第108回薬剤師国家試験 理論問題-薬理 問166-167
本部のTです。
前回の108回薬剤師国家試験 理論問題-薬理の解説の続きです。今回は問166-167の解説をします。
前回の問163-165の解説はこちら。
| 目次 | ||
問 166
Ａ～Ｃの構造を有する薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 薬物Ａは、30S リボソームサブユニットに作用することで、タンパク質合成を阻害する。
- 薬物Ｂは、ペニシリン結合タンパク質のトランスペプチダーゼを活性化することで、細胞壁合成を抑制する。
- 薬物Ｃは、DNA ジャイレースを阻害することで、DNA の複製を阻害する。
- 薬物ＡとＣは、薬物不活性化酵素の誘導によりアセチル化やリン酸化を受けることで、抗菌活性が減弱する。
- 薬物Ｂは、細菌が産生する β－ラクタマーゼにより開裂することで、抗菌活性が減弱する。
解説
まず、構造からそれぞれが何の種類の抗菌薬か読み取りましょう。
A：テトラサイクリン系抗菌薬(4つの環がくっついた構造)
B：βラクタム系抗菌薬(βラクタムが構造にある)
C：マクロライド系抗菌薬(大環状ラクトンが構造にある)
選択肢1：○
テトラサイクリン系抗生物質についての正しい記述です。
選択肢2：×
βラクタム系抗菌薬は、トランスペプチダーゼを阻害し、細胞壁合成を阻害します。
選択肢3：×
マクロライド系抗菌薬は、最近のリボソーム50Sサブユニットに結合して、タンパク質合成を阻害します。
DNAジャイレースを阻害することで、DNAの複製を阻害するのは、ニューキノロン系抗菌薬です。
選択肢4：×
テトラサイクリン系抗菌薬の耐性菌は、抗菌薬を取り込む能動輸送を抑制するタンパク質やリボソームを保護するタンパク質を産生することにより、抗菌活性を減弱させる。
マクロライド系抗菌薬の耐性菌は、リボソーム50Sサブユニットのメチル化により、抗菌活性を減弱させます。
「薬物不活性化酵素の誘導によりアセチル化やリン酸化を受けることで、抗菌活性が減弱する」のはアミノグリコシド系抗菌薬です。
選択肢5：○
βラクタム系抗菌薬について正しい記述です。
よって、正解は1,5です。
リボソーム30sサブユニットに結合する抗菌薬か、50sサブユニットに結合する抗菌薬かの覚え方(ゴロ)は↓のサイトに載っていますので、参考にしてください。
“薬ゴロ”：https://yakugoro.com/entry/2016/01/29/1544371058
・問題に対する個人的な感想：
選択肢4が難しいです。それ以外の選択肢から正解を導き出したい問題です。
問 167
肺がん治療に用いる薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- イリノテカンは、フリーラジカルを発生して、DNA 鎖を切断する。
- エトポシドは、トポイソメラーゼⅡを阻害して、切断された DNA 鎖の再結合を阻害する。
- ゲフィチニブは、抗 programmed cell death－1（PD－1）抗体で、T 細胞による抗腫瘍作用を増強する。
- ゲムシタビンは、DNA をアルキル化して、DNA の複製を阻害する。
- ドセタキセルは、微小管を安定化して、有糸分裂を阻害する。
解説
選択肢1：×
イリノテカンは、トポイソメラーゼⅠを阻害し、DNA合成を阻害します。
「フリーラジカルを発生して、DNA鎖を切断する」抗がん剤の代表はブレオマイシンです。またブレオマイシン以外のアントラサイクリン系抗がん剤にもフリーラジカルを発生させる作用があります。
選択肢2：○
正しい記述です。
選択肢3：×
ゲフィチニブは、上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼを選択的に阻害します。
抗PD-1抗体として、ニボルマブ、ペムブロリズマブがあります。
選択肢4：×
ゲムシタビンは、デオキシチジン三リン酸(dCTP)と結合して、DNA鎖に取り込まれ、DNA合成を阻害します。
選択肢5：○
正しい記述です。
よって、正解は2,5です。
イリノテカン：トポイソメラーゼⅠ阻害
エトポシド：トポイソメラーゼⅡ阻害
の覚え方(ゴロ)は↓のサイトに載っていますので、参考にしてください。
“薬学部はゴロでイチコロ!”：https://www.benzenblog.com/entry/2023/08/24/165938
・問題に対する個人的な感想：
抗がん剤の基本的な問題です。正解しましょう。
↓他の国試関連の記事も、よければ参考にしてください。
