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学術研修

2021年9月24日

第103回薬剤師国家試験問182(アルツハイマー病治療薬)

本部のTです。

今回も薬学生の皆さんに向けて、薬剤師国家試験の問題を一つ取り上げて、解説してみました。

 

第103回 一般理論問題 問182

65歳女性。脳血管疾患の既往無し。数年前より軽度認知障害があり、CT 検査で大脳皮質の萎縮が認められ、アルツハイマー病と診断された。下記の処方で服薬は正しくなされていた。最近、見当識障害や判断能力が悪化し、日常生活に介助が必要となることが多くなったため、心配した家族に同伴されて病院を受診した。本患者の今後の薬物治療方針として正しいのはどれか。2つ選べ。

(処方)
ドネペジル塩酸塩錠 5mg  1 回 1 錠( 1 日 1 錠)
1 日 1 回 朝食後 28 日分

1 ドネペジル塩酸塩の増量
2 リバスチグミンの併用
3 ガランタミン臭化水素酸塩の併用
4 メマンチン塩酸塩の併用
5 メチルフェニデート塩酸塩の併用

 

解説

  • 2021年7月現在、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)の治療薬は、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチンの4種類が存在します。
  • ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミンはいずれもコリンエステラーゼ阻害型のアルツハイマー病治療薬であり、他のコリエステラーゼ阻害薬と併用できません。
  • また、ドネペジルは軽度~中等度のアルツハイマー病では1日用量が5mgですが、高度のアルツハイマー病に対しては10mgまで増量できます。
  • 一方、メマンチンは中等度~高度のアルツハイマー病に使用されるNMDA受容体拮抗型のアルツハイマー病治療薬であり、コリンエステラーゼ阻害薬と併用することができます。

 

よって、正しい選択肢は1と4です。

ちなみに、選択肢5のメチルフェニデートはADHD、ナルコレプシーに使用される第1種向精神薬です。アルツハイマー病の治療には用いられません。

以下、それぞれの薬について詳細な解説をしていきます。

 

コリンエステラーゼ阻害型アルツハイマー病治療薬
(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン)
  • 認知機能低下の原因の一つとして、脳内のアセチルコリン活性の低下があるとされています。
  • アセチルコリンは神経伝達物質の一つで、生体内の様々な機能に関わっていますが、記憶・学習にも関わっています。
  • アセチルコリンはコリンエステラーゼによって分解されるので、このコリンエステラーゼを阻害することによって、アセチルコリンの分解を防ぎ、アセチルコリンを増加させるのが、ドネペジルなどのコリンエステラーゼ阻害型のアルツハイマー病治療薬です。
  • なお、ドネペジルはアルツハイマー病だけでなく、レビー小体型認知症にも適応があります。

 

NMDA受容体拮抗薬
(メマンチン)
  • 認知機能の低下には、脳内のNMDA受容体の減少も関わっているとされています。
  • NMDA受容体は、グルタミン酸の受容体で、大脳皮質や海馬に高密度に存在しています。記憶や学習機能に関わる受容体ですが、このNMDA受容体が過剰に刺激されると、神経細胞を傷害すると考えられています。
  • それを防ぐため、メマンチンはNMDA受容体を非競合的に遮断することで、過度の活性化を抑制し、NMDA受容体の減少を防ぎます。また、非競合的な遮断であるため、NMDA受容体の正常な機能は阻害しないとされています。

 

以下にそれぞれの薬の特徴をまとめました。

  • ドネペジルの用法用量については、「1日1回3mgから開始し、1~2週間後に5mgに増量。高度のアルツハイマー型認知症患者には、5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。」と添付文書に記載されています。
  • 4つの薬のいずれについても、副作用の発現を抑えるため、開始用量が設定されており、数週間の期間を空けながら維持用量まで漸増することに注意が必要です。
  • 剤形に関しては、リバスチグミンは貼付剤という特徴があります。貼付剤のため、他のコリエステラーゼ阻害薬に比べると、悪心嘔吐などの消化器症状は出にくく、嚥下障害などで内服が難しい患者さんも使用できますが、かぶれ(接触性皮膚炎)には注意が必要です。

 

関連する国試問題として、99回問256-257、100回問212-213、104回問254-255がありますので、薬学生の皆さんは是非解いてみて下さい。