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学術研修

2023年9月22日

第108回薬剤師国家試験 理論問題-薬理 問159-160

本部のTです。
前回の108回薬剤師国家試験 理論問題-薬理の解説の続きです。今回は問159-160の解説をします。
前回の問157-158の解説はこちら。次回の問161-162の解説はこちら

 

108回問 159-160

65歳女性。5年前より高血圧症を指摘されていたが、自覚症状がなく放置していた。数日前より頻回に動悸と気分不良を自覚するようになり、循環器内科を受診した。血圧 124/86 mmHg、心拍 96拍/分(不整)であった。心電図などの諸検査の結果、心房細動と診断され、抗凝固薬が投与されることになった。

問 159(病態・薬物治療)
この患者の病態と治療に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 心電図所見では、P 波が消失し、不規則な RR 間隔が認められる。
  2. 心房細動の重症度判定に、NYHA 分類が用いられる。
  3. 心拍数の調節には、リドカイン点滴静注を用いる。
  4. 1回拍出量は、心房細動の発症前と比べて低下している。
  5. 無治療で洞調律に戻ることはない。

問 160(薬理)
抗凝固薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. ナファモスタットは、アンチトロンビンと複合体を形成して、第Ⅹa 因子を阻害する。
  2. ダナパロイドは、アンチトロンビン非依存的に第Ⅹa 因子を直接阻害する。
  3. リバーロキサバンは、トロンビンに結合してプロテイン C を活性化することで、トロンビンを直接阻害する。
  4. ワルファリンは、ビタミン K エポキシド還元酵素を阻害することで、ビタミン K 依存性凝固因子の生成を阻害する。
  5. ダビガトランエテキシラートは、体内で活性代謝物となり、トロンビンを直接阻害する。

 

解説

問 159(病態・薬物治療)
選択肢1 ○
心電図で心房細動を診断する場合、通常、P波が見られず、RR間隔が不規則であることが特徴とされています。

選択肢2 ×
NYHA分類は心不全の程度を評価するためのものあり、心房細動の重症度判定に用いられるわけではありません。

選択肢3 ×
心拍数の調節には、β受容体遮断薬が主に用いられ、他にCa拮抗薬(非ジヒドロピリジン系)、ジギタリス製剤などが用いられます。リドカインは主に心室異常拍動に使用されます。

選択肢4 ○
心房細動では、心房の収縮が不完全となるため、1回拍出量が低下します。

選択肢5 ×
発作性心房細動では、無治療で洞調律に戻る可能性がある場合もあります。

よって正解は1, 4です。

 

問 160(薬理)
選択肢1 ×
ナファモスタットはアンチトロンビン非依存的にトロンビンおよび第Xa因子を阻害します。

選択肢2 ×
ダナパロイドは、アンチトロンビンⅢの作用を増強することで、トロンビンおよび第Xa因子を阻害します。

※アンチトロンビン依存性抗凝固薬の覚え方
 パリン、ダルテパリン、ダナパロイド、パルナパリン、フォンダパリヌクスなど「パリ」や「パロ」が薬品名の中にあるのはアンチトロンビン依存性と覚えましょう。

 

選択肢3 ×
リバーロキサバンは第Xa因子を直接阻害します。トロンビンに結合してプロテインCを活性化するわけではありません。

選択肢4 ○
ワルファリンはビタミンK依存性凝固因子の生成を阻害します。

選択肢5 ○
ダビガトランエテキシラートはプロドラッグであり、体内で活性代謝物となってトロンビンを直接阻害します。

よって、正解は4, 5です。

 

・問題に対する個人的な感想:
問159は選択肢3がやや難しいですが、他の選択肢は正解したい問題です。
問160は過去にも類似の抗凝固薬の問題が出題されています。分からなかった人はこの機会に覚えましょう。

 

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