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事務局日誌

2022年8月19日

2022年薬害根絶デーとHPVワクチン被害

本部のGです。
HPVワクチンについては、政府による勧奨が再開されましたので、全国薬害被害者団体連絡協議会(略称薬被連)の厚生労働省への要望書を引用して紹介します。
 

 

3、HPVワクチンへの対応について
 厚生労働省は、2021(令和3)年11月26日付で、2013年6月から実施されていたHPVワクチンの積極的勧奨中止の措置を終了させ、2022(令和4)年4月から接種を個別に勧奨する旨の健康局長通知を発出しました。積極的勧奨を再開すれば、被害者が再度増加することは不可避です。改めて、HPVワクチンの積極的勧奨を中止されることを強く求めます。再開に当たり、厚生労働省の審議会(別紙議事録抜粋)、全国各紙の社説、医療界等からは、被害者の支援体制の整備の必要性が指摘されています。これを受けて、厚生労働省は市町村に対し、相談支援体制・医療体制等が十分整備される前に接種が性急に行われることがないように要請する通知を出しています。しかし、被害者に対する支援の実情は、極めて不十分です。実効性のある「本当の寄り添った支援」を実現することが急務です。
 

1)治療法確立のための国の研究班の設置

 HPVワクチンの副反応は、

  1. 知覚に関する症状(頭や腰、関節等の痛み、感覚が鈍い、しびれる、光に対する過敏等)
  2. 運動に関する症状(脱力、歩行困難、不随意運動等)
  3. 自律神経等に関する症状(倦怠感、めまい、嘔気、睡眠障害、月経異常等)
  4. 認知機能に関する症状(記憶障害、学習意欲の低下、計算障害、集中力の低下等)

等多岐にわたる重篤なものです。このことは、厚生労働省作成のリーフレット(医師向け、保護者向け)にも、目立たない体裁ながら記載されています。

 こうした副反応被害の深刻さは、国が把握しているだけでも接種者1万人あたり約6人の重篤な副反応報告がなされていることや、被害救済制度における重篤な被害の認定頻度が、四種混合や麻しん・風疹のワクチンなどと比較して20倍以上であることにも示されています。

 HPVワクチンによる副反応被害が免疫介在性の神経障害であることは、国内外の多くの研究成果から示唆されています。近年明らかにされてきた筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)やコロナ感染後の後遺症と同様、自己免疫性の機序が考えられます。しかし、国は、このことに向き合うことなく、免疫学的な治療の研究に対して支援することもなされていません。

 副反応被害者を実際に多数診察してきた経験を持つ医師らによる研究班が組織されて、原因の解明と治療法の研究が進められることが、最も効果を有することは、薬害エイズ事件において実証されています。

 被害者の願いは何よりも元のからだに戻ることです。そのためには、こうした研究班による免疫学的な治療法の研究開発とその支援が不可欠です。

 厚生労働省には、こうした研究班を直ちに設置することを求めます。

 

2)診療体制の整備

 国が都道府県を通じて指定した協力医療機関も十分に機能していません。
 厚生労働省が2021年10月から11月に実施した調査では、多くの協力医療機関が、この2年半の間に副反応患者の診察に全く対応していないことが判明しています。

 また、協力医療機関を受診したのに医師から詐病扱いされた例や、医師が協力医療機関に指定されていることを知らなかったという例も報告されています。

 積極的勧奨の再開によって更に被害者が増加することは確実であり、これまで以上に、被害者が信頼して受診できる診療体制の整備が急務となっています。

 また、HPVワクチン接種後の症状を機能性身体症状/ISRR(予防接種ストレス関連反応)と位置づけ、認知行動療法を行うのでは、治療効果は期待できません。

 厚生労働省には、これまで副反応被害者を実際に多数診察し、HPVワクチン接種後の症状を免疫介在性の神経障害であると捉えている医師らによる協力医療機関の医師に対する研修を実施するべきです。そして、こうした医師のいる医療機関こそ協力医療機関として指定することを求めます。

 

