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4年目研修レポート:
薬理学的に処方内容に疑問を持ち、
疑義照会(インフォメーション発行)を行った事例

 

                    2005 年10 月20 日
みつばち薬局紫野店 奥原裕美子

?症例1(80 代女性)

病歴;高血圧症・高脂血症・骨粗鬆症

Rp. エースコール 2mg 1T
  アルダクトンA 25mg 1T    分1朝後

  メバン5mg 2T
  グラケー 2C      分2朝夕後

上記の処方を2000年6月〜2004年12月まで継続
2004年12月中旬の採血データにてK 値5.5↑のためアルダクトンA 中止
14 日間中止後の採血でK 値は4.3 に↓ アルダクトンA 25mg 0.5T で再開
再開から14 日後アルダクトンA 25mg は1T に戻り、アーガメイトゼリー25g 分1朝後が追加された

【Dr へインフォメーション】
アルダクトンA とエースコールはK↑の可能性があり併用注意です。
K↑の原因と考えられるアルダクトンA は中止し他剤に変更すべきではないでしょうか?

【Dr からの返答】
降圧コントロールがエースコールとアルダクトンAの2剤でうまくいっているのでこのままでよいと処方変更なし。

【考察】
カリウム保持性利尿剤(アルダクトンA)とACE 阻害剤(エースコール)のそれぞれの添付文書にはこれら2剤の併用は高カリウム血症を誘発することがあるので併用注意と記載がある。危険因子:腎障害患者、高齢者
ACE阻害剤によって高K血症をきたしやすいのは腎機能の低下した患者においてであり、クレアチニンクリアランスが40ml/min 以下で起こりやすいとの報告がある。
1) 腎機能の低下した患者ではレニン・アンジオテンシン系が活性化されている場合が多い。活性化させることにより、AT-?は腎糸球体輸出細動脈を収縮させ糸球体内圧を上げて糸球体濾過量(GFR)を維持しようとし、アルドステロンは集合尿細管に作用してK とH イオンの分泌を増加させようとしている。ACE 阻害剤は、これらの亢進している系をブロックするため、腎のGFR を下げたり、尿細管からのK とH イオンの分泌低下をもたらす。よって高K 血症を招きやすいことになる。
2) 腎不全患者では硫酸や燐酸などの不揮発性酸の蓄積により代謝性アシドーシスの傾向にあるが、ACE 阻害剤自身も尿細管からのH イオンの分泌低下をもたらしアシドーシスを生じうる。このアシドーシスがさらに高K 血症を助長する。
3) 多くのACE 阻害剤が腎排泄性であるため、腎不全患者に投与した際、貯留しやすく副作用も起こりやすい。

高K血症には、体内総K量の増加による場合とアシドーシス時のように体内総K 量は不変でも細胞内から外へのK の移動が生じた場合の2つの機序があるが、ACE阻害剤はこの両方とも起こしうる。

 高齢者では、加齢による腎機能の低下があるうえに、また脱水や腎動脈硬化のためにレニン・アンジオテンシン系が亢進している場合が多くACE 阻害剤による副作用を起こしやすいと考えられる。
・アーガメイトゼリー開始直後の患者はゼリーが飲みにくく苦労していると言っておられた。患者が診察時にいつまでアーガメイトゼリーを続けるのかとDr に問うと、腎臓のこともあるのでしばらくは飲み続ける必要があると言われたとのこと。そこで最近の採血データをチェックさせてもらった。
H17.9 月 K 4.2 クレアチニン1.2 BUN28.7
Cockcroft とGaulf の式よりCcr を計算すると29.8

データより、腎障害は軽度のため腎保護作用があるACE 阻害剤の服用は継続した方が良いと考えられる。しかし年齢や腎機能を考慮するとK↑のリスクがあるので利尿剤をサイアザイド系に変えるなどすれば、患者が飲みづらいと言っているアーガメイトゼリーを中止できるのではないかと思う。

 

?症例2(80 代女性)

病歴;認知症・統合失調症・パーキンソン症候群・逆流性食道炎

Rp. マドパー 2T
  ドグマチールカプセル 2C
  ニチマロン 2T
  レスミット 5mg 2T
  タガメット 200mg 2T   分2朝夕後
  エンセロン20mg 3T    分3後

【Dr へインフォメーション】
1) マドパーとドグマチールは作用拮抗により相互に作用が減弱する可能性があります。また、ドグマチールには錐体外路症状の副作用もあり、パーキンソン病の患者に投薬すると症状悪化の可能性があります。
2) レスミットとタガメットは併用注意です。代謝抑制によりレスミットの作用が増強する可能性あります。

【Dr からの返答】
インフォメーションを数回発行するも返答なし。

【考察】
ドグマチール150mg/日なので統合失調症に対する治療用量ではない。Dr からの返答がないためドグマチールの処方理由は不明なままである。現在のところパーキンソン症状の悪化はなく、精神症状も見られないがドグマチールの投薬はパーキンソンの患者には不適切ではないかと思う。
シメチジンは相互作用が多い薬剤なので、併用薬がある場合には相互作用の少ないH2ブロッカーにすべきだと思う。

 

?症例3(80 代女性)

病歴;緑内障 他

Rp. ミケラン点眼液2%   5ml×1本  1日2回両眼
  キサラタン点眼液  2.5ml×1本  1日2回両眼

【Dr へ疑義照会】
キサラタンは頻回投与により眼圧下降作用が減弱する可能性があるので添付文書には1日1 回を超えて投与しないこととなっています。

【Dr からの返答】
用法を1 日1 回に変更

【考察】
この症例は内科医が眼科でもらっている点眼剤を患者に依頼されて処方した例である。点眼剤の添付文書の用法を見ると1〜数回/日などあいまいな使用回数が書かれているのが多い。専門外の内科医の処方であるので、点眼剤の用法まできちんと把握しているかどうか疑わしい。今回のキサラタンのように使用回数を誤ると治療効果が下がってしまうような場合には疑義照会が必要であると思う。

 

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