸やベンズブロマロンなどが代表的な原因薬剤です。
選択肢3 ○
ドキソルビシンなどのアントラサイクリン系薬は心筋障害や心不全など心毒性を持つ抗がん剤です。
ゴロ合わせとして、ドキソルビシンの「ドキドキ」と心臓を結びつけて覚えましょう。またアントラサイクリン系の薬はダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンなど「~ルビシン」で終わる薬が多いですが、この「ルビ」は赤い宝石のルビーを意味するフランス語の rubis に由来しており、実際に薬品も赤色をしています。この赤いイメージと心毒性を結びつけて覚えても良いでしょう。
他に心不全の副作用のある薬の代表的なものとして、HER2過剰発現が確認された乳がんに使用される分子標的薬のトラスツズマブがあります。これもHER2=ハートと、ゴロ合わせで副作用を覚えてしまいましょう。
選択肢4 ×
間質性肺炎は、アミオダロン、ゲフィチニブ、ブレオマイシン、メトトレキサート、インターフェロン、小柴胡湯などが代表的な原因薬剤です。↓のサイトに間質性肺炎を起こす薬物のゴロ合わせが載っているので参考にしてください。
薬学部はゴロでイチコロ:https://www.benzenblog.com/entry/2023/09/09/084736
選択肢5 ○
オランザピンやクエチアピンなどの多受容体作用抗精神病薬(MARTA)や副腎皮質ステロイド薬は高血糖を起こす代表的薬剤であり、重篤な副作用として糖尿病性ケトアシドーシスを起こす場合があります。
よって、正解は3,5です。
・問題に対する個人的な感想:
ドキソルビシンの副作用→心毒性、MARTAの副作用→高血糖は有名な副作用なので、そこから確実に正解を選びたいですね。
問 184
双極性障害の病態と治療に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 躁病相が認められない場合がある。
- 睡眠障害が認められる。
- 進行すると記憶障害が認められる。
- 躁病相では、オランザピンによる治療が有効である。
- うつ病相では、イミプラミンの単独治療が推奨される。
解説
選択肢1 ×
双極性障害は、以前は躁うつ病と呼ばれていたように、うつ病相と躁病相が交互に現れる疾患です。そのため、躁病相が認められない場合は、双極性障害ではありません。
選択肢2 ○
双極性障害では、うつ病相で不眠や過眠、躁病相では睡眠欲求の減少などの睡眠障害が認められます。
選択肢3 ×
(双極性障害でも記憶障害が起こることがあるため、やや微妙な選択肢ですが)記憶障害は双極性障害の典型的な症状ではなく、進行によって起こるものでもありません。進行すると記憶障害が認められるのは認知症です。
選択肢4 ○
双極性障害の躁病相の治療には、気分安定薬とも呼ばれる炭酸リチウム、抗てんかん薬(バルプロ酸、カルバマゼピンなど)、非定型抗精神病薬(クエチアピン、オランザピン、アリピプラゾール)が用いられます。
なお、うつ病相には、クエチアピン、オランザピン、ルラシドンの非定型抗精神病薬が主に用いられます。ただし他の気分安定薬が用いられることもあるため、国試対策としては躁病相にもうつ病相にも気分安定薬として、炭酸リチウム、抗てんかん薬、非定型抗精神病の3種類が使われるという認識で良いでしょう。
選択肢5 ×
躁転による自殺のリスクが増すと言われているため、双極性障害への抗うつ薬による治療は推奨されていませんが、気分安定薬と併用で用いられることはあります。しかし「抗うつ薬による単独治療」は避けるべきとされているため、選択肢は間違いです。
よって、正解は2,4です。
・問題に対する個人的な感想:
選択肢3、4、5の判断が少し難しいかなと思います。選択肢3は出題の仕方があまり良くないと思いますが、選択肢4,5についてはこの際覚えておきましょう。
↓他の国試関連の記事も、よければ参考にしてください。