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事務局日誌

2020年8月11日

「黒い雨」訴訟

本部のTです。
昨日の記事と一緒にすると長くなるので、記事を分けることにしました。

ところで「黒い雨訴訟」をご存知ですか?
厚労省の指定する区域外でも、原爆投下直後に「黒い雨」を浴びて被害を受けた方々がたくさんおられます。その方々を被爆者として認めるべき、と2015年提訴に踏み切った裁判です。

「黒い雨」訴訟判決

https://www.asahi.com/articles/ASN7Y4QMJN7WPITB021.html


広島の原爆投下後に降った「黒い雨」によって健康被害を受けたにもかかわらず、広島市や広島県に被爆者健康手帳の申請を拒否されたのは違法だとして、手帳の交付を求めた訴訟の判決が29日、広島地裁であった。高島義行裁判長は原告の訴えを認め、原告84人全員に手帳の交付を命じた。

 
 

ちょっと長いですが、次の「テレビ新広島」の記事はわかりやすいので少し引用させていただきます。
https://www.tss-tv.co.jp/tssnews/000006804.html

【高野正明さん】
・・・爆心地から北西に20キロほど離れた旧佐伯郡上水内村。高野さんは生まれてからずっとこの村で暮らしてきました。75年前のきょう・・・
「ぴかっと光ったガラスが割れんばかりの音でびっくりしてすぐ校庭に出て」
高野さんは当時7歳。山の上にきのこ雲が見えた後、昼前から降り始めた雨は黒く濁っていたと言います。高野さんは雨を浴びた後ひどい貧血に苦しみ、下痢や鼻血も10年ほど続きました。
原爆投下直後に降った「黒い雨」を浴びた多くの人たちに健康被害の症状が現れました。しかし、高野さんが住む地域は、無料で健康診断が受けられる援護対象区域から外されました。
援護区域の拡大を求め最後の手段としてとったのが集団訴訟です。広島地裁は先週、国が定めた「援護対象区域」の外で雨を浴びた原告84人全員を被爆者と認め、被爆者健康手帳を交付させる判決を言い渡しました。
【高野正明さん・会見】
「裁判官に対してこの英断判決を下したことに対して心から感謝したい」
・・・
【平和宣言:松井一実広島市長】
「日本政府には黒い降雨地域の拡大に向けた政治判断を改めて強く求めます」
式典終了後に行われた『被爆者からの要望を聞く会』でも被爆者から声があがります。
【県被団協・佐久間邦彦理事長】
「政府の決断で認定地域を拡大してください。控訴しないようにお願いします」

 
 

高野さんら原告の方々は、高齢なのですから、もう本当に「最後の手段」ということですよね。
ところが、国は判決が7月29日に出てから、この8月9日(日曜日)までの間に控訴を決めてしまいました。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020081100295&g=soc&utm_source=top&utm_medium=topics&utm_campaign=edit

原爆投下直後に降った「黒い雨」を国が定める援護対象区域外で浴びた原告全員に被爆者健康手帳の交付を命じた広島地裁判決について、政府は11日までに広島高裁に控訴する方針を固め、広島県と広島市に伝えた。

 
 

県と市とは控訴したくないという意見ですので、頑張ってほしいものです。
民医連の会長声明(7月30日)を紹介して、国の控訴意向表明に対する抗議に替えたいと思います。

・・・被爆後75年の間、「黒い雨」訴訟の原告らも被爆者として様々な健康被害に苦しめられてきた。被爆者の高齢化も進む中、速やかな救済が求められる。また、こうした長い月日を経てもなお、被爆者の体と心を苦しめ続ける非人道的な核兵器を許すわけにはいかない。
 広島市長と広島県知事には、原告全員に対して速やかに被爆者手帳交付し、すべての「黒い雨」被爆者の救済を求める。そして控訴を断念すべきである。
 また、日本政府に対して、唯一の戦争被爆国として非人道的な核兵器によって二度と被爆者を生まないため、核兵器自体を違法とし全世界から廃絶させるために、核兵器禁止条約の批准を求める。
 全日本民医連は、引き続き被爆者のいのちと暮らしに寄り添い、核兵器のない世界を願う市民社会に連帯し、その日が実現するまでともに歩み続ける。

 
 
 

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