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学術研修

2024年1月4日

第108回薬剤師国家試験 理論問題-薬物治療 問190

本部のTです。
早速ですが、今回は108回薬剤師国家試験 理論問題-病態・薬物治療 問190の解説をします。
前回の問188-189の解説はこちら。次回の問191の解説はこちら

 

 目次

 

問 190

48歳男性。建築業に従事しており、高所での作業が多い。40歳時の健康診断で高血糖を指摘されて以降、近医に通院している。現在は以下の薬剤及び用法用量で 2型糖尿病、高血圧、安定狭心症及び脂質異常症の治療を受けている。

メトホルミン塩酸塩錠 250mg 1回 1錠( 1日 2回)朝夕食後
カナグリフロジン水和物錠 100mg 1回 1 錠( 1日 1回)朝食後
アジルサルタン錠 20mg 1回 1錠( 1日 1回)朝食後
アムロジピン錠 5 mg 1回 1錠( 1日 1回)朝食後
ピタバスタチン Ca 錠 1 mg 1回 1錠( 1日 1回)朝食後

指導された食事療法と運動療法は遵守できている。今回受診の身体所見と検査所見は以下のとおりであった。

  • 身長 174 cm、体重 72 kg、血圧 128/78 mmHg
  • 空腹時血液検査結果: 血糖 124 mg/dL、HbA1c 7. 2 %
  • 総コレステロール 220 mg/dL、TG(トリグリセリド)148 mg/dL、HDL-C 70 mg/dL、LDL-C 148mg/dL
  • 血清クレアチニン 0. 7 mg/dL、eGFR 86mL/分/1. 73 m2
  • 尿検査結果: 糖(4+)、蛋白(±)、潜血(-)、ケトン体(-)、尿アルブミン/クレアチニン比 50 mg/gCr

 

各薬剤の添付文書上の用法用量は以下のとおりとする。


今回の所見を踏まえた治療の変更として、適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. メトホルミン塩酸塩を増量する。
  2. グリメピリドを追加する。
  3. アムロジピンを増量する。
  4. ピタバスタチン Ca を増量する。
  5. イコサペント酸エチルを追加する。
     
解説

まず検査値を確認しましょう。

患者の検査値 基準値、目標値 判定
血圧(mmHg) 128/78 目標値:130/80
(糖尿病患者の場合)
正常
空腹時血糖値(mg/dL) 124 126未満 正常
HbA1c(%) 7.2 6.5未満
目標値:7.0未満
高値
総コレステロール(mg/dL) 220 140~199 正常
TG:トリグリセリド(mg/dL) 148 150未満 正常
HDL-C(mg/dL) 70 40以上 正常
LDL-C(mg/dL) 148 140未満 高値
血清クレアチニン(mg/dL) 0.7 男性:0.8~1.2
女性:0.5~1.0
正常
eGFR(mL/分/1.73m2) 86 60以上 正常
尿糖 4+

陽性

 

選択肢1 ○
HbA1cの改善のために、糖尿病治療薬の増量もしくは追加が必要と検査から考えられます。現在患者のメトホルミンの1日量は500mgであり、問題文中にある通り維持量は750 mg~1,500 mgであるため選択肢1のメトホルミンの増量が適切です。(なお、メトホルミンは腎機能に注意が必要な薬ですが、この患者は腎機能に特に問題はありません)。

選択肢2 ×
メトホルミンが維持量に達していないにも関わらず、グリメピリドを追加するのは誤りです。

選択肢3 ×
この患者の血圧は目標値以下であり、アムロジピンを増量する必要はありません。

選択肢4 ○
この患者はLDL-Cが高値であり、LDL-Cを下げる効果を持つピタバスタチンCaを増量するのは正しいです。1日最大用量は4mgのため、現在の1日1mgから増量可能です。

選択肢5 ×
イコサペント酸エチルは脂質異常症の治療薬として使用されますが、TGの抑制効果が主であり、LDL-C低下作用を期待して投与することは基本的にありません。TGが正常で、LDL-Cが高値のこの患者に追加する必要はありません。

よって、正解は1, 4です。

 

・問題に対する個人的な感想:
検査値を読み解くことさえできれば、添付文書上の用法用量も記載されているので、それほど難しくないでしょう。
問題文が長いので、必要な情報を素早く拾うことも重要です。長文問題を多く解いて、力をつけましょう。

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