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学術研修

2023年12月19日

第108回薬剤師国家試験 理論問題-薬物治療 問185~187

本部のTです。
今回は108回薬剤師国家試験 理論問題-病態・薬物治療 問185~187の解説をします。
前回の問183-184の解説はこちら。次回の問188-189の解説はこちら
 

 目次

 

問185

冠攣縮性狭心症の病態と治療に関する記述として、正しいのはどれか。1つ選べ。

  1. 心筋の壊死をきたす。
  2. 発作は1時間以上持続する。
  3. 発作は夜間や早朝に生じることが多い。
  4. 非発作時でも、心電図異常を認める。
  5. 発作予防には、アドレナリンβ受容体遮断薬が有効である。

 

解説

選択肢1 ×
狭心症は、心筋梗塞と異なり、心筋壊死を伴いません。(そのため、血液検査には異常は見られない。)

選択肢2 ×
発作は、通常は数分(15分以内)です。

選択肢3 ○
正しい記述です。冠攣縮性狭心症は安静狭心症に多く、労作や運動と関係なく、夜間や早朝に生じることが多いです。

選択肢4 ×
冠攣縮性狭心症は発作時にST上昇を伴いますが、非発作時には心電図異常がありません。

選択肢5 ×
β受容体遮断薬は、労作性狭心症の第一選択薬ですが、冠攣縮性狭心症には、スパスム(攣縮)を誘発する場合があるため、用いません。
冠攣縮性狭心症には、Caチャネル遮断薬が第一選択薬であり、硝酸薬、ニコランジルも有効です。(硝酸薬、ニコランジルは労作性狭心症にも用いられる)

よって、正解は3です。

 

 

・問題に対する個人的な感想:
どれも冠攣縮性狭心症の典型的な問題です。確実に正解したいですね。

 

問 186

37歳女性。高血圧症があり、処方1の薬剤を服用していた。今回、来局したときに、「この度、結婚することになり、できれば子供も欲しいと思うようになった」と話していた。対応したかかりつけ薬剤師は、処方期間中に妊娠する可能性を考え、処方医へ薬剤変更を提案することにした。最も適切な薬物はどれか。1つ選べ。

(処方 1)
テルミサルタン錠 40 mg 1回 1錠( 1日 1錠)
1日 1回朝食後 90日分

  1. メチルドパ水和物
  2. ドキサゾシンメシル酸塩
  3. スピロノラクトン
  4. エトレチナート
  5. ヒドロクロロチアジド

 

解説

妊娠高血圧に推奨される薬はメチルドパ、ラベタロール、ニフェジピン、ヒドララジンの4つのため、この選択肢の中では、正解は1です。
↓に妊娠高血圧に推奨される薬のゴロが載っていますので、参考にしてください。

薬学ゴロ:妊娠高血圧に適応ありの薬物のゴロ(覚え方)

なお、選択肢4のエトレチナートは、催奇形性がある上に、そもそも高血圧の薬ではありません。角化症や乾癬などに用いられる薬です。

 

 

・問題に対する個人的な感想:
これも妊娠高血圧に推奨される薬を覚えていたら簡単に解ける問題ですね。覚えましょう。

 

 

問 187

薬物動態に影響を与える因子のうち、高齢者において起きていると考えにくいのはどれか。1つ選べ。

  1. 体脂肪率の増加
  2. 血漿中のアルブミン濃度の低下
  3. 血漿中の α1-酸性糖タンパク濃度の低下
  4. 肝血流量の減少
  5. 糸球体ろ過量の減少

 

解説

選択肢1 ○
高齢者では筋肉が衰えているため、体脂肪率が増加します。そのため、脂溶性薬物の分布容積が上昇します。

選択肢2 ○
高齢者では血漿中タンパク質の産生が衰えるため、血漿中のアルブミン濃度も低下します。そのため、アルブミンと結合しやすい薬の効果が増強する場合があります。

選択肢3 ×
高齢者では血漿中タンパク質の産生は衰えますが、α1-酸性糖タンパク濃度は上昇します。α1-酸性糖タンパク濃度は炎症時に増加しますが、高齢者では慢性的な炎症性疾患が起きていることが多いためα1-酸性糖タンパク濃度が上昇すると言われています。

選択肢4 ○
高齢者では、肝血流量が低下します。これは高齢者の薬の肝代謝能が低下する一因です。

選択肢5 ○
高齢者では、糸球体ろ過速度や腎血流量が低下するため、腎排泄型薬物の消失が遅延します。

よって、正解は3です。

なお、高齢者の生理機能の変化の代表的なものとして、他に胃内pHの上昇があります。

 

 

・問題に対する個人的な感想:
高齢者の生理機能の変化はよく出題されるポイントなので、薬の代謝や分布容積の変化等も併せて覚えておきましょう。

 

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