保険薬局

医薬分業

1. 医薬分業とは

 医師が診察・診断し、治療のための処方を考え処方箋を書きます。それを薬剤師が処方箋に基づき、薬剤師の専門性でもって安全と有効性をチェックし、調剤します。医師と薬剤師の二重チェックがかけられることで、より安全で有効な薬物療法の提供が可能となります。
 薬剤師は服用する薬について効果・効能・服薬するときの注意点・副作用・飲み合わせなどを説明します。そして、患者個別のカルテを作成して記録を保存していきます。個別のアレルギーや副作用歴であったり、体質や病状によって飲んではいけないものがないかチェックしています。また、複数の医療機関を受診されている場合、「かかりつけ薬局」と決めておかれると、複数医療機関からの処方薬の重複投与や相互作用によるリスクを回避できます。また、医師にとって処方を検討する際、薬物名からの治療法の検討は可能ですが、その処方した薬の大きさ・形・色・味・匂いなどについての検討は無理と言ってよいでしょう。処方した薬がとてつもなく大きくいつまでも口の中に残るとか、食事の味が分からなくなるくらい苦い、嚥下障害で錠剤が飲み込めないなど、また、同時期に服用してはいけないなどの対応は薬剤師がします。こういったケースは、勝手に処方内容の変更をするのではなく、必ず医師と連絡し合いながら進めます。薬剤師は薬剤師法でも定められていますが、処方内容に疑義が生じれば必ず処方医へ照会をして、疑問な点が解決してから調剤し薬を渡さなければなりません。薬の専門家として薬剤師の果たす役割は、分業によって拡大しました。

2. 医薬分業の歴史

 明治22年3月「医薬品営業並薬品取扱規則(薬律)」が成立しました。これにより、薬剤師制度や薬局制が規定され、薬局での調剤が認められました。しかし、医師から長年薬をもらっていた習慣と、薬局薬剤師の数が少なく需要に耐えられないという実態から、薬律に附則で医師の調剤が認められ、薬局での調剤は進展しませんでした。その後、昭和24年9月には、アメリカ薬剤師協会代表使節団が来日し、医薬分業実施勧告を出します。そして、昭和26年に、「医師法、歯科医師法及び薬事法の一部改正する法律」が制定されました。いわゆる医薬分業法のことですが、ここで医師の処方箋発発行が原則として義務付けられました。しかし、「医師法」「歯科医師法」では処方箋発行義務について、「医師(歯科医師)は、...(中略)...処方箋を交付しなければならない。ただし、患者...(中略)...が処方箋の交付を必要としない旨を申し出た場合...(中略)...においてこの限りではない。」これでは、医薬分業が進むはずはありませんでした。昭和31年4月に「医薬分業法」が施行となりましたが、日本では医師が診察と投薬をすることが習慣として定着しており、やはり分業は進みませんでした。昭和49年処方箋料が100円から500円に引き上げられ、やっと処方箋は院外へ出されることになり分業元年といわれる実質的な医薬分業の開始となりました。こうして現在、医薬分業は珍しいことではなくなりました。
 医薬分業は政治に翻弄され、最後は経済誘導で分業が進んでしまった感じが拭えませんが、本来は患者さんにとってメリットがあるべきものではなりません。医師と薬剤師という専門家の二重チェックがかけられることで、より安全で有効な薬物療法の提供が可能であると述べてきました。
政治に翻弄される医療ではなく、政治を動かせる医療であればと思います。

