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学術研修

2023年11月8日

第108回薬剤師国家試験 理論問題-薬理 問163-165

本部のTです。
前回の108回薬剤師国家試験 理論問題-薬理の解説の続きです。今回は問163-165の解説をします。
前回の問161-162の解説はこちら。次回の問166-167の解説はこちら
 

 目次

 

問 163

肝疾患、膵疾患及び胆道疾患の治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. デヒドロコール酸は、その抱合体が胆汁の浸透圧を上昇させることで、胆汁中の水分を増加させる。
  2. フロプロピオンは、ムスカリン性アセチルコリン受容体を遮断することで、Oddi 括約筋を弛緩させて、膵液分泌を促進する。
  3. ガベキサートは、外分泌腺から分泌された消化酵素を阻害することで、膵臓の自己消化を抑制する。
  4. ラミブジンは、B 型肝炎ウイルス(HBV)の RNA 依存性 RNA ポリメラーゼを阻害することで、HBV の複製を抑制する。
  5. ソホスブビルは、C 型肝炎ウイルス(HCV)の NS3/4A セリンプロテアーゼを阻害することで、HCV の複製を抑制する。

 

解説

選択肢1:○
正しい記述です。

選択肢2:×
フロプロピオンは、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害薬でノルアドレナリン濃度を上昇させることで、胆管平滑筋やOddi括約筋を弛緩させ、膵液分泌を促進する。「ムスカリン性アセチルコリン受容体を遮断」という記述は間違いです。

選択肢3:○
膵炎はトリプシンの活性化が引き金となり、連鎖的にエラスターゼ、ホスホリパーゼA2などが活性化され、膵臓の細胞が自己消化を起こします。ガベキサートは、トリプシンなどの消化酵素の作用を抑制することにより、自己消化を抑制するため、正しい記述です。

選択肢4:×
ラミブジンは逆転写酵素阻害薬で、DNAポリメラーゼを阻害することで、HBVの複製を抑制します。
よって「RNA 依存性 RNA ポリメラーゼを阻害」という記述は間違いです。
RNAポリメラーゼを阻害する薬として、HCV治療薬であるリバビリンがあります。

選択肢5:×
ソホスブビルは、HCVのNS5Bポリメラーゼ阻害薬です。

よって、正解は1,3です。

HCV治療薬は語尾と作用機序をつなげて覚えると、覚えやすいです。
「-プレビル(-previr)」→NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬
「-aスビル(-asvir)」→NS5A阻害薬
「-buビル (-buvir)」→NS5Bポリメラーゼ阻害薬
HCV治療薬の記事も参照。

 

・問題に対する個人的な感想:
デヒドロコール酸の問題は過去に少ないですが、それ以外の選択肢は確実に正解したいですね。

 

問 164

糖尿病治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. ピオグリタゾンは、AMP 活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を直接活性化することで、肝臓における糖新生を抑制する。
  2. デュラグルチドは、膵臓β細胞のグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体を刺激することで、グルコースによるインスリン分泌を促進する。
  3. ボグリボースは、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)を阻害することで、ソルビトールの細胞内への蓄積を抑制する。
  4. トレラグリプチンは、尿細管の Na+-グルコース共輸送体2(SGLT2)を阻害することで、尿中のグルコースの再吸収を抑制する。
  5. グリメピリドは、スルホニル尿素(SU)受容体に結合して、ATP 感受性 K+チャネルを遮断することで、インスリン分泌を促進する。

 

解説

選択肢1:×
ピオグリタゾンは、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)を刺激することで、TNF-α、アディポネクチン産生促進を介してインスリン抵抗性を改善します。
AMPKを直接活性化させるのは、メトホルミンなどのビグアナイド系薬です。

選択肢2:○
正しい記述です。

選択肢3:×
ボグリボースは、αグルコシダーゼを阻害することで、二糖類の単糖類への分解を防ぎ、腸管からの吸収を低下させます。また、DPP-4を阻害するのはDPP-4阻害薬であり、ソルビトールの細胞内への蓄積を抑制する薬は糖尿病性抹消神経障害治療薬のエパルレスタットです。

選択肢4:×
トレラグリプチンはDPP-4を阻害することで、血糖依存的にインスリン分泌を促進し、グルカゴン濃度低下作用を増強します。
腎尿細管のSGLT-2を阻害し、尿中のグルコースの再吸収を阻害するのは、イプラグリフロジンなどのSGLT-2阻害薬です。

選択肢5:○
正しい記述です。

よって、正解は2,5です。

 

・問題に対する個人的な感想:
糖尿病治療薬の基本的な問題です。
ごっちゃになりやすいSGLT-2阻害薬、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬の薬品名の覚え方を以下に書いておきます。参考にしてください。

SGLT-2阻害薬、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬の覚えかた
・腎尿細管のSGLT-2を阻害→薬の名前に「フロジン」が付く。ゴロ(語呂)合わせで、フロジンの「ジン」は腎臓の「腎」とおぼえておきましょう。
・DPP-4阻害薬→薬の名前に「プチン」が付く。DPP-4はジペプチジルペプチダーゼ-4の略。2回もプチが出てくるのと、「プチン」をかけあわせて、「プッチンプリン」というゴロ合わせで覚えておきましょう。
・GLP-1受容体作動薬→薬の名前に「チド」が付く。GLP-1はグルカゴン様ペプチド-1の略。
国家試験では略称だけで出てくることはないので、この覚え方をしておけば間違えないかと思います。

(DPP-4阻害薬のゴロ合わせに関しては下記のサイトを参考にしました。
ゴロナビ https://uzuchannel.com/goro-navigation-pharmacy/2022/01/13/dpp-4-inhibitor/)

 

問 165

内分泌系に作用する薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. クロミフェンは、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)受容体を遮断して、排卵を誘発する。
  2. テリパラチドは、副甲状腺ホルモン受容体を遮断して、骨吸収を抑制する。
  3. プロピルチオウラシルは、ペルオキシダーゼを阻害して、甲状腺ホルモンの生成を抑制する。
  4. ブロモクリプチンは、ドパミン D2 受容体を遮断して、プロラクチン分泌を抑制する。
  5. メテノロンは、アンドロゲン受容体を刺激して、タンパク質同化作用を示す。

 

解説

選択肢1:×
クロミフェンは間脳(視床下部)のエストロゲン受容体でエストロゲンと競合的に拮抗し、内因性エストロゲンによる負のフィードバックを阻害することによって、GnRHの分泌を阻害し、排卵を誘発します。よって「GnRH受容体を遮断」という記述は誤りです。

選択肢2:×
テリパラチドは、遺伝子組換ヒト副甲状腺ホルモン製剤です。副甲状腺ホルモンは骨吸収を促進しますが、間欠的投与により骨代謝を促進し、結果として骨形成を促進します。

選択肢3:○
正しい記述です。
ゴロ合わせ「ペルーのプロのアマさん行進中」で覚えておきましょう。
ペルオキシダーゼ阻害、プロピルチオウラシル、チアマゾール、甲状腺機能亢進症治療薬

選択肢4:×
ブロモクリプチンはドパミンD2受容体を刺激して、プロラクチン分泌を抑制します。

選択肢5:○
正しい記述です。

よって、正解は3,5です。

 

・問題に対する個人的な感想:
正解したい問題です。

 

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