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学術研修

2024年10月30日

抗MRSA薬の特徴と覚え方

本部のTです。
今回は国試対策としてMRSAの治療薬とその主な特徴・覚え方についてまとめたいと思います。
(国試で問われやすい部分以外は省略しているので、薬の詳細については参考書や他のサイトもご覧になってください。)
関連する国試の解説はこちら→「国試解説 抗MRSA薬関連」
 

 目次

 

1 MRSAとは

MRSAは「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin Resistant Staphylococcus Aureus)」のことです。
”メチシリン耐性”という名前がついていますが、メチシリンだけでなく、多くの抗菌薬に耐性(多剤耐性)を持っています。
黄色ブドウ球菌と同様に常在菌であり、人の鼻腔・咽頭・皮膚に存在し、院内感染の主な起炎菌の一つです。

 

2 抗MRSA薬6種類

MRSAに有効な薬は主に以下の6つです。

  • バンコマイシン(経口、静注、眼軟膏)
  • テイコプラニン(静注)
  • ダプトマイシン(静注)
  • ムピロシン(鼻腔内のMRSAを塗布により除菌、感染を予防)
  • リネゾリド(経口、静注)
  • アルベカシン(静注)

以下、国試に出されやすいバンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリド、アルベカシンについて解説していきます。

 

3 バンコマイシン・テイコプラニン

分類:グリコペプチド系抗生物質

作用機序:ペプチドグリカンのペンタペプチドC末端のD-Ala-D-Alaに結合し、細胞壁合成を阻害する

副作用:腎障害、第脳神経障害(難聴など聴覚障害)、レッドネック症候群
※レッドネック症候群は、ヒスタミンの遊離により、顔や頸部に発赤・痒みが生じる症状。

特徴、注意点:
  • 有効性を確保し、かつ副作用の発現を避けるために薬物血中濃度モニタリングを行う。
  • また急速静注すると、レッドネック症候群やショック症状が出現しやすいため、バンコマイシンは60分以上、テイコプラニンは30分以上かけて点滴静注する。
  • テイコプラニンは半減期が長く、血中濃度が有効範囲に到達するまでに時間がかかるため、ローディングドーズ(負荷投与)が必要です。
  • バンコマイシンは経口でクロストリディオイデス・ディフィシルによる偽膜性大腸炎にも用いられる。

 

4 リネゾリド

作用機序:細菌リボソームの50Sサブユニットと結合し、翻訳過程の70S開始複合体の形成を妨げ、細菌のタンパク質合成を阻害する。

副作用:14日以上の使用によって骨髄抑制が報告されている。他に視神経障害など

特徴:
  • 経口剤の生物学的利用率(BA)が100%であるため、注射剤から経口剤へのスムーズな移行が可能
  • バンコマイシン耐性陽球菌(VRE)にも有効

 

5 アルベカシン

分類:アミノグリコシド系抗生物質

作用機序:最近のリボソーム30Sサブユニットと結合し、タンパク質合成を阻害する。

副作用:腎障害、第脳神経障害(難聴など聴覚障害)、筋弛緩

特徴、注意点:
  • 薬効と有害作用が薬物血中濃度と関係するため、薬物血中濃度モニタリングを行う。
  • ループ利尿薬との併用で、副作用の発現・悪化が報告されているため併用注意
  • アミノグリコシド系抗生物質は、他に結核に有効なストレプトマイシンカナマイシン等がある。

 

6 覚え方・ゴロ

MRSAの薬とその特徴について、私が学生時代に使用していた覚え方を紹介します。

まず有名なゴロとして「定番だと無理あるべ」がありますね。

ここにそれぞれの薬の作用機序、主な副作用を追加し、イメージとゴロで覚えるイラストを作りました。かなり無理やりですが覚えやすいと思った方は参考にしてください↓

  •  テイコプラニンとバンコマイシンの作用点である「D-Ala D-Ala」を無理やり「だらだら」と読んで、ゴロの最初に追加して覚えます。
  • 「テイバン」を赤い文字で記憶して、副作用のレッドネック症候群と関連づけます。
  • またゴロの最初(テイコプラニン・バンコマイシン)と最後(アルベカシン)は腎障害、聴覚障害の副作用があること、TDMが必要であることが共通しています。(たまに聴覚障害ではなく、「覚障害」と書いて引っ掛ける問題があるので注意しましょう。)
  • テイコプラニン・バンコマイシンはグリコペプチド系、アルベカシンはアミノグリコシド系ですが、どちらも糖鎖を含むため、「グリコ」が分類名に入っています。腎障害、聴覚障害、TDMが共通であることと併せて覚えておきましょう。
  • リネゾリドの副作用が骨髄抑制、経口薬のBAが100%であることも1度だけですが出題されていますので、ついでに覚えておきましょう。
  • 右下に「七三分け」のイメージで、リネゾリドの作用点が70Sアルベカシンの作用点が30Sと覚えます。ちなみに他にリボソーム30Sサブユニットを作用点とする抗菌薬としてテトラサイクリン系があります。50Sサブユニットが作用点の抗菌薬はマクロライド系とリンコマイシン系およびアミノグリコシド系の一部(カナマイシン、ゲンタイマイシン)です。これらに関連して以下のサイトにもゴロが載っていますので、参考にしてください↓

https://yakugoro.com/entry/2016/01/29/1544371058

 

↓他の国試関連の記事も、よければ参考にしてください。

 

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