保険薬局

 保険薬局とは、「健康保険法」に基づく療養の給付の一環として、保険調剤を取り扱う薬局のことをいいます。保険薬局は、仕事をする場所で大きく分けると、外来患者さんが持参する処方箋を応需して、薬局内で行う調剤業務と、薬局から出て地域の患者さんのご自宅を訪問し、服薬指導する在宅業務に分けることができます。対面する患者さんが外来か、在宅かの違いはありますが、「処方箋応需⇒調剤⇒薬の交付」の流れは同じです。
 保険調剤とは、保険医療機関から発行された処方箋に基づき保険薬局において保険薬剤師が行う調剤のことです。ここでいう、保険調剤は、処方箋を受け付けてから薬の交付までの一連の流れをいいます。受け付けた処方箋を確認するところから始まり、処方箋の使用期限、被保険者記号番号の確認はもちろん、処方内容、薬品名、用法、用量、日数、そして、重複投与や相互作用のチェック、また、患者個別の薬歴カルテの作成を基に、患者個別体質に適切な処方内容かどうか、つまり副作用歴の確認や患者個腎・肝疾患の有無、妊婦・授乳婦、小児・高齢、その他に注意しながら調剤します。そこで、疑義が発生すれば、必ず処方医に「疑義照会」をして確認します。

 そして、調剤は正確且つ迅速に行います。調剤形態は一包化や粉砕、混合、そして個別のコンプライアンスに合わせた工夫もします。具体的には、他科の薬とホッチキス止めしたり、お薬カレンダーや用法別収納BOXを作ったりもします。
 調剤の後、上記のような処方内容確認も含めて、「監査」をします。出来上がった薬が正しくできているか、処方箋と突合せをし、薬歴から今回の処方内容への変化を追ったり、服薬指導時のチェックポイントを示唆します。
 次に、患者さんに対面して、服薬指導を行います。説明すべき事柄だけでなく、ご本人からも情報をお聞きすることもありますので、大切な場面となります。私たち薬剤師が、薬を介して一番患者さん際にいることになりますので、患者さんにとって、安心で安全な薬物療法となるよう薬剤師の職能が発揮されなければなりません。薬の効果はどうか、副作用は出ていないか、薬同士の相互作用や食物との相互作用がないか、あるいは生活習慣が治療の妨げになっていないか、そして目の前の患者さんが何を心配しているのか、何を知りたいのかなど、患者さんとのコミュニケーションを十分取る必要があります。患者さんとの信頼関係はここで構築されると言って過言ではありません。
 では、在宅において何が違ってくるのでしょうか。薬は患者さんのご自宅でお渡しします。薬剤師がご自宅へ上がり、患者さんの生活の場で服薬指導をします。また、在宅医療では特に他職種(医師・看護婦・ケアマネージャー等)と情報の共有による連携が必要になります。調剤工夫、服薬介助、副作用早期発見、コンプライアンス向上、処方参画、時には食欲・排泄・睡眠のチェックなどの生活指導まで、連携によって患者さんの薬物療法に関わっていきます。在宅では、ありのままに近い患者さん状況がうかがえます。薬の指導のみに終わらず、生活背景を考慮した個々に適した服薬指導が求められます。こうして、私たち薬剤師は、地域医療の担い手の一人として奮闘しているのです。
 そして、保険薬局のもう一つの特徴は、その地域に根差した「かかりつけ薬局」という役割があることです。地域にお住いの健康な方から病気や怪我をされた方まで、また、赤ちゃんからお年寄りまで診療科の枠を超えて幅広く健康相談に乗ります。地域の方が生活する上での衛生や健康、福祉の相談が少なくありません。病院へ行く前の相談であったりします。取り扱う薬は、調剤用医薬品からOTC、劇・毒物、消毒剤など幅広くありますし、他の薬局や医療機関でもらった薬についても持ち込まれて相談される場合があります。地域の人々の暮らしに役立ちながら「かかりつけ薬局」として存在できればと思います。

 最後は、薬代の会計です。窓口での患者さんの負担金は、保険薬局では主には薬代です。会計窓口でも患者さんからの相談を受ける時があります。後発医薬品(ジェネリック医薬品)への切り替えを行うと共に、社会資源・制度を活用し、負担金をできるだけ少なくする努力をします。薬剤師は、医療・福祉制度を、知っておく必要があります。
 京都コムファでは、薬代を払えない患者さんの相談活動や治療の中断チェックの活動にも取り組んでいます。「いのちの平等」「医療を受ける権利」を守ることを、理念に掲げて、「誰もがいつでもどこでも安心してかかれる医療」を目指しています。