3)救済制度のあり方の見直し

 救済制度の適用においても不支給例が多く、救済は極めて不十分です。医薬品副作用被害救済制度におけるHPVワクチンを原因とした申請に対する支給率は44.5%に留まり、医薬品全体における支給率(83.8%)と比較して著しく低い水準にあります。厚生労働省には、HPVワクチンの副反応被害に対する救済制度のあり方の見直しを直ちに求めます。

 

4)HPVワクチンの副反応に関する積極的実態把握及び被害者全員の救済のための全数追跡調査等

 全数調査についての厚生労働省のこれまでの回答は、「HPVワクチン接種におきた有害事象については、一定期間内に因果関係が明らかではなくても医師に報告義務があり(副反応疑い報告制度)、一定期間が過ぎて発症した場合であっても予防接種との関連が疑われると医師が判断した場合にも報告義務があります。加えて幅広く副作用情報を収集する観点から保護者からの報告も可能です。HPVワクチンに関して、国としてもできる限り副反応が疑われる症状の報告を集めており、現在のところ接種者の全数調査は考えていない。」とのことでした。

 しかし、HPVワクチンによる副反応は「数か月ないし数年にわたって多様な症状が重層的に生じるという既存の疾患では説明できない特異性があるという指摘もされています。とすれば接種者(保護者を含む)も、医師も、こうした症状がHPVワクチンによる副反応であることを見過ごしているケースが多数存在するであろうことは容易に推察可能です。したがって、HPVワクチンの副反応の実態を解明し、被害者全員の救済のためには、接種者の全数調査は不可欠だと考えます。

 厚生労働省には、HPVワクチンの副反応に関する積極的実態把握及び被害者全員の救済のために、接種者の全数調査の実施を求めます。
 

5)十分な情報提供、HPVワクチンに関するリーフレットの改訂等

 HPVワクチンに関するリーフレットは、全体にHPV感染と子宮頸がんの関係を正しく伝えず不安を煽り、HPVワクチンの有効性は過大に、副反応は過小に記載した不適切なもので、「情報提供を装ったアンフェアな接種勧奨」というべき内容です。リーフレットの問題点は多々ありますが、主要な点を列挙すれば以下のとおりです。
 

  1. HPVワクチンのリスクを適切に伝えていない。
    • 多様な症状のごく一部しか記載されていない。
    • 多様な症状のメカニズムとして、機能的身体症状であると考えられると断定し、神経学的疾患や免疫反応による可能性を否定している。
    • 治療が期待できる治療法が確立していないことが記載されていない。
    • 他ワクチンと比較した危険性が記載されていない。
    • 救済制度について過度の期待を抱かせる内容となっている。
  2. 有効性の限界についての記載が不十分である。
    • 子宮頸がんを予防する効果が証明されていないことが記載されていない。
    • 子宮頸がんの50~70%を予防できるという誤解を招く記載である。
  3. HPVに感染して、子宮頸がんに至るまでの割合は感染者の0.15%であることが記載されず、「一生のうち子宮頸がんになる人1万人あたり132人(2クラスに1人くらい)」「子宮頸がんで亡くなる人1万人あたり34人(10クラスに1人くらい)」など不安を煽る表現がなされている。
  4. キャッチアップ制度のリーフレットには、HPV既感染者への接種は、有効ではないことや、年齢が上がるにつれて有効性が低下することについての十分な記載がなされていません。

 

 厚生労働省には、以上のような不適切な内容を記載するリーフレットは、直ちに改訂されることを求めます。

 また、MSDの動画コマーシャルは、ワクチンのリスクには全く触れていないなど、問題がありますので、指導してください。
 

6)被害者の就学•就労支援

 10代でワクチンを接種した被害者の多くが成人になりましたが、未だ回復しない重篤な副反応症状と社会的な理解の不足のために思うように働くことができていません。また、積極的勧奨再開による新たな被害者は、同じく重篤な副反応症状により就学が困難な状況になっています。

 厚生労働省には、文科省、各地方自治体との連携して、被害者の就学、就労のための最善の方策を講じられることを求めます。